「2025年の崖」問題から見たシステムの見直し
日本企業は今、選択に迫られている。
「2025年の崖」と呼ばれる問題をご存じだろうか。2018年9月7日に経済産業省が発表した、「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」※1にて、日本企業が保有する既存の基幹システムの複雑化・老朽化・ブラックボックス化によりデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進まず、2025年から2030年の間に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性が指摘されている。
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「2025年の崖」問題の原因は以下のとおりである。
◇企業内の事業部ごとに既存システムを最適化しようとカスタマイズをし続けた結果、システムが複雑になってしまった
◇複雑になった既存システムを熟知している技術者は既に退職しており、さらに新しい世代へと技術継承が進んでいないために、既存のシステムの保守ができない、運用に多くの費用がかかってしまう
◇各システムが連携されていないためにデータの一元管理ができておらず、データ活用が進んでいない
以上の原因から、DXが進まないために、顧客ニーズや外部環境の変化に対して迅速・柔軟にビジネスモデルを適応させることができずに、国際市場での競争に敗北してしまうのである。そこで、国際競争力の低下を引き起こす「2025年の崖」問題への対策の一つとして、基幹システムの見直しがある。
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そもそも、システムにはオンプレミス型とクラウド型の2種類の型がある。オンプレミス型とはハードウェアや設備を自社で保有・運用するシステムを指し、クラウド型とはクラウド事業者がサービスを提供し、利用者が外部ネットワークで運用を行うものを指す。 この2種のうち、「2025年の崖」問題への対策として最適なシステムはクラウド型であると考えられる。クラウド型のメリットは以下のとおりである。
◇サーバー構築等の必要がない
◇自社開発するよりも初期投資が安いので乗り換えやすい
◇自社要件に合わないシステムであれば、より自社にあった別システムに乗り換えが可能
オンプレミス型・クラウド型から新たにオンプレミス型への乗り換える場合、サーバー構築から始めなければならず、さらに社内でシステム構築をするため、要件・機能が複雑化しやすい特徴がある。さらに構築するために莫大な費用が掛かり、減価償却を考えると容易に乗り換えはできない。
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ただし、クラウド型システムにも課題は残っている。データがシステムごとに管理される場合が多いことである。
せっかく要件を満たしたシステムを導入出来たとしても、システムが相互に連携出来ていなければ、システムごとにデータ管理をすることになってしまう。それにより、同じデータを各システムに登録する必要があるので、どのデータが最新のものかわからない、さらに打ち間違いによりデータの整合性が取れなくなる危険性がある。そのような状況下では、データの一元管理によって可能であるデータ活用は期待出来ない。
では、どうするべきなのか。クラウド型システムでのデータ活用には、一つのデータベースを構築することが必要である。例えばバラバラになっているクラウド型システム同士をCSV連携で繋ぎあわせ、データを相互に連携することは可能である。しかし、CSV連携では、データを一度取り出す手間があるために、大量のデータを別システムに移行させるには、手間が増える上に時間がかかってしまう。したがって、API連携で迅速に情報を共有出来たほうが、データ活用や分析により多くの時間を費やすことができるため、1分1秒が勝敗を左右するこの国際競争に勝ち残ることができると考えられる。だが、現状クラウド型のシステム全てが汎用APIを搭載しているわけではない。今後のクラウド型システムの展開を考えていくと、この機能は搭載すべきではないだろうか。
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「2025年の崖」問題は、保守運用が容易にできる要件に合った新しいシステムに乗り換えるとともに、容易に連携ができるシステムを選択することでデータの一元管理を可能にすることが解決の糸口になるのではないか。
さらに、一元管理されたデータを活用できる人材・組織の育成も忘れてはいけない。データ活用やデジタル・トランスフォーメーションという言葉を頻繁に耳にするが、分析やデジタル・トランスフォーメーションを推進するのは、人である。この分野での担当者の成熟が必要である。