評価面談の目的とは
5月は多くの企業で前年度の年度評価、あるいは夏の賞与に向けた評価の最終化が図られている時期であると 思われます。 もちろん評価を公正・公平に最終化するために様々な議論や客観的な指標を用いて調整など図っていること でしょう。
ただ、評価は公正・公平に行うことができたとしてもそれだけでは不十分です。 被評価者がその評価結果を「納得感あるものとして受け入れる」ことができて初めて意味を持ちます。 その「納得感」を引き出すものの一つに「評価面談」があります。
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では、この評価面談の目的を振り返ってみましょう。 評価面談の目的は主に3つあります。
- 指導・育成を図ること 評価によって発見した問題・課題を中心に、良い点はより伸ばし、不十分な点はどうすれば改善可能かを 話し合い、今後の職務改善や能力開発・向上に向けての有効な指導を行う。
- 動機づけを図ること 組織(上司)としての評価結果を一方的に伝えるばかりでなく、本人の自己評価を聞き、お互いに質問や 提案を行い意見交換するなど双方向のコミュニケーションに努めることで、評価結果や処遇決定への納得感を 高め、将来に向けて意欲付けを行う。
- マネジメント改善を図ること 今期の計画、目標の達成状況を振り返り、目標を達成できた場合には成功要因を、未達成の場合には失敗要因を 分析(掘り下げ)し、仕事の分担、進め方、連絡のあり方、指示・指導・支援方法などのマネジメント側の 問題点の有無を検証すること
一般的に上司として、部下の「指導・育成」や「動機づけ」は常に意識をしており、評価以外の時でもこの2つは 重要なポイントと捉えられています。 したがって、「指導・育成」や「動機づけ」が評価面談の重要な目的の1つであるといったことについて違和感を 持つ方は少ないのではないでしょうか。
一方、「マネジメント改善」が目的と据えられている点には違和感を持つ方がいるのではないでしょうか。 違和感を覚える点は、「『評価面談』は上司が部下のために行っていることであるにも関わらず、 『マネジメント改善=上司側の改善』が目的となっている」部分でしょう。
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では、マネジメントを担っている方は少しイメージをしていただければと思います。
自分の部下の中にもなかなか成果を出せず厳しい評価(低い評価)を付けざるを得なかった部下がいることでしょう。 その部下が「成果を上げられないかもしれない」といった懸念や危惧はどの段階で持つでしょうか。
おそらく多くのマネジメントの方が「期初から分かっていた」あるいは「以前からそういった人材だった」と 部下の現状の能力や取り組みでは成果創出につながらないことは、前々からわかっていたのだと思います。 すなわち、半期、あるいは年度の最後の評価で「厳しい評価(低い評価)」を付けざるを得なかったのは、 前々からわかっていた「能力不足」や「取り組み不足」などが今期も変わらなかったことを意味しているのでしょう。
ここで考えてみてください。 では「期初から」あるいは「以前から」その部下が「成果をあげることができない人材」とわかっていながら、 なぜ改善を図ることができなかったのでしょうか。 もちろん本人の責任も大きいでしょうが、マネジメント人材が「適切なタイミング」で「適切な指導や支援」を 行うことができなかったからではないでしょうか。 それはマネジメントとして部下に対して「改善や適切な指導を行わなければならなかった、十分に行うことができなかった」 からではないでしょうか。
このようなマネジメントとして部下指導・支援で不十分だった点(マネジメント側の課題)を面談の中でマネジメント側が 自ら導き出し、改善の取り組みを見定めることがマネジメントとして重要になってくるのです。 これこそが評価面談の3つ目の目的に他なりません。 この点を顧みることでマネジメントの精度向上、レベル向上を図ることこそが実は非常に重要な点なのです。
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「評価面談=部下のため」ではなく「評価面談=評価者のため」でもあることを忘れず、より高次元なマネジメント への脱皮を図るよう評価面談を活用していきたいものです。
常務取締役 八代 智