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キャズムとVALSって関係あるのだろうか

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大量生産される商品は、一般的に製品ライフサイクルと言われる
市場浸透から普及そして飽和、衰退の流れを辿ります。

例えば男性向けの顔拭きシート(厚手のウェットティッシュのようなもの)というのは
「なんで男がそこまでせにゃならん。洗面所でゴシゴシ洗って来い!」
という層に阻まれてなかなか浸透しなかった期間が長かったようです。

ところがどっこい男子高校生あたりだとオシャレにうるさいですので
当然のように使いますし、男同士で貸し借りもしたりするわけです。
一応まだ26歳である私の高校時代には洗顔シートなるものはありませんでした。
なので何年か前に電車で顔拭きシートを貸し借りしている男子高校生を見た時は
「お前ら女子高生か」という気持ちもありましたが、思い出してみると
自分たちの世代でも部活の後に水飲み場で洗顔フォームで顔洗ってたりしました。
その後30分自転車漕いで帰るので家に着く頃には汗だくになるんですけどね。

さて、それでもいつの間にか顔拭きシートは巷に普及して、
今ではお客様のところにサッパリした顔で登場したい営業マンさん達にも
多く用いられているように思います。そう思ったのは帰りの電車で
結構年上のおじ様のカバンからメンズビオレの洗顔シートが見えたからでした。

詳しく普及の経過を調べたわけじゃないのでイメージで話してますが、
男子高校生をイノベータとして顔拭きシートが普及してきたと言えます。
アーリーアダプターにあたるのはその上の大学生やら、
ルックスに自信を持ち、勝負ポイントにしている営業マンさん等と思います。
そしてそれが更に広まりを見せ、今や私の職場でも普通に顔拭きシートを
使っている人を見かけます。ええ。SEですので一日中部屋の中ですし、
チームマイナス6%の参加企業であるとは言え、汗かくような室温ではないですが。

「お、流行に敏感な●●君が使ってるならオシャレなもんなんだろう」

という気持ちで、流行から一歩遅れたアーリーマジョリティの皆さんが
使い始めると市場にインパクトが出てきますので、薬局で店先に並んだりします。
そこで初めて商品を知ったレイトマジョリティの皆さんも「なんじゃこら?」と
買うようになって、男子の面子はそこら中でゴシゴシ拭かれる様になりました。
でもおしぼりで拭いてはいけません。それはラガードと言われる人の特権です。

このような切り口をテクノロジーに当てはめると、オシャレかどうかという指標とは
異なるものが影響力を持ってきます。技術が出始めの頃は
手なづけられるかどうか未知数です。それでも技術に魅せられた
一部の人たちが手を出します。この人たちだけでその技術が終わってしまうか、
それともイノベータが便利さを周囲にアピールする事で多くの人たちが
その技術を使うようになるか。その壁がキャズムと言われるものだそうです。
この壁を越えられないと「人柱」とか言われる悲しい状態になります。
最近ではプレステ3というものがありましたね。おっと失礼。まだ過去形ではないですね。
スクエアとコナミが「プレステ3が普及するまではソフト開発を凍結します」と言ってるだけです。
プレステ3がキャズムを破ればきっと爆発的に普及しますね。がんばれ。

さて、キャズムとセットで語られる

イノベータ
アーリーアダプター
アーリーマジョリティ
レイトマジョリティ(フォロワーとも)
ラガード

という分類ですが、ここをもっと突っ込んだ分類があります。
これをVALSと言うのですが、日常生活で聞いたことがまったくありません。
「アーリーアダプター」という言葉はたまーに聞くことがあるような気もしますが、
それと比べると知名度がすごく低いように思います。

VALSはSRIC-BI社の登録商標でして、日本の市場を
3つのモチベーションに区分された10グループに分類するものです。
権利関係の表記が多いサイトだったので、画像を転載せずに
リンクだけとさせていただきます。詳しくは↓をご覧下さい。

