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IT技術者教育に携わって25年が経ちました。その間、変わったことも、変わらなかったこともあります。ここでは、IT業界の現状や昔話やこれから起きそうなこと、エンジニアの仕事や生活について、なるべく「私」の視点で紹介していきます。

企業クライアントとしてのタブレット端末

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情報消費端末としてのスマートフォン、タブレットの優位性は明らかだと思うのだがいかがだろう。閲覧中心の生活を送る学生が、PCではなくタブレットやスマートフォンを使うのは「進化」である。より正確には「分化」と言うべきだろうか。

PCはあらゆる作業が可能な万能端末だが、情報消費(閲覧)端末としてのPCには何かと不便なことがある。今回も、引き続きタブレットやスマートフォンの話をしよう。

なお、ベースとなっているのは2013年1月に公開した記事であるが、現状にあわせて加筆・修正を行った。

 

■PC、スマートフォン、タブレット

企業システムとして見た場合、PCの最も大きなリスクは、大量の機密情報が保存されていることである。多くの企業は、起動時パスワードやディスクの暗号化を採用しているが、パスワードを忘れたり、暗号化キーが失われたりすることが別のリスクとなる。リスクを下げるため、暗号化キーを一元管理する仕組みを導入するなどの対策を取ると、運用コストが上昇する。

そこで注目されてるのが、端末に一切の情報を保存しない「シンクライアント」である。シンクライアント端末は、画面表示とユーザー操作だけを担当し、データもアプリケーションもサーバー上にあるものをネットワーク経由で使う。ただし、完全なシンクライアントにしてしまうと、ネットワーク接続がないと全く役に立たないため、PC上にもいくつかのアプリケーションを残すことが多い。そのため、PCのハードディスク内に営業機密が残ってしまう可能性がある。

一方、スマートフォンは携帯電話の一種であり、格納されたデータには高度なプライバシー情報が含まれる。自宅の住所、家族の連絡先、個人的なつながりの友人情報などである。そのため、セキュリティ機能が最初から強化されている。データアクセスも完全に自由ではない(iOS 8からは実質的に制限がなくなったようだが)。

端末のセキュリティはPCよりも強力である。多くのスマートフォン用アプリケーションは、重要なデータにアクセスするときに二段階認証が使える。アクセス時に携帯ショートメールでパスコードを送ってくるのは、二段階認証の代表例である。

個人所有のスマートフォンを業務利用するとき、会社が「リモートワイプ」の権利を持つことを条件にする場合が多い。リモートワイプは、紛失した機器に格納された情報を消去することで、情報漏えいを防ぐ機能である。

会社がもつ情報の大半は社内のサーバーにオリジナルが保存されているため、完全リモートワイプによって端末側のデータが消えたとしても損害はほとんどない。そのため、すべての情報を一括消去可能な完全リモートワイプは会社にとって非常に有効な手段である。しかし、個人所有の情報のバックアップはバックアップ項目の選択やバックアップ世代の管理などが徹底しておらず、所有者にとって、完全リモートワイプの損害は非常に大きい。そこで、会社関係の情報だけを消去する「選択的リモートワイプ」が考案された。それほど自由な設定はできないが、便利な機能である。

ただし、スマートフォンは画面が小さく、単なる情報閲覧でも使いにくい場合がある。そこで利用されるのがタブレットである。タブレットはスマートフォンほど多くの個人情報は含まないことが多い上、たいてはスマートフォンの機能がそのまま使えるため、使い勝手も良い。画面が広いためWebベースのアプリケーションも使いやすいし、リモートデスクトップクライアントのようなシンクライアントソフトウェアも提供されている。そのため「タブレット本体に業務データを保存しない」というルールも徹底しやすい。今後、タブレットは企業クライアントとしてますます普及が進むだろう。

既存のPCと比べてもタブレットの利点は多い。タブレットのアプリケーションの配布は(スマートフォンと同様)一定の制限があるため、「どこから拾ってきた怪しげなアプリケーション」をインストールしてしまうリスクは比較的低い。ハードディスクドライブのような汎用ストレージを意識することは少なく、アプリ中心なので、操作に迷うことも少ない。

2016-08-28
▲私のPCでJPEGファイルを右クリックしたところ
[プログラムから開く]の選択肢が12個もある。

 

■企業クライアントとしてのタブレットの利点

企業クライアントとして見た場合、タブレットの利点は非常に多い。ここまでで紹介した昨日も含めて、改めて列挙してみよう。

●スマートフォンとの比較

  • 画面サイズが大きい…画面サイズがPC並みに広いため、Webベースシステムなどはほぼそのまま利用できる。
  • 高度に個人的な情報を含むことが少ない…メールのアドレス帳など、個人情報を含むこともあるが、高度に個人的な情報を含むことは比較的少ない

