SEはインサイダー取引と無関係でいられるか
NHKの記者がインサイダー取引を行ったそうですが、世の中には記者と同じくらいに濃密な情報に触れているSEもいることでしょう。
NHKの事件や日経新聞の事件では、会社の情報をマスコミという立場を悪用して一般の人よりも早く仕入れて株で儲けるという構図でした。NHKの事件ではまだ詳細が明らかにされていない感がありますが、日経新聞の件は1年以上前のニュースなので色々なサイトでどのような事件だったのかを知ることができます。
日経新聞の件では広告局の人が、新聞に載る前の広告を見て事前に株を売買するという手段でした。この方は証券取引法違反で逮捕・起訴されました。裁判の結果は、懲役2年6ヶ月、執行猶予4年、罰金600万円、追徴金約1億1600万円というものでした。
SEをしていると色々な場面で濃密な情報に触れ得る機会があるはずです。開発要員としてプロジェクトに参画したり、現行システムの運用をしたりする中で株の売買に有利な材料を得る何かのきっかけがあるかもしれません。そういったインサイダー情報については知ってしまう事は不可避ですので、当たり前のことですが業務で関連した株は売らない・買わないようにしなくてはなりません。
たとえば新規開発を受託して要件定義を担当したSEが「この会社の新システムは成長に貢献するな」と思い、リリース前に株式を買ったような場合はインサイダーっぽい感じがします。まだその場合は長い期間のうちで1回売買されるだけですが、何社ものアウトソーシングを受ける運用SEが生データにアクセスする場合はもっとたくさんの売買タイミングを得ることができそうです。業務上、生データに触らざるを得ないなら不法行為はインサイダー取引だけですが、インサイダー取引のために本来アクセスできないはずのデータを盗み見た暁には別の法も犯します。こういった事件が実際に発生したら大変なニュースになることでしょう。
日経新聞の事件を受け、朝日新聞が講じた対策は「取得から半年以内の株式の売買を禁止する」でした。これは効果的な方法であるようと言われます。社員は資産形成の手段を温存できますし、インサイダー取引はかなり減らすことができそうです。私の友人は、公認会計士になるときに所有していた株式をすべて売ったそうです。SEも扱う業務の内容次第ではそれくらいする必要があるかもしれません。
今のところ、SEがインサイダー取引で告発された事例を知りませんが、この先出てくる可能性もゼロではないと思います。なお私は今のお客様が株式会社ではないですので全然気にしていません。