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組織を活性化させていく上で外せないポイントを、企業や組織が抱える問題や課題と照らし合わせて分かりやすく解説します。日々現場でコンサルティングワークに奔走するコンサルタントが、それぞれの得意領域に沿って交代でご紹介します。

シニア人材の活用について

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人材紹介エージェントとして日々クライアント先で求人要項を聞いていると、良く耳にするのが「なるべく若い方がいい」や、「○○部長より年下の人がいい」と言ったことをよく耳にします。
確かに若年層の方がシニア層と比べて、長期的就業が「見込める」であったり、年収が「抑えられる」であったりと採用する企業側においては魅力的に感じます。
その一方、若年層に拘って採用に苦慮されている企業が多いのも事実です。
労働力の維持と拡大は企業にとって存続の命題であり、そのリソースとして外国人人材の雇用が促進されておりますが、ここではシニア人材の活用に注目したいと思います。

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「高年齢者雇用安定法」が2013年に改正された結果、企業は定年を廃止するか、希望者に対する65歳までの雇用が義務化されました。
2019年の現在では定年を70歳と大きく引き上げる企業も増えてきている現状です。

その背景には少子高齢化による日本の労働人口の減少が大きな影を落としています。
2020年には人口の29.1%に達すると推定されている高齢化率ですが、2035年には33.4%と、日本人の3人に1人が65歳以上という予測がされています。

幸いにして前元号を争いなく乗り越えた日本は、医療の発達や健康寿命の延長で今や人生100年時代と言われております。
その中で3人に1人となるシニア層を活用する方が、外国人人材の雇用よりも企業にとって効果的なのではないでしょうか。

何故なら外国人人材を雇用する際には、
 1.日本語が話せる外国人を雇用する。
 2.外国人人材とのコミュニケーションを取るために通訳を雇用する
 3.自分たちが外国語に対応する
この3つのうち、いずれかが絶対条件になります。

1に関しては、どのような職種であろうと日本語が話せるだけでは不十分で、その先の人物像や、職能を考慮するのであれば、劇的に現状の採用難を改善する打開策とは成りえないでしょう。

2についてはまずコストが掛かります。昨年、とある1部上場の電子決済を取り扱企業では外国人エンジニア1人に対し1人通訳をあてるという事が話題になりました。
これは体力と規模のある会社でしかできないことではあります。

3については体制が整うまで時間を要することと、外国人人材を雇用するために外国語に対応した日本人の採用が必要になるなど、更なる採用難を巻き起こしかねません。

外国人採用は現在の労働力不足の打開策として、ひとつの策ではありますが上記の問題のように、受け入れ態勢の準備不足からたくさんの問題が生じています。

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シニア層の雇用に関しても、体力の衰えからくる働き方の提供や、管理体制の構築等、問題がないわけではありません。
しかしながら、今後増加の一方を辿る日本のシニア層に対して、定年制そのものを見直し、長く働けるようして、ポジションを増やすことは言葉や文化の壁を越えた受け皿を作るより容易いことだと思います。

中途採用の市場において若年層の争奪戦は激化しているなか、企業の将来を考えれば、若い従業員を確保したい本心はわかりますが、そこばかりに目を向けていては、採用のためのリソースを消耗し続けていきます。
今、より身近になりつつあるシニア層の雇用に目を向けてみてはいかがでしょうか。

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