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IT技術者教育に携わって25年が経ちました。その間、変わったことも、変わらなかったこともあります。ここでは、IT業界の現状や昔話やこれから起きそうなこと、エンジニアの仕事や生活について、なるべく「私」の視点で紹介していきます。

身体コンプレックスを長所にする

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今週は、昔読んだ本を紹介する。別の媒体に掲載したものに加筆したものだ。

 

自分の顔が許せない!(平凡社新書) 中村うさぎ、石井政之 共著

多くの人、特に女性は、自分の身体に何らかのコンプレックスを持っている。他人から見て魅力的な部分であっても、本人は嫌だと思っていることが多い。本書はそういう「身体コンプレックス」についての対談である。

対談者の1人、中村うさぎ氏は自分の顔に満足できず、病的なくらい整形を繰り返した。「くらい」ではなく、実際に病的なんだそうである。整形前後の写真を見ると、確かに成功したと言って良いだろう。ただ、隣のページに手術中の写真があってちょっと恐い。

対談者のもう1人、石井政之氏は顔に大きなあざ(単純性血管腫)がある。石井氏の単行本デビュー作「顔面漂流記」は、自分の体験を通して「顔とは何か」について深く掘り下げた力作である。残念ながら版元品切れのため、今回は「自分の顔が許せない!の方を紹介する。古書としては割と多く流通しているようなので、興味を持った方はぜひ読んで欲しい。

自分の顔が許せない!」は、良くも悪くも、登場する話題が多岐に渡る。化粧や美容整形の話から始まり、東電OL殺人事件にマイケル・ジャクソン、生殖問題から性同一障害まで幅広い。それでも全体として「自分にとって顔・身体とは何か」ということを考えさせられるようになっている。

そういえば、数年前にテレビ番組を見ていたら、女優の菊川怜が「自分の丸顔が嫌い」と言っていた。彼女の魅力は丸顔にあると思うので、整形しないことを願うばかりだ。一方で、面長の友人は「丸顔の方が絶対もてる」と力説していた。しかし、丸顔の知人は「丸顔は子供っぽいからいやだ」と言う。

小柄な人はハイヒールを履き、長身の人は小さく見せようと猫背になりやすい。多くの女性がやせることを願うのに、本当にやせている人は「もっと太りたい」と言って、標準体型女性のひんしゅくを買う。その他にも、バストが大きいとか小さいとか、どっちにしても悩みは尽きない。

男性だって、身体コンプレックスとは無縁ではない。カツラにするメリットと、カツラだとばれたときのリスクをてんびんにかける男性は多いに違いない。石井氏によると、醜形恐怖症(自分の顔が醜いと思い込んでしまう症状)の男性もいるという。

中村氏は「私は整形して良かった」と言うが、それは美人になったからというより「これは私の顔じゃなく、整形の結果だ」と思えるようになったからだという。屈折した感じ方だが、実はこれこそが美容整形の本質なのかもしれない。

ペンネームを付けて良かったのは、悪口を言われても気にならなくなったことだ」という人もいた。これも本質は同じことだろう。

一般に、整形は「ノーマルな顔」に近付けることだが、「全てのパーツがノーマルな顔」は美人にはならない、という指摘もあった。特徴がなくなり、魅力がないそうだ。こうなると何のための整形だか全く分からない。

短所を直すことは長所を殺してしまうことでもあるので、長所をもっと伸ばすことを心がけろ」という言葉がある。ふつうは性格に対して使う言葉だが、顔に対しても「長所を伸ばせ」が成り立つのかもしれない。

 

●篠田麻里子(元AKB48)の場合

長所を伸ばすといえば、篠田麻里子がAKB48在籍時代に出したムック「MARIKO magazine」にこんな一節があった。

「今の体型に満足してる?」
「NO! 身長を伸ばしたい。10cm」

アイドルの記事なので、実際に本人が語ったという保証はないが、それにしても「10cm身長を伸ばしたい」と言い切ったことに驚く。

篠田麻里子の公称身長は168cmでチームA内の最高(当時)、AKB48全体でも2番目に背が高い(AKB48は、人数が多すぎるのでいくつかのチームに分かれている)。テレビ評論では「篠田麻里子の身長は(他のメンバーと比べて)アンバランスと言っていいくらい」とまで書かれた(このあと「にも関わらず魅力的だ」と続くのだが、それにしても少々失礼な書き方である)。

今年の4月1日、つまりエイプリルフールには簡単な加工をした写真を付けたこんなTweetもあった(日付が3月31日になっているが、これはTwitterが生成したWebページの問題で、実際は日本時間4月1日0時15分)。

あとわたし身長急激に伸びたんだー!!ほら!(」・e・)」
-- 篠田麻里子 (@mariko_dayo) 2014, 3月 31

どんな写真か見たい方は日付のリンクをクリックしてほしい。

さて、普通ならここで「篠田麻里子のように、自分の身体に自信を持って生きましょう」と結びたいところだが「自分の顔が許せない!」を読むと、そんなに単純な話ではないことが分かる。「コンプレックス」は、文字通り「複雑」なのである。私は、整形も化粧もカツラもするつもりはないが、本書を読んで「なぜしないのか」を考えるようになった。

 

●町宮亜子(俳優)の場合

この間、インターネット放送「ニコニコ生放送」で、俳優の町宮亜子さんを見た(「つたほ生なま24 MC:菅原梨央・牧橋美輝」という番組だが、深夜帯のつなぎとして町宮亜子さんが登場している)。なお、予約していない放送を後から視聴するにはプレミアム会員になる必要がある。

そこで、深夜0時から行なわれた「公開模擬オーディション」が非常に面白かった。「公開」というのは、視聴者がコメントで参加するという意味である。

あなた(町宮亜子)のチャームポイントはなんですか」という、よく聞かれる質問に対してどう答えるか、という課題に対して、視聴者から「自分の嫌いな所をチャームポイントだと言い切れ」というコメントが入った。

なるほど、これは斬新な発想である。第1に、自分で嫌いなところが、本当に悪い部分であることは、実は少ない。第2に、一般的に欠点と思われるところを「チャームポイント」と言い切ることで、ネガティブなことをポジティブにとらえる前向きな性格であることをアピールできる。

町宮亜子さんはあごのライン(いわゆるエラ)が嫌いだという。エラの張った女優というのは、一般にはあまり美形とされないので、そこをアピールすることで強い印象を与える効果もある。

ただし、単にネガティブな部分を推すだけでは不自然なので、番組内では、さらにどういう表現が良いかが検討された。

それにしても、「気に入らない部分をあえて推す」という発想と、それを素直に受け入れた態度は本当に面白かった。

そして、もっと面白いのは、町宮亜子さんの「エラが張っている」といっても、第三者的には言われないと分からない程度だったことである(写真を見てほしい)。

グラビア写真を撮るとき、写真家はモデルに、自分が嫌いと思っているところを最初に聞くというが(撮らないわけではないが、注意して撮るらしい)、逆に言うと、聞かないと分からない程度のものなのである。

「気にすることはない」と言いたいところだが、その言葉に何の意味もないことは「自分の顔が許せない!」を読めばよく分かる。容姿について考えさせられる良い本である。

町宮亜子(2)

町宮亜子(1)

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(ワッチミーナ2014決勝クール撮影会)

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