●PCとの比較

  • 安価、小型、軽量…ノートPCに比べると安価で、小型軽量である。
  • 高い操作性…タッチ操作に最適化された操作性は、マウスより使いやすい(と思っている人が多い)。
  • システム構成の制約…構成に制約があり、自由な設定ができない。これは、トラブルが少ないというメリットでもある。
  • アプリケーションの制約…搭載されているOSにもよるが、アプリケーションのインストール経路に制約があり、トラブルを起こす確率がPCよりは低い。
  • 通信機能…すべての機種に無線LANが内蔵されている他、3GまたはLTEによる携帯電話ネットワークを使ってインターネットに接続できる機種が多い。外付けの通信装置を必要としないのは携帯に便利である。

 

■企業クライアントとしてのタブレットの課題

一方で、いくつかの課題もある。最大の問題は拡張性である。iPadにはUSB端子はもちろん、SDカードのスロットすらない。スマートカード(ICカード)も利用できない。内蔵ストレージも拡張できないし、主記憶やCPUのバリエーションも少ない。Android系のタブレットには拡張機能を持った機種も存在するが、PCほど自由ではない。

しかし、拡張性のなさは、トラブルが少ないことにつながる。PCの利点は「なんでもできる」ことだが、それがトラブルの原因となる。

PCに不具合が発生したとき、たいていの人は「何もしてません」と言うが、ほとんどの場合は何かしている。何かしているのだが、あまりにいろいろなことができるので、何をしたか自分でも分かっていないのである。

「何もしてません」は、PC初級者だけが発する言葉ではない。私の同僚も、私も突然のトラブルが起こったときは「何もしてないと思うんですけど」と言うことが多い。「思う」つまり「「気付いてないだけで何かしたかもしれない」と謙虚になることだけが初心者との違いである。

タブレットにも多くの設定項目があるものの、その数はPCよりもずっと少ない。サポートする上では、PCよりもずっと楽だろうと想像できる。

 

■それでもPCを使いたい時がある

タブレット用アプリケーション開発は、原則としてタブレットとは別の開発環境を必要とする。iPadの場合はMacintosh、AndroidはJavaを含む専用の開発環境、Windows Phoneの場合はWindowsが(原則として)必要である。

アプリケーションが動作する機器と、開発用の機器(特にCPU)が異なる開発形態を「クロス開発」、同じ機器を使う場合を「セルフ開発」と呼ぶ。

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▲セルフ開発とクロス開発

歴史的に見ると、クロス開発はそれほど珍しいことではないが、PCではセルフ開発が基本であり、慣れないかもしれない。しかし、それより問題なのは、作成したプログラムを実機にインストールして実行するのが決して簡単ではないということだ。

クロス開発でも、実機テストは必要なので、作成中のプログラムをタブレットに転送して実行する方法はもちろんある。しかし、単にファイルをコピーして実行、というわけにはいかず、準備作業が必要になる。

本格的なアプリケーションではなく、一連の作業を単純に自動実行したい場合もあるだろう。こういうとき、WindowsならPowerShellが使えるし、Linuxならシェルスクリプトが使える。しかし、タブレットにはそういう簡易言語はあまり一般的ではないし、アプリケーション間の連携機能も弱い。

タブレットは、アプリケーション実行環境としては非常に優れているが、現時点ではプログラム開発環境としての機能をほとんど持たない。それがタブレットの利点だから、仕方ないことであるが、コンピュータのことを学びたい場合は問題になる。

コンピュータのことを学びたければ、自分でプログラムを作ってみるべきである。数百行程度のプログラムを1つでも作れば、コンピュータシステムに対する理解度は大きく向上するはずだ。コンピュータを使うだけならタブレットでもいいが、コンピュータのことを理解したければPCを使ってプログラムを作成する体験をしてほしい。

なお、マイクロソフトは、Windows、iOS、Androidなど、複数のプラットフォームで同じアプリケーションを動作させるためのプラットフォーム「Xamarin(ザマリン)」を無償で提供している。マイクロソフト創業時、最初の製品はプログラム言語BASICであり、MS-DOSが登場するまでは主力商品はほとんどすべてプログラム言語だった。企業向けシステムの比率が増えた現在でも、開発者を大事にする姿勢は変わらない。

 

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東京開催分

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大阪開催分

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