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家庭用にAED(自動体外式除細動器)を買うとしたらいくら出せるか?

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私の父やその兄弟や祖母が心臓疾患を持っていることからAEDに対する関心があります。といっても長患いというよりは壮年から老年になって心臓が詰まったようなところでして、かつ生活習慣も関係していそうなので本格的に心臓の遺伝的な疾患を持っている方からしたらなんのことはないような軽い悩みですけれども。

本論に入る前に、こうした病気に関する話題でかつ高額そうなアフィリエイトに絡むような話題はそのまま検索してアフィサイト(とは一見してわからない巧妙に長たらしい無駄な知識を披露しているゴミのようなサイト)に引っかかると当面の間はブラウザに関連広告が出て辟易しますので、気になる方はブラウザのプライベートモード(あるいはシークレットモードとも)をONにし検索して履歴を残さずに閲覧されるのがよろしいかと思います。

さて結論からいうと国内では買いきりで数十万円くらい、リースではそれを割り算したような金額が発生して高額です。Amazon.comですと1000ドルから1500ドルくらいで買えるようです。更にバッテリの寿命が数年、本体の寿命も5年から7年くらいと心臓疾患が現実的な問題として持ち上がっている人の他は念のため買っておこうかなという感覚にはならなそうな金額です。マンションでは最初から設置されていたり、古いマンションでも管理組合がしっかりしているところでは購入をしているようですね。救急車が駆けつけてエレベータを登り降りするだけでほぼ同じ場所に建っている一戸建てよりも数分間ほど病院に向かうまでのオーバーヘッドが生じると揶揄されることもありますが、AEDや防火といった設備面ではマンションのほうが充実している気がします。

一戸建てで近隣に老人ホームなどの保健施設や駅などAEDを常備する公共施設があったとしても夜間には当直がいるとはいえインターフォンを鳴らしてもすぐに立ち入ることができませんから1日の3分の1くらいはアクセスできそうにありません。そのことを考えると家にあったほうが安心ではあります。しかしながら都心部であれば救急車も比較的にすぐに来ることが期待できますし、救急車の代わりに消防車が出動し救急車が来るまでの救急救命をする(PA連携というそうです)こともあるそうなので、家庭にAEDがあったところで効果のほどはどうかな?という感じもします。

そうした事情を踏まえつつ、実際のところはどうなんだろうかと思い何か調査などないかと調べてみたところ、こちらのメディエイゴというサイトに興味深い記事が載っていました。

家庭用AEDを備えても生存率の向上につながらない | MediEigo(メディエイゴ)|海外学会+E

タイトルそのままの結論です。なおこれはアフィリエイト系のリンクやバイラルサイトではなくて英語論文を翻訳して紹介する真面目なサイトのようでした。なんでだろうというところが気になると思いますが、基本的に公共スペースのAEDというのは倒れたりうずくまったりした時に周りが「おかしいな?」と気づくことによってAEDが投入されるというスタイルとなっています。ところが家庭ですとお風呂なら沈む、トイレなら出てこない、布団なら起きてこない、廊下や階段ならバタンと行けば運が良ければ音に気づいてもらえますが壁に手をつきズリズリと這いつくばると朝までそのままかもしれないという意外と過酷な環境です。配偶者等の家族の敏感さによるかもしれませんが。

そういうわけで家庭にAEDがあっても誰も気づかないということが大きな負の要因となっており、調査では家庭用AEDを置いてある家庭で何かメリットがあったかというと今のところ意味は無いようです。もし今後iWatch等のウェアラブル機器がハートレートモニターを搭載するようになったり、何か日常生活にトランスペアレントな感じで異常を検知する機器、例えば布団の側に近接センサーを置いておき、一度就寝に入ったと判断したら朝明るくなるまでの間に通算して5分以上布団を離れたなら異常発生とみなすとか、そういった仕組みが整備されればAEDを各家庭に置く効果は高まるかもしれません。

それで思い出したのですが、我が家では長子の新生児期に新生児突然死症候群の検知のために呼吸モニターのBabySenseという製品を使っていました。微弱な振動を検知する板状のセンサー、大きさは新聞紙を完全に広げた状態の半分ほどで厚みは1cmに満たないほどですが、それをベビーふとんの下に敷いておいて振動が止まる=呼吸が止まるとみなして音で発報するというものです。これは当時eBayで購入し送料も含めて1万円ほどでした。もし家庭用AEDを導入するのであれば、おそらく家庭内の死にやすいスポットの上位である布団、風呂、トイレのあたりにこういった性質のセンサーを設けるのと同時が良いかもしれません。ちなみに風呂やトイレはヒートショックでの心臓発作が多いと言われますので、暖房の設置や断熱改修によってそこのところの確率は下げられるかなと思います。

さて前置きが長くなりましたが、(というのも意味が無いのであれば買うにしてもお金が出しにくいので)そういった対策により家庭用AEDの実効性が高まったという仮定の上で買うとしたらいくらくらいならお金を出せるかな?と考えるとなかなかおもしろいと思います。現実に家庭用火災報知機の設置義務が大幅に強化されたことによって一般家庭での火災による死亡率や損害金額は明らかに改善していると言われますので、それと同じような効果が得られるかもしれません。火災報知機は家中につけても1万円やそこらですね。それで数百万円や数千万円に達する家屋という財産が守れるのであれば安いものです。ではAEDの10万円というのは果たして安いのか高いのか。年額1万円のレンタルであれば、50歳を超えたくらいならば契約できるんじゃないかというように思えてきます。

ただ若い人も含めてあまねく家庭に普及させるとなると、その意義が問われることとなると思います。

学校における心肺蘇生の普及の状況 - 減らせ突然死 ~AED10年目の想い~ - アピタル(医療・健康)

こちら(オリジナルの数字は消防庁ですが)のリンク先のグラフを見ると心停止が発生しやすい年代というのは50歳以上ということが言えますが、10代や20代でも多少は心停止が生じていることは確かです。ただ本文を読めば運動に誘発されての心停止が多いということであり、普通に生活している家の中でAEDが登場する場面というのは少ないのかもしれません。

色々と考えが発散してしまいましたがこんなところですかね。

  • 10万円以上はちょっと高い → 予後を良くして医療費を抑制するために補助金を出せるか?
  • バッテリーの寿命も短い → 家庭なら庭で倒れることも少なそうなのでコンセント式でどうだろうか?
  • 若い家庭に必要か? → 仮に全員プレゼントにしたとしても狭い家が多いので置き場に困りそう。

私個人としては心臓疾患はむしろポックリ死ぬチャンスという側面もあると感じています。祖母は死ぬ前の晩御飯までピンピンしていながらも朝になったら布団も乱れることなく安らかに冷たくなっておりました。もし現代でそれを望むとすればポケットに入れたiPhoneに「AED要らない」っていう設定をしておいたらAEDが心電図をとろうとした時に「こいつもうAEDしなくていいから死ぬわって言ってますよ」っていうのをiPhoneが人体通信で送ってAED本体に「AED不要なので起動できません」って出てくれたらそれはそれでいいのかも、なんて思いました。

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