「日本の未来は暗い」という悲観論は知的エリートの悪あがき?
「格差社会論はウソである」という書籍を手に取る機会がありまして、昨年ワーキングプアなどを数回取り上げてきた自分としてはどんな事が書かれているのだろう?とかなり興味を持って読んだのですが、著者の増田 悦佐さんという方、これまでの経歴から考えるとかなり刺激的な発言されており面白いのでちょっと本の紹介しておきます。
『「戦略なき漂流国家」と「ダボハゼ型事業ポートフォリオ」こそ理想の姿』という章の中に、
そして今、知的エリートたちの得意中の得意分野である戦略の形成が、本当に企業の存続に有用なのかという大問題が、提起されている。あれやこれやの戦略が正しいかまちがっているかという話ではない。戦略を持つこと自体が企業の存続に有益なのか、有害なのかという議論だ。読者の多くは驚かれるだろうが、現代の経営学ではどうやら「戦略を持つことは無害どころか有害だ」という理論のほうが優勢になりつつある。
という記述があり、
増田さんは証券(セルサイド)アナリストだったころは、日本型の経営については口を極めて罵倒していたそうなのですが、株式市場が歓迎するのは、戦略にもとづいた大バクチを打って、そのバクチが当たったかはずれたかによって勝ち負けがハッキリついてしまう企業なのだそうで、
ただし、セルサイドアナリストとしては商売になりにくいので有難くないけれど、よくよく考えたら、日本の企業は採算性を真剣に検討していたら絶対進出をしなかったと思える部門を抱えながらも(戦略とは言いようのない戦略を掲げ、同業他社と横並びしつつも)、育成と縮小・撤退をすることにより、単に目先の収益を確保するだけでなく、永続的事業体としての長命化を見事に達成している会社が日本に多く存在しているじゃないかと書かれています(苦笑)
そして、マイケル・E・レイナーという方の「戦略のパラドックス」という書籍については、いろいろな意味でアメリカ経営学保守本流の最先端を具現化したものとして取り上げているのですが、そこでもアメリカ企業がもっている問題点をさらけ出していると指摘しています。
オルタナブロガーでもこの書籍について取り上げていらっしゃる方々がいらっしゃいますので比較をしてより多面的な検討をしていただくのが良いと思うのですが、増田さんはこんな部分をとりあげています。
レイナーによれば、成功する企業の反対概念は、失敗あるいは破綻する企業ではない。成功する企業の反対概念は、可もなく不可もなく生き延び続ける企業だ。
たしかにこの概念はアメリカ経営学保守本流な感じがするよな~~と感じつつ、日本型経営についての批判などはメディアで沢山見かけますが、結果として日本の大企業が示すダボハゼ型事業ポートフォリオを、中小企業、スタートアップ企業の「戦わない経営」の組み合わせは、みごとなリスクテイク機能を発揮しているという指摘はとても面白いと感じたのでした。
この「格差社会論はウソである」の帯には、
「日本の未来は暗い」という悲観論は知的エリートの悪あがきにすぎない!
というこれまた刺激的な文言が書かれていますが、これをバリバリの資本主義の現場である、証券アナリストだった方が書いているという点で一読しておいて損はない感じがします。
※この書籍では単なるやっぱり日本式が良いという単純な主張が展開されている訳ではなく、取り組むべき課題のレベル、達成するための難易度は最高に高いけれど、それがやれたときには凄いよね…という趣旨の書となっています。
このエントリ昨晩はまとめ切れずいつもの定時公開は諦めたのですが、帰宅してニュースを眺めていたら、今回のエントリ向きのこんな記事に出くわして、勢いつけてこのエントリ書き上げたのでした(苦笑)
そんでもって、佐川さんがこんなエントリをアップされています、日本でしかビジネス経験がない記者や評論家の人たちが書く日本型ビジネス悲観論であったり、あまり根拠がはっきりしないモノつくり推奨記事より、米国でビジネスをされている佐川さんの指摘には数倍説得力あります。