VALSの10グループ(わかりやすい図はこちら)

市場浸透戦略やプロダクトライフサイクルマネジメントでよく言われる分類と比較してみると、
このような関係があります。

  • イノベータ ⇔ 革新創造派
  • アーリーアダプター ⇔ 伝統尊重派 & 社会達成派 & 自己顕示派
  • アーリーマジョリティ ⇔ 伝統アダプター & 社会アダプター & 自己アダプター
  • レイトマジョリティ & ラガード ⇔ 同調派 & 雷同派 & つましい生活派

革新創造派(4%)

新しいものに積極的な高感度消費リーダー。経済力・バイタリティも高く、トレンドにも目を配る。新規性評価のアンテナ。

自己顕示派(6%)

レジャー・ファッション高感度享楽層、流行に敏感で、自己表現にこだわる。今をエンジョイする。

自己派アダプター(12%)

自己顕示派を追う層。

社会達成派(5%)

キャリア・社会志向の強い良識層。社会的文化的関心が強く、客観的ゴールを設定して努力する。趣味も豊富。

社会派アダプター(14%)

社会達成派を追う層。

伝統尊重派(4%)

日本の文化伝統を守り、継承する層。義理・分別を重んじる。

伝統派アダプター(8%)

伝統尊重派を追う層。

同調派(22%)

社会潮流にあとから参加する層。自分からは積極的に新しいものを求めないが、周囲の意見は尊重。

雷同派(17%)

社会の流れに鈍感な保守層。生活の中心は家族、流行には関心を示さず、変化を好まない。

つましい生活派(9%)

社会の流れに低関心層。静かな生活を送る。長時間テレビを見て過ごす傾向がある。

 

なんかananの占いのようですが、さすがに説得力がありますね。
自分の場合はファッションに無縁ですので社会系か伝統系です。
ブログ書いて自己の鍛錬としているあたりから考えると社会達成派でしょう。
分類図の色分けから判断しか限りではラッキーカラーはブルーです。
青いサンダルを買いに行きましょう。新しい出会いがあるかも。嘘ですけど。

このような分類を考えると、イノベータとアーリーアダプターの間に
大きな壁があるというこれまでの認識に加えて、
自己顕示系の人と社会系の人と伝統系の人の間にも大きな壁がありそうです。

例えば、携帯電話というのは広く普及しているものです。
アーリーアダプターには既に第3世代携帯電話が普及しているものと仮定しましょう。
その中でも、自己顕示派には着うたなどのエンタメ機能が普及し、
社会達成派にはフルブラウザやモバイルSUICAなどのビジネス機能が普及し、
伝統尊重派には第3世代ではあるものの低価格モデルが普及するという傾向が見つかるかもしれません。

この分類は実は日本向けにカスタマイズされていて、正しくはJapan-VALSというようです。
本家はアメリカで作られたもので、国際スタンフォード研究所のアーノルド・ミッチェルさんによる
「価値と生活様式に関する市場調査」と言います。
(価値と生活様式⇒Value And LifeStyle⇒VALS)
書籍で確認したい方は「パラダイム・シフト―価値とライフスタイルの変動期を捉えるVALS類型論」
というのが詳しいかと思います。偉そうに言いましたがもちろん読んだ事ないです。

これ以上分類すると市場のセグメント化になってしまいますし
覚えるのも大変なんですが、10個くらいなら覚えられる範囲と思います。
そういう自分は大学時代には覚えていたのですが、すっかり忘れておりました。
システム開発の現場ではカーボンナノチューブの先っちょほども活用できる場面がありません。
ゼミの先生にはごめんなさいですが、覚えてろっていうほうが無理です。

そこで、こういうビジネス系のお話の「イノベーター」を自負する方は
(イノベーターどころか20年位前の理論だったと思いますが)
覚えて活用してみてはいかがでしょうか?

最後はお約束なんですが、皆さんご一緒にどうぞ。
ヴァルス!
目がー!目がぁぁぁー!

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