情報システムの防災
9月1日は防災の日です。
情報システムは人力とは比較にならない量、速度の処理を行うことができます。
その一方で、サーバには多量の情報が集積されます。
セキュリティ強化策で端末に情報を残さないシンクライアントを
利用した場合は情報が一層サーバに集約されることになります。
サーバが一極集中で置かれてWANにより事業所を接続する構成もあれば、
サーバが事業所ごとにおかれる構成もあります。
情報のサーバへの集積度の高低に関わらず、
サーバが置かれている拠点が震災などの被害に遭うと大変です。
電源を二重化したり、建物を災害に強い構造にするなどの
対策が取られますが、想定外の激しい災害には耐えられません。
そのため金融関係などの極めて重要なシステムは遠隔地に
バックアップサイトを作ります。こう言った
「事業の継続を確かなものにするための計画」をコンティンジェンシープランと呼びます。
正規サイトとバックアップサイトの間ではデータの同期が取られます。
重要度により、リアルタイムで同期を取る場合もあれば
1日おきだったり1週間おきだったりします。
いざ正規サイトが停止してしまった場合、
バックアップサイトに運用を移行する必要があります。
阪神大震災のときには地震計からの情報が得られず、
もっとも激しい地震が起きた地域は当初欠測になっていました。
それと同様に激しい災害が起きた場合はバックアップサイトへの
切り替え指示が出せないこともあり得ます。
そのため、バックアップサイトから正規サイトを定期的に監視し、
応答が何秒以上連続して途絶えた場合は切り替えを実施する等の
仕組みが採用されます。
バックアップサイトから何らかの方法で切り替え操作が可能な場合でも
切り替え実施の意思決定ルートが事前に設定されていなくては
誰がその判断をするのか混乱が発生する可能性があります。
例えば情報システム部門の部長が判断すると規定しておいたところで、
災害時に必ず連絡が取れるとは限りません。
意思決定順位を事前に定めておき、順番に連絡を取っていくような
仕組みが必要です。最終的にバックアップサイトの担当者が
自分で切り替えを実効できる権限を持つようにすれば確実です。
その場合は「担当者が全員連絡不能」「報道などにより災害の事実を確認」
「30分待機し、なお連絡不能な場合のみ切り替えを発動する」
などの指針を定めておくと混乱を予防できます。
また、誰々が連絡不能な場合、というようなテストケースを作って
今日の「防災の日」のようなタイミングで切り替え訓練を行っておく事が効果的です。
ハードウェア的な面とソフトウェア的な面から見れば、
バックアップサイトに正規サイトと同等の構成を作る事は
難易度の高いことではありません。
少なくとも正規サイト構築の費用と同等の金額を支払えば
バックアップサイトを作る事ができます。
あとは上で述べたような切り替わりのための仕組みを構築する費用を
負担すれば災害に対応可能なシステムとなります。
しかしバックアップサイトに運用スタッフを配備する事は
大変難しい問題です。通常は正規サイトを運用した結果を
バックアップサイトに複写する形になりますので、
バックアップサイトでは正規サイトと異なる運用が取られます。
正規サイトで行われている運用をすべてドキュメント化し、
それをバックアップサイトに伝達することを経常的に行わなければなりません。
バックアップサイトへの切り替わりが正常に動作しても、
その後に経常的にシステムを動かすには運用を行う必要があります。
日次のバッチ処理は何を流すのか、何をもって正常終了と判断するのかなどの
運用ができなくては安定稼働が望めません。
ドキュメントによる運用オペレーションの伝達が完璧だった場合でも、
錬度の問題が発生する可能性があります。
普段からその運用をやり慣れていない人物でなければ
時間通りに作業を終える事や異常を発見することが難しいです。
そのため、理想を言えば定期的にバックアップサイトと正規サイトの間で
運用スタッフを循環させるのが良いと言われます。
現実的にはなかなかそこまでするのは難しいでしょう。
また、いずれはバックアップサイトから正規サイトに
運用を戻さなくてはなりません。そのための作業も
災害が発生するより前に考慮しておく必要があります。
災害は起きないのが一番ですが、防ぐ事はできません。
そのため、起きてしまった場合にどう行動するかを
普段から取り決めておき、その訓練を行う必要があります。
災害というものは絶対に遭遇したくないものです。
しかし、大きな災害を無事に切り抜けた人が
「以前に他の土地で大地震に遭っていたので落ち着いて行動できました」
というような証言をしておられるのを聞くと
一度は経験しておいたほうが度胸がついて良いのかな?とも思います。
今日のところはひとまず家にある非常持ち出し袋の中身を確認して寝る事にします。