【自著紹介】ひと目でわかるAzure 基本から学ぶサーバー&ネットワーク構築 第3版
おかげさまで「ひと目でわかるAzure 基本から学ぶサーバー&ネットワーク構築」第3版が出版された。20月末には書店に並ぶ予定である。今回の改訂では、2018年秋に大きく変更された仮想マシン設定のUI(画面・手順)を反映し、あわせて執筆時点の最新動向も盛り込んだ。また、Microsoft Azure公式キャラクター「クラウディア窓辺」さんが実質的に引退したので、帯からイラストを外した。
本書は、2015年に出版社の方から声をかけていただいて、2年おきに改訂を重ねてきた。出版不況と言われる中、大変ありがたいことである。もっとも、「書籍」というフォーマット自体の需要は決して衰えていないようだ。同人誌を含む技術書一般を扱う即売会「技術書典」はサークル参加費(出展費用)が7,000円と、決して安くはないにもかかわらず600を超えるサークルが参加した。また、入場者数は1万人を超えたそうである。混雑を避けるため、早い時間の入場には1,000円の入場券が必要だが、それでもかなりの入場者があったようだ。
単なる情報であれば、公式のWebサイトがあるし、ブログで得られる情報も多いが、まとまった知識を体系的に得るには書籍の方が適している。技術書典のサークル参加者は、普段ブログを書いている人も多いようだが、書籍には書籍の魅力がある。
出版社から出る書籍には、編集者によるチェックが入るという利点もある。私も、編集者から説明が不十分なところや、一貫性の無いところをいろいろ指摘された。1人で作業していたのではなかなか気付かないところである。
ちょっと面白かったのは
「二次元のヨメ」という表現は、女性も使いますか?
という指摘だった(答えは「女性も使う」)。純粋に編集者の興味で聞いただけだそうで、本文には影響を与えていないが、こういうところもきちんと読んでいるのだと感心した。そういう仕事なので当然ではあるが。
本文に関係するところでは、単に
BGPについては本書では扱わない。
とした部分を
読者は気になると思うので、BGPとは何か簡単に説明してください。
と求められたところがある。確かに、読者としては扱わない内容でも、何の話なのかくらいは知っておきたいだろう。執筆しているとなかなか気付かないものである。
本書の出版を機会に、勤務先で不適に開催している勉強会「トレノケ雲の会」では11月18日(月)に「雲の下から(meet the author)」と題したイベントを行う。書籍の執筆は「雲の上」の人がするのではないということで「雲の下から」というタイトルを付けた。技術的な話はあまりないが、本が好きな人や、本を書いてみたい人に参考になる話をしたい。既に定員に達しているようだが、直前のキャンセルも割とあるので、興味のある方はキャンセル待ちで申し込んで欲しい。また、「ライトニングトーク」枠も設定するので、語りたいことがある人はそちらで申し込んでもらってもよい。
最後に、拙著『ひと目でわかるAzure 基本から学ぶサーバー&ネットワーク構築 第3版』の「まえがき」を掲載する。
また、以下の記事も併せて読んでいただければ幸いである。
第3版まえがき
技術者が新しい知識を習得するには、どのような方法があるでしょうか。実際に仕事で使いながら勉強する人も多いでしょうが、休日や夜間に勉強会に参加する人もいらっしゃると思います。もちろん、Web記事やブログ、それに書籍で独学する人も多いでしょう。本書を手に取ってくださった方も、勤務時間外に読んでいただいているのではないでしょうか。
「技術を習得するのは、最終的には仕事に活かすためだから、勤務時間外に勉強するのはおかしい」という意見もあります。確かに「次のプロジェクトはAzureを使うから、プロジェクトメンバーは週末を使って各自予習しておくように」と言われたら私も反発します。プロジェクト遂行に必要な学習時間は、プロジェクトの中に組み込むべきです。
しかし、すぐに仕事で使うわけではないけど、知っておきたい知識だったらどうでしょう。これは、個人的な時間を使って学習した方がよいと私は思います。
技術者は勤務先に雇われている「労働者」であるとともに、「技術」という「資本」を持ち、運用する「資 本家」でもあります。資本家が、資本を運用せずに放置したら目減りしていくでしょう。技術者は、自分の資産が目減りしないよう、現在の資産を運用し、増やしていかなければ生き残れません。
クラウドコンピューティングサービスは、初期コストがほとんどかからず、使い終わったらすぐに破棄することで最小限のコストで利用できます。新しい技術を学習するにはぴったりの環境です。
本書は、初版から一貫して「個人で技術を勉強する人」を念頭に構成しています。新しい技術は次々と登場しますが、Azureをはじめとするクラウドコンピューティングサービスを使えば、これらの技術をいち早く、そして最小のコストで使うことができます。本書が、みなさまの「技術的な資本」の強化に役立つこと
を願っています。
第3版では最新のAzure事情に合わせ、操作手順を更新するとともに、構成も見直しました。また、「可用性ゾーン」などの新しい機能も取り込んでいます。一方、以前のデプロイモデルである「クラシックモデル(サービスマネージャー)」については、利用頻度も減ってきたため記述を大幅に縮小し、最小限の記述
に留めました。クラシックモデルそのものの廃止は予定されていませんが、新たに使うことはないでしょう。
2019年8月29日