図書館の再開から考える、感染拡大防止対策のポイントと進まぬパーソナルデータ活用議論への懸念
図書館や公園の再開を政府が容認するとしたようです。
わたしのオフィスから徒歩圏内に国会図書館があります。
仕事と趣味両方で利用させてもらっていますが、新型コロナの影響で緊急事態宣言が発令される以前の3月から閉館しており、約2ヶ月ほど利用できない状態となってたので大変有りがたい判断です。
現状国会図書館のサイトには5月20日(水)までが来館サービスの休止期間とされています。
2月に利用した時、すでにコロナ騒ぎは始まっており、国会図書館のパソコンのキーボードの汚れを見て感染リスクを感じたことを覚えています。
幸い国会図書館は、入管に際してカードでの認証を行い、PCの利用時もリーダーにカードを乗せて利用します。
ですので仮に感染者が発生したとしても誰が近くで作業していかを含め検証することは技術的には可能なはずです。
新型コロナのやっかいな点は発病としての明確な兆候がない人が感染者でウイルスをばらまく可能性があることです。
5月3日に放映されたNHKスペシャル「調査報告 クルーズ船 ~未知のウイルス 闘いのカギ~」では、不特定多数が触れやすい場所を高頻度接触環境表面(ハイタッチサーフェス)と呼んで紹介し、各人の手指消毒という一般的な対策が大切と紹介していました。
具体的には、ドアノブ、電気スイッチ、エレベーターのボタン、手すりなどが該当するのですが、国会図書館においては21日以降の再開にあたり、
- PCのキーボード
- ロッカールーム
↑こちらのハイタッチサーフェスをどのように対策していくのかがポイントとなるような気がします。
ですが、利用者が変わるごとに消毒するのは現実的ではないように思います。
その他に感染拡大防止策として思いつくところとしては、入館時にサーモグラフィでの発熱チェックと入館制限を行うことも方法としてあるのかもしれません。
飲食店や小売業に営業時間の短縮や休業をしてもらっている前提での自粛を6月以降続けるのは、どう考えても無理があるだろうと思います。
経済活動を再開していくにあたり、先日の専門家会議の資料にもあったように、仮に感染が再度増えた場合などに備え、効率的にクラスターサーベイランスできる仕組みを準備しておく重要性が更に高まっていると思います。
個人情報の活用にあたって否定的な意見の方も多いと推測しますが、国会図書館を例にすると
繰り返しとなりますが、発症していない人がウイルスをばらまくことが指摘されているので、入館時の検温と発症者が出た場合の接触者としての利用履歴の利用についての許諾を得た上で、図書館利用時の手指消毒とマスク着用を義務化するような、新型コロナが存在する前提での利用規約の改定が急ぎ必要ではないでしょうか。
5月末までの非常事態宣言の延期となりましたが、ICT利活用の必要性については4月1日の時点で専門家会議の会見で指摘されている事実があります。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 :「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年4月1日)
Ⅳ.提言
(3)ICTの利活用について
感染を収束に向かわせているアジア諸国のなかには、携帯端末の位置情報を中心にパーソナルデータを積極的に活用した取組が進んでいる。感染拡大が懸念される日本においても、プライバシーの保護や個人情報保護法制などの観点を踏まえつつ、感染拡大が予測される地域でのクラスター(患者集団)発生を早期に探知する用途等に限定したパーソナルデータの活用も一つの選択肢となりうる。ただし、当該テーマについては、様々な意見・懸念が想定されるため、結論ありきではない形で、一般市民や専門家などを巻き込んだ議論を早急に開始すべきである。
また、感染者の集団が発生している地域の把握や、行政による感染拡大防止のための施策の推進、保健所等の業務効率化の観点、並びに、市民の感染予防の意識の向上を通じた行動変容へのきっかけとして、アプリ等を用いた健康管理等を積極的に推進すべきである。
実は4月1日に行われた記者会見で、発表資料の当該部分について記者から全然質問がなく、心配した東京大学医科学研究所の武藤教授が記者会見後半の質問時間の際に自ら発言したという内容でもあったりします。
詳細についてはこちらの動画の1時間34分45秒あたりからの武藤教授の発言を確認いただければと思いますが、発言のポイントは以下の通り
- アジアの国で非常にスマートにデータを使って(感染対策の)アシストをしてもらっている
- 質問してもらわないと後からこんな話は聞いていないと言われると非常に良くない
- 検討を透明性を保って活用の意義を日本で考えないといけないと思っている
- パーソナルデータの利用の問題点は知らなくても良いことまで知りすぎてしまうこと
- 用途が無制限になる恐れとか、心配ごとがある話なので、しっかり丁寧に議論しなくてはいけない
- でも、急いでいるというのが現状ということを理解いただきたい
イスラエルが取っているような対策を日本で実施できるとは思いませんが、経済活動を回すなかで、改めて感染者が増えたときに、人海戦術に頼らずスマートに対策を講じるためにも、個々人がどこまで政府に情報を提供できるのかがいま問われていると思います。
専門家会議でICT利活用の提言がなされたのが4月の1日、そして今日は5月5日で1ヶ月以上が経過していますが、そういった議論が深まっているように自分はあまり見受けられないのが心配なところです。