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IT技術者教育に携わって25年が経ちました。その間、変わったことも、変わらなかったこともあります。ここでは、IT業界の現状や昔話やこれから起きそうなこと、エンジニアの仕事や生活について、なるべく「私」の視点で紹介していきます。

AIDMAからASISへ~消費行動からアイドル活動まで~

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前回「プログラマー定年○○歳説」で少し触れた、アイドルユニットの「まなみのりさ」が6月10日にテレビ朝日の番組「まつこ&有吉 怒り新党」で紹介された。わずか5分ほどであったが、検索キーワードが急上昇、地上波テレビの存在感を示した。

参考までに「まなみのりさ」のGoogleトレンドの画像を示す。1つめの山は2009年7月に26時間テレビに出たときのもので、さすがに大きい。その後は2011年12月にご当地アイドル日本一を決める「U.M.U AWARD 2011」でグランプリを獲得、広島の「ご当地アイドル」として何度かアワードを獲得し、その都度山ができているが、それほど大きなピークは来ていない。それが、6月に急上昇しているのは、やはり人気番組の影響であろう。

まなみのりさ - コピー

 

購入心理プロセスモデル

広告宣伝に対する消費者の心理のプロセスを示した言葉に「AIDMA(アイドマ)」がある。これは、消費者がある商品を知ってから、購入に至るまでに以下の過程を経るという説である。

  1. Attention (注意)
  2. Interest (関心)
  3. Desire (欲求)
  4. Memory (記憶)
  5. Action (行動)

たとえば、広告で注意を引き(1)、関心を持った人にカタログを提供することで(2)、欲しいと思うようになる(3)。欲しい製品が記憶されれば(4)、店頭で購入する(5)。もっとも、欲しいと思っているのに覚えていないことはあまりないので、「M(記憶)」を省略する「AIDAモデル」もある。

AIDMAをインターネット時代に適合させたのが「AISAS(アイサス)」である。

  1. Attention (注意)
  2. Interest (関心)
  3. Search (検索)
  4. Action (行動)
  5. Share (共有)

記憶(Memory)はともかく、欲求(Desire)までなくなって、検索(Search)に置き換わってしまったのが面白い。

amazon.co.jpに代表される通販サイトでは、欲しいものを検索してすぐ手に入るので、行動(Action)は早いものの、強い欲求や記憶しておく必要はないということだろうか。実際、衝動買いが増えたという人は多い。

面白いのは「共有(Share)」である。自分が買った物を自慢したい人は多い。いくらで買ったのか、その値段で買うためにどれだけ苦労したのか。買った物がいかに素晴らしかったか、あるいは失敗だったのかということをSNSで共有する。従来は購買行動が販売の最終目標だったが、継続的な売り上げを維持するには良い「共有(Share)」が効果的である。

AISASが提供されるのは、モノとして販売されている商品だけではなく、サービスやエンターテイメント分野でも成立する。テレビなどで注意をひき、ちょっと関心を持った人はすぐ検索する。ここで、適切な情報が上位に来ないとマーケティングは失敗だ。

 

よい検索キーワード

まなみのりさ」で検索すると、トップが公式Webサイト、2位が公式ブログ、3位がWikipediaと、ほぼ理想的な順位である。その後も公式USTREAM放送や公式YouTubeチャネルが続く。ちなみに「横山哲也」で検索するとトップは同姓同名のNHKアナウンサーで、私が出てくるのは2番目である。その後も同姓同名の人が混じる。これでは効果的なPR活動はできない。

昔は「商品名は覚えやすいように一般的な単語が良い」と言われた。IBMは「International Bussiness Machines」だし、私の最初の就職先は「Digital Equipment Corporation」だった。しかし、これでは検索キーワードとしての力が非常に弱い。現在の勤務先である「グローバルナレッジネットワーク株式会社」も同様で、検索エンジン向けではない。

廣瀬友里というシンガーソングライターがいる。現在でも「廣瀬友里」で検索すると上位は彼女のもので占めるのだが、昨年から「yuri」に改名した。しかし、単語としてありふれているので「yuri」の検索結果に彼女の情報が出るのは何ページもあとである。

