天皇と、働く女性と、アイドルと
語呂がいいので「天皇と、働く女性と、アイドルと」としてみたが、少し順番を変えた。
天皇の仕事
天皇陛下が、生前退位についての意向を示された(参考:NHKニュース「象徴としてのお務めについての天皇陛下お言葉」)。年齢を考えると、公務が負担になることは理解できるので、概ね好意的に受け取られたようである。
そもそも「象徴天皇」というのは非常に曖昧な存在である。国家元首からそのまま象徴に移行した昭和天皇と違い、即位の時点で「象徴」だった今上天皇には、何のロールモデルもない。ヨーロッパには立憲君主制の国が多くあるが、どの国も独自の歴史を持ち、君主の位置付けも違うから、参考になる部分とならない部分がある。
今上天皇は、自由恋愛で結婚した最初の天皇(皇太子)と聞いている。自分たちの手で子どもを育てたのも最初のはずである。これは、憲法に決められた「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」を反映しているのだろうし(天皇家の結婚は当人同士の合意だけでは成立しないらしいが)、「子育ては家族で行う」という一般国民の価値観を反映したものだろう。
宮内庁は、天皇の負担を軽減するためにいくつかの案を出しているのだが、その多くに対して「象徴天皇としての勤めを放棄することになる」と、天皇陛下自身が難色を示したという。それが今回の「お言葉」につながっている。
一般に、「やりたいこと」を自ら選んだ人は頑張りすぎる傾向にある。「天皇」は世襲制なので「やりたいこと」というよりも使命感なのだろうが、「自分で決めた象徴天皇像」という意味では「やりたいこと」と言ってもいいだろう。
どんなに好きなことでも、長時間労働はそれだけで健康を害するリスクがある。自分で選んだのだから「嫌ならやめれば」と言われれば、頑張らざるを得ない。
シンガーソングライターの宮崎奈穂子さんが『がんばる勇気』という曲を歌っている。看護学生のエピソードををもとに一晩で書き上げたそうである。その歌詞にこんなフレーズがある。
「嫌ならやめれば?」ってきっと 言われるの分かっているから
弱音は誰にも言えなくて いつも静かに飲み込む
さすがに、天皇をやめるわけにはいかないが、「自分で決めて、自分がやりたいことをやってるのだから、弱音を吐けない」と思っている人は本当に多い。
▲宮崎奈穂子「がんばる勇気」
アイドルの仕事
数年で消えるかメンバーチェンジを行うアイドル界で、10年以上活躍するユニットは少ない。一定以上の人気が出たのを見届けたら、次の推しアイドルを探すファンもいる。自称地下アイドルの姫乃たまは、ライブハウスの新人スタッフを指して「ほら、みんなの好きな初物ですよ」と、客をあおった。
年齢的な問題もある。昔からアイドルのピーク年齢は17歳と決まっている。南沙織のデビュー曲は『17歳』(後に森高千里がカバー)、桜田淳子は『17の夏』を歌い、松本伊代は『センチメンタル・ジャーニー』で「伊代はまだ16だから」と歌い、17歳を迎えていないことを強調した。10年も活動すれば、必然的に年齢も上がる。
たとえば、ご当地アイドルの先駆けNegiccoが若干のメンバーチェンジがあったものの結成13年、独特の楽曲とダンスパフォーマンスで魅せるPerfumeが16年、Perfumeのスクール時代の後輩にあたる「まなみのりさ」が10年目に入った。
新しいアイドルが次々と出てくる中で、一般的な「アイドル」としては年齢がハンディになる状況で、それでも今よりも多くのファンを集めるため、どのユニットも大変な仕事量だと想像する。たとえば、まなみのりさは年間200本以上のライブをこなし、ステージ構成から振り付けまですべて自分たちで考えている。自分で選んだ仕事だからこそ全力で取り組む姿勢は、ファンからすると「もうちょっと休んで」と言いたくなる。
女性の仕事(仕事をする女性)
雇用機会均等法から最近に至るまでの女性もそうである。一人前の仕事をして、家事全般の責任を持ち、子どもの面倒まで見る。今でも、そんな「スーパーウーマン」を理想と考えている人がいる。さらに問題なのは、夫君の中には「家庭をおろそかにしない限り、妻も仕事をしてよい」と主張する人がいることだ。「好きで仕事をしてるのだから弱音を吐くな」「嫌ならやめろ」と暴言を吐く男性はまだいるのだろうか。
やっと最近になって、自然な働き方が増えてきた。仕事には全力で臨むが、仕事以外の生活も同じくらい大事にする。決められた時間で成果を出し、時には人の仕事を手伝い、人に仕事を手伝ってもらい、子どもが熱を出せば妻と夫のどちらか手の空いている方が世話をする。食事の支度は早く帰った方がする。当たり前のことである。
ただし、こうした状況ですべてを完璧にこなすことは、男にも女にもできない。自分が求める理想像からかけ離れていることに気付き、ときどき自分が嫌になるらしい。好きなことをしていても、弱音を吐きたいときはある。やめたいわけではないから「嫌ならやめれば」と言われたら余計に腹が立つのだが、どう説明していいか分からないで、言葉を飲み込んでしまう。昔の男性なら、飲み屋で愚痴を言うところだが、今はどうしているのだろう。クローズドなLINEグループあたりだろうか。
そういえば、まなみのりさのリーダーのみのりさんが、ブログの中でこんなことを書いていた。
やめた方がいいのかなって思うことはあったけど、やめたいと思ったことはなかった
(みのり。10年目の想い。 )
今週のおまけ(その1)
▲8月14日(日)コミックマーケット(通称コミケ)
「まぐにゃむフォト」として 猫写真集を販売予定です。
(東京ビッグサイト「西う22b」)
今週のおまけ(その2)
全くどうでもいい話だが、私の両親は「皇太子様ご成婚」ブーム(ミッチー・ブーム)の年に結婚した。プロポーズの言葉は「皇太子さんも結婚するそうやから、わしらも結婚しよう」だったらしい。25年がたち「皇太子様銀婚式」のニュースが流れたとき、母が「ええ、今年が25年?」と驚いていた。「去年、記念の旅行に行ったのに」と笑っていた。2人そろって年数を間違えていたらしい。