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組織を活性化させていく上で外せないポイントを、企業や組織が抱える問題や課題と照らし合わせて分かりやすく解説します。日々現場でコンサルティングワークに奔走するコンサルタントが、それぞれの得意領域に沿って交代でご紹介します。

「同一労働同一賃金」のその先

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 「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」、いわゆる同一労働同一賃金の実現の施行が来年4月に迫り、規程改訂や個別事案の対応など準備に追われている方も多いのではないでしょうか。

 先日もある企業の人事担当者と契約社員と正社員の役割の定義について意見交換をした際、こんな話が出ていました。
 「正社員には急な仕事に対応してもらってたり、打合せなんかも時間外でも気にせず設定できたりとか、仕事が進めやすいんですよね。そういう部分はどのように定義したらよいのでしょう。」

 長年人事に関わっている方であれば、ずいぶん昔に似たような議論をしていた記憶があるのではないでしょうか。1997年(平成9年)の男女機会雇用均等法が正式に施行された時期の、「総合職」と「一般職」との報酬額の差の理由づけの議論です。

 現在もコース別雇用管理を行っている企業もありますが、その当時は「総合職」の多くは男性、「一般職」は女性で構成されていました。一般職の女性は結婚や出産で退職する慣例がまだ残っていて、正社員ではあるものの社内での長期キャリアは前提にされておらず、単純、補助的な業務に限定されていました。均等法で性別のみによる処遇格差が禁止され、処遇差を存続させるのであれば「一般職の仕事は○○で、総合職の仕事とは○○が違う、よって○程度の処遇差がある」という具体的な基準が必要になり、今の「正社員」と「有期雇用社員」と同じような議論がなされていたのです。

 それから20年以上たった今、法施行後に企業はどのような対応をとり、何が変わったのでしょう。

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 2017年(平成29年)厚生労働省が発表した「雇用均等基本調査」※1によると、総合職にしめる女性の割合は18.5%になっています。2001年(平成13年)は2.2%※2でしたから、着実に増えてきていることが分かります。
 また、一般職の68.5%が男性というのも大きな変化です。当時は、男性が担っている仕事=「総合職」の仕事、女性が担っている仕事=「一般職」の仕事ととりあえず区分して運用始めた企業も多く、男性が一般職になるということには意識的な障壁がありました。それが今では「一般職」の半数以上は男性ということになります。

 このような変化は、国の指針や女性の就労を支援する関連法の改正にあわせ、企業側も「一般職」を重要な戦力としてきちんと仕事を定義し、教育研修を充実させ、根拠に基づいた処遇を実現した結果ともいえます。一般職から総合職、総合職から一般職へのコース転換制度も利用しやすくなり、ライフステージやキャリア志向に合わせて本人が選択できるようになったことは、労働者にとっても良い変化なのではないでしょうか。

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 同一労働同一賃金の実現に向けた法施行も、雇用のありかたに根本な変化をもたらすと言われています。ガイドライン※3には「労働者がどのような雇用形態及び就業形態を選択しても納得できる待遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から"非正規"という言葉を一掃することを目指す。」と謳われています。
 現時点では、正社員と有期雇用社員の仕事が同一労働と定義されるか否か、手当や福利厚生のどこまで同一とすべき賃金に含まれるのか、不合理ではない均等待遇、均衡待遇の根拠づくりが優先されます。 
 しかし、すぐに次ステップへの対応が求められることになるでしょう。有期雇用社員の評価、教育研修の推進、安定的に就業できる雇用契約、有期雇用社員から正社員への転換だけではなく正社員から有期雇用社員への転換を後押しする制度の推進などです。

 さらに忘れていけないことは、「多様な働き方を自由に選択できる」ようになると、企業にとっては長期的な要員計画や、早期退職制度、再就職支援制度などの人材出口戦略も重要になるということです。
 これまでは人員削減に迫られた場合でも、有期雇用社員の契約期間の調整、定年での自然減を見込みながらある程度は対応することができていました。弾力的に組織を運営するためには、有期雇用社員の数や定年の見込み人数は一つの解決策ともいえました。
 しかし、本人の選択が重視されるようになると、企業側は要員数をコントロールするすべがなくなります。70歳までの再雇用義務化も現実味が出ていますので、さらに要員計画の難易度が増すことになります。このような流れは企業が雇用を抱え込むことになりますので、社外に出ること、独立を後押しすることを選択肢とし用意し、一定数の人材が輩出される仕組みが不可欠になるのです。

 同一労働同一賃金のその先として、在籍する社員、有期雇用の社員が存分に活躍できる環境づくりもさることながら、企業組織として健全な新陳代謝がはかれる仕組みづくりも検討課題になるのでしょう。

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