【自著紹介】『徹底攻略 Microsoft Azure Fundamentals教科書[AZ-900]対応』あとがき
前回紹介したとおり、私が監修と一部の執筆を行った書籍『徹底攻略 Microsoft Azure Fundamentals教科書[AZ-900]対応』が5月20日に出版された。本書は、マイクロソフト認定資格者試験(MCP)「AZ-900: Microsoft Azure Fundamentals」に対応した書籍である。
前回は、出版社の許可を得て「まえがき」を転載したが、今回は、書籍にはない「あとがき」を書いてみた。
技術書には「あとがき」を付ける習慣がない。通常「まえがき」は、購入前に読むことを想定しているが、「あとがき」は書籍を購入し、読後に読むことを想定している。
文芸書の場合は、先入観なしに読んだ方が面白いので「まえがき」はないのが普通である。その代わり、著者の思いや作品の背景、裏話などを「あとがき」で紹介することがある。文芸作品の解釈に「正解」はないが、著者の思いを知ることで、自分の考えを深めることができる。文庫の場合には第三者による「解説」がつく。これも、より深く鑑賞できる手助けをしてくれる(ことが多い)。
技術書の場合は、読む前に全体像をつかみたいので「まえがき」が必須である。しかし、読後の行動は読者次第なので、著者の意向など別にどうでもよいということなのだろう。書籍を完成させるのにどれだけ苦労したかとか、どんな思いで書いたとか、そんなことは読者に関係ない。大事なことは、読んだ内容を自分の仕事にどれだけ生かせるかである。そのために必要な内容は、あとがきではなく本文の適切な箇所に書くべきである。
しかし、一度くらい「あとがき」を書いてみたいものである。できれば「縦書き」で。技術書で縦書きは難しいが、あとがきなら、編集者にお願いすれば付けることはできるのかもしれないが、自分から申し出るのは何か負けたような気がする(何に負けるのかは分からない)。
今回は、依頼もされていないし、もちろん書籍にも入っていないが、勝手に「あとがき」を書いてみた。
えっと、あとがきです(あとがきであります)。
これは、私の13冊目の本にあたりまして、改訂版とかを一緒にすれば11冊目になるんですが、タイトルが変わっているものの、ほぼ同じ内容の本が1冊あるし、半分くらい同じ内容の本も2冊あるので、自信をもって「13冊目」とは言えないのだけど、とにかく契約的には13冊目です。
そして、この本は歴代2番目に長くかかり、2番目に苦労しました。出版社からMCP試験「AZ-900: Azure Fundamentals」試験対策書籍の企画をいただいたのが2020年1月、まだCOVID-19が対岸の火事だった頃です。その時は2020年春に執筆して、夏から秋に出版ということだったのですが、本当にいろいろ事件が起きました。
まず、2020年3月には「5月に試験が改訂される」という情報が入ってきました。ただし、私の担当章(第1章)はあまり変化しないことが予想されたので先行して執筆を始めました。
ところが5月になって「COVID-19の影響で作業が遅れている」という通知があり、改訂が9月に伸びました。「5月はマイナーな変更を行うものの、基本的には変化がない」「9月に大きな改訂をする」ということでした。3月の発表内容から多少の変化があったものの、私の担当章には影響しないことが分かったので、私はそのまま執筆を続け、5月に仮原稿として提出しました。
8月になって、編集者から修正依頼があり「もうちょっと初心者向けに書いて欲しい」「ストーリー性が欲しい」と要請されました。AZ-900試験はクラウドの完全な初心者を対象としていますし、項目の羅列では学習しにくいのも分かります。そこで、クラウドの歴史的な経緯なども含めて加筆しました。
張り切って書いたのはいいのですが、今度は「歴史的な経緯は試験とは関係ない」「合格には歴史も必要だと思われても困る」と言われました。「物事を深く知るには歴史から学ぶ」というのが私の考えですが、確かに試験には関係ないので削除しました。もったいないので削除部分は『実は古い「クラウドコンピューティング」~クラウドコンピューティングはこうして生まれた~』として勤務先の公式ブログに公開しているので、興味があればお読みください。何の役にも立ちませんが、私は面白いと思いました。
9月になって、原稿がそろい始めたのですが、予定された試験の変更が11月に伸びたことが通知されました。このまま出版を強行するのは得策ではないので、編集者と相談の上、出版を遅らせることを決定し、新しい試験内容にしたがって原稿の見直しに入ります。
共著者の原稿をチェックし、加筆したものを提出したのは11月でした。それから初校(印刷イメージになった状態での校正(チェック)原稿の初版)が上がったのですが、共著者の方で少々厄介な問題が起き、年末から年始にかけて、全体の半分弱を書き直すことになってしまいました。
その後、構成のチェックや用語の統一などを行い、何度も校正を繰り返して、最終的に形になったのが4月です。チェックサイクルの回数は過去最高で、年末の事件を含め精神的になかなか厳しい作業でした。
今回、ようやく書籍が出版されることになり、本当にほっとしています。本書がみなさまのお仕事の役に立ったり、キャリアのステップアップの手助けになったりすれば幸いです。
長くなってしまいました。
それでは。
最後に感謝の言葉を書いて、終わりにしたいと思います。
不慣れな著者に根気強く指導していただいた編集担当者の方、編集プロダクションの方、一方的に加筆・修正した部分もあったのに最後までお付き合いいただいた共著者の皆様、執筆に必要なリソースを提供していただいた勤務先(トレノケート株式会社)、そして何より本書を手に取って購入いただいた、あなたに。
本当にありがとうございました。
そして。
この本を......気にいっていただけると、嬉しいのですが。
そして、もし。気にいっていただけたとして。
もしもご縁がありましたなら、いつの日か、また、お目にかかりましょう。