「yuri」に改名した頃は、ファンに自分のWebサイトにアクセスするよう、しきりに呼びかけていたが、アクセスだけで検索順位を上げるのは非常に難しい。検索結果をクリックすると、検索エンジンが「この検索結果は重要」とみなすようだが、ほとんど効果はないのではと思う。高い効果を上げるには、「信頼できるサイトからのリンク」という地道な活動が必要である。

「まなみのりさ」はメンバーの名前「まなみ」「みのり」「りさ」を続けたもので、覚えやすい上、全体としてユニークな単語になっているため検索しやすい優れた名前である。

 

よい検索結果

いくら良い検索キーワードでも、肝心の検索結果が無意味になってしまうことがある。たとえば、シンガーソングライターの宮崎奈穂子は事務所を移籍した2014年4月と、フリーになった2015年4月に、それぞれブログを新しくしている。特に、2014年以前のブログは、2012年11月に行われた武道館単独コンサートのプロモーション活動の結果として、多くの企業サイトからリンクされている。そのため、現在も「宮崎奈穂子」で検索すると2つ前のブログが上位に来る。幸いトップはWikipediaで、こちらは定期的の保守されているため、最新情報にたどり着くのはそれほど難しくない。

しかし、Wikipediaは「百科事典」であり、特筆性のない項目を追加することは禁止されている。「私、今日からアイドルです」と名乗るのは自由だが、Wikipediaに登録するには特筆すべき実績が必要だ。検索エンジンはWikipediaの項目を重視するため、登録したがる人は多いが、「誰でも登録してよい、というわけではない」からこそ重視しているのであって、簡単に登録できたのでは意味がない。

検索結果を考えると、URLの変更は非常にリスクが高く、おすすめしない。事務所が管理しているブログなど、事情はあるだろうが、可能な限り同じものを使い続けたいものだ。

検索結果だけでなく、その中身も良くなければならない。テレビで紹介されたら、すぐに検索する人がいる。検索結果から目的の場所にアクセスして、ネガティブなことが書いてあったらがっかりするし、今日関心を持った人は、その人が昨日の夕食に何を食べたか、などには関心がない。ブログであれば、簡単な自己紹介を改めて行い、最新情報を書いておいた方がずっと効果的である。

宮崎奈穂子なんかは、ラジオやテレビに出たら、放送直後にブログを更新し「○○をご覧いただいて、ここにたどり着いた方、ありがとうございました」と書いていた。テレビは、放送前に情報を出すことを嫌がるので、番組中に待機していて、自分の名前が出たらすぐに下書きの原稿を公開するのがいいのだろうか。

 

よい共有

従来は、購買活動で消費者の行動は一応終了していた。「ネットワークビジネス」(コンピュータネットワークではなく、人脈を利用したビジネス)を除き、情報の共有が大規模に行われることもなかったが、現在は、多くの情報が共有されている。

インターネットでの活動の基本は、好きなものを好きと表現する「萌え」の気持ちと、それをもっと知って欲しい「推し」の気持ちである(日本人の心は「わび・さび」から「萌え・推し」へ ~世界の終わりのいずこねこ~)。

良い共有は、相手の気持ちが伝わってくるものである。基本的にSNSの読者は、何らかの形で個人的なつながりを持っていることが多いため、日々の感想を書くことに違和感はない。

悪い共有は、同じ文面の繰り返しである。同じ文章を1日に何度も見せられたのでは、逆に悪い印象を与えてしまう。Twitterで毎日同じ時刻に同じ言葉を発信している人がいるが、何の意味もないどころか、かえって印象を悪くする。やらない方がマシである。私はNGワード登録が可能なTwitterクライアントを使って、しつこいTweetは表示しないようにしている。また、「リツイートのみ禁止」という機能もよく使っている。

同じ内容でも、本人の感想が入っていればずいぶん印象が違う。言葉を変えながら、リツイートを適度に混ぜて、飽きない工夫をしたいものだ。

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