自分の固定観念に気づき、行動を変える勇気
人には誰にでも固定観念が存在します。人が成長していく段階で、様々な経験や学習をしますが、これまでの育成環境(家庭・学校・職場・地域、社会)での成功・失敗体験や好き・嫌いを感じた経験、知識として学んだ内容等から判断基準が定まり、固定観念が作られます。
これが、事実に基づく合理的な判断基準を基にした固定観念であれば良いのですが、中には非合理的な固定観念を持っていた為に、成果に繋がっていないケースがあります。
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例えば、営業シーンで考えてみます。
A社に何度もアプローチしたものの受注できなかった過去の経験から既存社員は、A社にアプローチしても成果に繋がらないと判断し、行動することを止めてしまいました。
その後、入社した新入社員がA社にアプローチしたところ、担当者が変わっており、スムーズに受注することができました。
これは、既存社員がA社に対して、担当者が変わることを想定せず、「アプローチしても成果に繋がらない」との固定観念を持ってしまったことが原因のひとつとして考えられます。
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また、経営者や管理職が「経営者や管理職は、部下以上に優秀でなければならない。経営者や管理職には、"威厳"が何よりも大切である。」という強い思い込みを持っている場合について考えてみます。
その場合、自分以上に優秀だと感じる部下に対して、高評価を付けることを脅威に感じ、低評価を付ける評価エラーが発生するケースが考えられます。あるいは、無意識に部下を自分のコントロール下に置きたい心理が、部下の意見に耳を傾けられず、部下を窮屈かつ"やらされ感"の心境にしてしまい、結果的に部下の離職に繋がることが起こり得ます。
この場合では、経営者や管理職が強い思い込みを外し、「いくら優秀な人であっても、自分1人でできることには限界があり、各々が持つ個人特性や得手・不得手は異なる」という考え方や「自分以上に優秀な部下は沢山いて、個々の能力を最大限に気持ち良く発揮して貰う環境を作ることが自分の仕事である」という考え方をする方が、合理的であると呼べるのではないでしょうか。
経営の神様として知られる松下電器産業(現・パナソニック)創業者の松下幸之助氏は、指導者に必要な条件として「自分より優れた人を活かして使える」ことを挙げられたそうです。実力のある者ほど、自己の力を過信しやすく、自分より優れた人を排除してしまう傾向が強いけれども、自分より優秀な人を遠ざけず、活かすことができて初めて自分の程度以上の大事を成すことに繋がると述べています。
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これらのことから、成果に繋がらないと感じる時には、成果を出している人と自分の考え方の違いを知り、成果に繋がっている人の考え方や行動を自分に取り入れてみることが必要です。
また、成果が出ている時には、成功体験を基にした固定観念に捉われやすくなります。日進月歩する技術革新や顧客ニーズが多様化・高速変化している現代で、その成功体験がいつまでも通用するとは限りません。その為、上手くいっている時にこそ、自分が固定観念に捉われてはいないか、疑問を持つことが重要であるといえます。
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日々の業務では、成功体験を基に効率化した働き方をしていることが多く、無意識下にある固定観念に気づくことは困難です。
そこで、通常業務から離れたOFF-JT(研修)の場で、他者との意見交換や新たな学びや体験をすることで、自分自身の固定観念に気づき、その固定観念を外し、行動を変化させていく勇気が大切ではないでしょうか。
人材開発コンサルティング事業部 進士綾乃