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組織を活性化させていく上で外せないポイントを、企業や組織が抱える問題や課題と照らし合わせて分かりやすく解説します。日々現場でコンサルティングワークに奔走するコンサルタントが、それぞれの得意領域に沿って交代でご紹介します。

働き方改革の本質

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"働き方改革"という言葉を見聞きしない日はないほど、"働き方改革"という言葉は、新聞やメディアを賑わせています。働き方改革は、一億総活躍社会を実現させていく上での大きな柱となっており、国を挙げての大きな取り組みです。

そもそも、この"働き方改革"とはどのようなものなのでしょうか。本コラムでは"働き方改革"を考察すると共に、企業で働く(また経営を担う)私たちが、どのように"働き方改革"を捉え、接していくべきなのかを考えてみたいと思います。

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各省庁の働き方改革に対する捉え方を見てみると、その方向性は同じであろうものの、改革、むしろ対策に関する捉え方に差異があるのが分かります。

例えば、厚生労働省。

「働き方改革」は、一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジであり、日本の企業や暮らし方の文化を変えるものです。厚生労働省では、女性も男性も、高齢者も若者も、障害や難病のある方も、一人ひとりのニーズにあった、納得のいく働き方を実現するため、「働き方改革」の実現に向けて取組を進めていきます。
(厚生労働省ホームページより)
厚生労働省のホームページには、このような記述があり、働き方改革が実現する世界観や、労働力の活性化、遊休労働力の活用などを謳っています。

また一方で、経済産業省では、

人口減少の進行や技術革新の進展により、社会産業構造・就業構造が大きく変化する中、兼業・副業、「雇用契約によらない新しい働き方」(フリーランスなど)」といった多様な働き方が注目されています。また、女性や高齢者といった多様な人材に選ばれる柔軟な職場環境整備、一方、生産性の向上により人手不足に対応する働き方も注目されています。これらにより、働き手の時間やスキルの最大限の活用を可能とし、また、企業においても多様な人材の確保に繋がることが期待されています。現在、政府を挙げて検討している「働き方改革」という観点からも、大変重要な意味を持つものです。
(経済産業省ホームページより)
とホームページに記載があります。人口の減少や、AI・ロボティクスなどといったテクノロジーが寄与して、これから起こるであろう、社会・産業の構造変化に対する対応を軸に、また既存の人手不足の解消や生産性の向上の観点から、働き方改革を捉えています。

最後に、首相官邸においては、

多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。
(首相官邸ホームページより)
との記載があり、格差社会の是正や経済循環の在り方にまで、"働き方改革"の範囲は及んでいます。
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これらの捉え方を整理すると、

  • 働き方改革は、日本の企業や暮らしの在り方を変えるためのもの
  • 働き方改革は、格差社会の是正、経済を好循環させるためのもの
  • 働き方改革は、今までの"働く"の常識とは全く別のもの

といった、スケールの大きなものであることが分かります。

これらから推察すると、今、私たちが直面している、また求められている変化は、時短勤務やリモートワークの推奨などといったものではなく、もっとスケールの大きなものではないかと考えられます。例えば、産業が農業から工業に変わったくらいの変化なのではないかと私は考えています。

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当時、農業が主な産業であった頃、多くの人は、朝日が昇る時間に起き、鍬を持ち、田や畑に行き働いていました。そこに工業という新しい産業ができ、働き方は一変しました。工場や会社というコミュニティに、朝8時や9時に、出勤という行為をし、ある程度決められたルールに則って働き、収入を得る働き方であり、そういった社会が誕生しました。実に働き方が変わったと言えるのではないでしょうか。

歴史を紐解くと、このような変化は他にもあります。例えば生命保険の外交営業。日本が第二次世界大戦で敗戦し、多くの男性が亡くなり、多くの未亡人が生まれました。生命保険会社は、この未亡人たちと契約し、営業をさせ大きな成果を生みだすと共に、眠っている労働力を市場に送り出しました。またこの生命保険の外交員は、生命保険会社と雇用契約関係にはなく、委託契約の関係で働いており、今では一般的にもなっています。

このような観点や過去の事例から考えると、時短勤務やリモートワーク、高齢者の労働力の受け入れなどは、ほんの一部の方法論にしか過ぎないのではないだろうかと考えさせられます。

少子高齢化に伴う労働力人口の減少、ロボティクスやAIなどによる仕事のあり方の変化、生産性を高める効率的な働き方の推進や労働時間の低減、グローバリゼーションの波、このような大きな社会の変化の中に私たちはおり、そのような中での、"働き方改革"を求められているのだと私は考えています。

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一方で、目の前の仕事に対する"働き方改革"を実現させていく議論において、「自立した社員でないと難しい」との話がよくでます。確かに今の労働の在り方や仕組みから考えると、1)誰にも管理されない環境、また限られた時間の中で、2)与えられた仕事、また自ら仕事を生み出し、3)成果を生み出す。 といった働き方は、確かに組織の中の自立性・自律性のある、限られた人にのみ実現できる働き方といえるでしょう。つまり、組織論の2:6:2で言うところの、上位の2のみが対象になると言っても過言ではないかもしれません。しかし、一億総活躍社会という言葉が示す通り、上位の2だけではなく、中位の6の面々も活躍できる環境作りが、真の"働き方改革"であり、求められている"働き方改革"だと私は考えています。

先に、私たちに求められている"働き方改革"は、産業が農業から工業に変わった時に起こったくらいの働き方の変化だと言いました。仮にこの変化を"働き方改革"の是として考えた場合、産業が農業から工業に変わった当時、自立・自律した社員を求めたかというと、私はそうでないと考えます。決められた時間に出社し、収穫の如何に関係なく、ある一定のルールに沿って働くことで収入が得られる。つまり、上位の2でなく、中位の6にとって"楽な"働き方に変わった。だから、その働き方は定着したと言えるのではないかと私は考えています。

働き方改革には、自立的・自律的な仕事に対する意識やスペシャリティ、プロフェッショナリティが必要であるという論が、決して間違えているとは言いません。しかし、この論は、先に出した産業の変化の例に例えると、「自分で農地をつくり、農業をひとりで始めること」、またあるいは「農地を渡すから後はよろしく」と言っていることに等しく、多くの人を巻き込む観点から考えると難しく感じます。

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このように働き方改革を考察すると、時短勤務やリモートワーク、高齢者の労働力の受け入れなどといった、ほんの一部の方法論ではなく、雇用や労働にまで着眼した、抜本的な戦略の立案が企業には求められており、その戦略によって実現される、多くの人が成果を出せる社会システムや産業構造が"働き方改革"には必要なのだと私は考えています。

代表取締役社長 兼 CEO 大野 順也

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