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なぜネットにグループウェアがないのか

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ネットで生まれた「ブログ」「SNS」は、企業に導入されて「社内ブログ」「社内SNS」になりました。では、逆の動きが生まれることはないのでしょうか?例えば企業内にはグループウェアという存在がありますが、それがネットに輸出されるという現象は、なぜ起きていないのでしょうか。

理由は簡単、ネットは「組織」ではないからです。個人と個人が対等に、自由につながるのがネットの世界。そこでは何かを発表するために、誰かに稟議申請をしたり、スケジュールを調整する必要はありません。「企業という『組織』の活動を円滑に行わせる」という発想で生まれたシステムは、極端な話、ネットの根本とは相容れないわけです。

……とそんなことを改まって説明しなくても、「ネットにグループウェア」という発想がおかしいことは明白でしょう(※企業等の組織がグループウェアをネット上で使うことがない、もしくはWEBサービス型のグループウェアがない、などといった意味ではありません。念のため)。しかしその逆の動き、つまり「ブログ->社内ブログ」のように、ネットで生まれたものを企業内に持ち込む場合を考えてみた場合はどうでしょうか?思想の違いというものが注目され、注意が払われるということが十分に行われているでしょうか。

以前オルタナティブ・ブログ『ビジネス2.0の視点』で、林さんが「社内Twitterの可能性」について論じておられました。Twitter はご存知の通り、短いメッセージをネット上に投稿できるサービスで、マイクロブログとも称されています。僕も「社内でTwitter」という発想は非常に面白いと思いますし、林さんが考えられているような使い方・価値が生まれる可能性は十分にあると思うのですが、現在の「社内ブログ」「社内SNS」の扱われ方を見ていると、どうもうまく行かないのではないかとも感じています。つまり「なぜ Twitter というサービスがネットで生まれたのか」「なぜネット上で価値を生み出しているのか」が理解されなければ、企業内に導入されても「記録が残って共有できるIM」ぐらいの扱いにしかならないでしょう。

本来、ネットというフラットな世界の上で生まれたものをそのまま企業に持ち込めば、企業の組織構造は根本から崩されてしまうはずです。社内ブログ/SNSを導入し、かつ「成功」している企業が崩壊していないのは、「ブログ/SNSの思想に合うように会社を変えた」のか、「会社の思想に合うようにブログ/SNSを変えた」かどちらかでしょう。前者ならば何か新しいものが生まれているはずですが、後者ならば果たしてブログ/SNSというツールを使う意味があったのだろうか?と思います。

もちろんブログ/SNSを簡易CMSツールとして、あるいは Twitter を改良型IMとして企業内で使うという活用法はありでしょう。しかしネットで生まれたものの本当の力を引き出したければ、機能として目に見える部分だけでなく、その裏にある思想というものにも注目しなければならないと思います。


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