役割は人を育てる
暑い夏のシーズンになりました。今年は例年以上に猛暑が続いていますが、夏季休暇を使って旅行に行く方や、家族で出かける方、友達と遊びに行く方、色々な過ごし方があり想い出を作っていくことと思います。
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自分自身の子供時代の夏休みを振り返ってみると色々な想い出があるのですが、今日は、その中で夏のキャンプについて少し話してみたいと思います。
小学生の1年生から6年生の間、地元の少年野球チームに入っていたのですが、毎年夏休みが始まる日より3泊4日で、ある湖にキャンプに行っていました。そのキャンプでは、6年生が班長、5年生が副班長となり、縦割りで5~7人位のメンバーが一つ班を作って行動をします。総勢で70~80人位の子供が参加をしていたので、当時の引率をしていた大人の方々は大変だったと思います。
キャンプは、自分達でかまどを作って火を起こし、朝晩の食事を作らなければなりません。今のように造成されたキャンプ場でなく、本当に自然の中でのキャンプであり、小学生の子供達にはかなり過酷だったように思います。そんな中、6年生の班長は、自分の班から怪我人や病人を出さないように、そして全員が協力して班を作っていくように奮闘をしていました。まずは、班員にそれぞれ役割を与えます。1年生、2年生は薪拾い。最初は小枝みたいなものだけ拾ってチャンバラ遊びしかしない子達も、日を追うごとにサイズの違う木や枝を時間内に集めてくるようになります。薪拾いが班の中で大切な役割であることを自覚すると、一生懸命仕事をしてくれます。
3年生、4年生は食材担当。包丁を使って肉や野菜を切ったり、ジャガイモの芽を取ったりします。中学年の彼らは、低学年の子達よりも難易度が高い役割を与えられ、又、班の食材を管理するという責任から、班の一員としての当事者意識がとても芽生えていきます。
最後は5年生と6年生。彼らは火の管理と班員の安全管理です。新聞と薪とマッチのみで火を起しますが、着火剤等はないので簡単にはいきませんし火傷もします。又、安全管理は目の前が湖の為、水位の監視、火の始末、獣からの避難等、やることは多々あります。夜中に点呼があり、全員を叩き起こして数分内に集合しなければいけないのですが、そこはやはり子供。疲れがたまると蹴飛ばしても起きません。結局、起こせず集合して引率の大人からは大目玉。しかし、4日目にはどの班も結束力あるチームになって地元に戻ってきます。小学生の6年間、このような経験を毎年、年次ごとに役割を変えて行っていましたが、今思うと、役割が子供の成長に結び付いていたんだということを感じています。
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時はあれから30年以上経ち、職場を眺めてみると、この役割というものが人を育てているかと問われれば、どこの会社も何とも言い難い部分を感じています。そもそも、役割が不明確であったり、役割に対してそこにやりがいを感じていなかったり、ただ単に役割を受動的にこなしているだけの組織(個人)が多いように感じます。これでは、本人の成長にも会社の成長にもつながりません。
人材開発の視点からすると、この役割の理解に伴う行動は、生産性に大きく関わることから重要な要素と考えます。例えば、管理職研修を実施する際、そもそも管理職に求められる役割(「職務定義」として掲げているケースが多い)は何で、何が求められているのか、次のステージ(例「役員」)の役割は何かといったことを理解・納得した上で研修を行う事と、そうでない受講者とは、その後の管理職としての意識、行動に大きな差が生じてきます。理解・納得した管理職は、自発的に次にどうするかを考えて行動を起こすようになります。
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自然環境の中で子供が生活をするということと、大人が社会の中で仕事をするとでは"役割"という言葉の重みは違うと思いますが、根本的な部分は同じと感じています。部下の成長や育成を考える際、今一度、その対象者にはどんな役割があると成長するのか考えてみては如何でしょうか。
人材開発コンサルティング事業部
大石 英徳