視聴者参加型イベントの変化
前回は、SHOWROOMについて取り上げた。SHOWROOMは以下の点で「サバイバルオーディション」のプラットフォームとして非常に優れた性質を持つ。
- 匿名で参加できる上、無料でできることが多いため、ファンとしての参入ハードルが低い
- SNSと連携することで、より多くのポイントを獲得できるため、SNSを使った広がりが期待できる
- 他の番組を見ることで自分のポイントが貯まるため、ファンの広がりが期待できる
- ポイントには期限があり、ファンが継続的に利用することを期待できる
- タレント(番組)に与えられたポイントが常時表示されているため、ファンのモチベーションが高まる
ただし、ポイントが常時表示されていることで、順位が即座に分かるため、ファンが有料課金に傾きやすいというリスクがある(CDに同梱された「AKB48選抜総選挙」の投票券を想像して欲しい)。
しかし、物事には何でも両面がある。先日、SHOWROOM自身が主催する「コスプレイヤーのオーディション」で、ちょっとした事件があり現在も炎上中である。事実関係を明らかにするのはこのコラムの趣旨ではないので、何があったかは「出来レース?「SHOWROOMちゃん夏コミコスプレイヤーオーディション」の結果に疑問の声」などを参照して欲しい(ただし、SHOWROOM側の意見はあまり多くないため、公平な記事ではない可能性もある)。
今回、ここで取り上げるのは「CGM(Consumer Generated Media)」のリスクである。
TwitterやFacebookなどのSNSと連動してポイントを得る仕組みは、参加者自身が宣伝媒体(CGM)となることで、大きな効果が期待できる。SNSは同じ趣味を持つ人とつながる確率が高いため、目的とするターゲット層に自然とリーチするからだ。
この仕組みは悪い方にも作用する。SNSを使ってファン層を拡大したサービスは、同じSNSによってネガティブなイメージが一気に広まった。今回の事件の発端となったコスプレイヤー氏は、Twitterのフォロワー数が3万人を超えており、下手なアイドルよりも多いくらいである。案の定、一晩のうちに炎上し、翌日にはSHOWROOM株式会社からの公式発表が出たくらいだ。ところが、急いで作ったのであろう、公式発表の内容について多くの人が疑問を投げかけ、さらに翌日には追加コメントが発表されている。
オーディションの不正疑惑は昔からたくさんある。そもそも、ポイント制のオーディションであっても、イメージを損なう候補者を排除するのは普通である。そのためSHOWROOM事件に関しては、上位入賞者が選外となった時点では大きな問題にはなっていなかった。問題になったのは、オーディションにエントリしていなかった人が選出されたことが分かってからである。SHOWROOMの主張では、該当なしとなった場合のバックアップとして契約していたということである。こういう習慣があるのかどうかは私は知らないが、おそらくあるのだろう。
今回問題になったのは、ポイントの途中経過がリアルタイムに公開されているため、主催者の思惑と違う人が1位になった場合の(主にファン層の)コントロールが難しいことである。一方で、ポイントがリアルタイムに見えるからこそSNSが盛り上がる。利点とリスクは表裏一体である。
今回はSHOWROOMというCGM的なプラットフォームを使っておきながら、結果的には、SNSとの連動もファンの投票行動も課金も、まったく無関係な結果になってしまったわけで、「だったら最初から面接だけにすれば良かったのに(そうしたら無駄な課金もしなくて済んだのに)」という話である。
幸い、SHOWROOMの得点の不正操作ではないため、SHOWROOMを使っている他のオーディションに大きな影響はないだろうが、ファン行動の利用はもっと慎重にしてほしいものである。