HPによるPalm買収に想う
先日、HPによるPalmの買収について発表がありましたね。90年代末にPDAの波をつくりだしたPalmが買収されると聞き、8年前にPalmが日本撤退をする際に、その場にいた自分にとっては複雑な心境でした。もう十分時間も経ったと思うので、Palmについて自分なりの総括をしてみたいと思います。
Palmが無ければ今の自分はいなかったと思えること
今だから言えるのですが、当時のLotusの社長のありがたいオファーをけって、Palmに参加した理由。それはDoCoMoとLotusの共同開発プロジェクトに参加したことで、モバイルがこれから重要な市場になるという確信めいたものからでした。某外資系製薬会社MA向け端末にご採用いただいたり、@hirataや@cheebowなど一緒に仕事をする方達との出会いもあり、期間は短くてもとても充実していた期間だったと思います。CodeWarrierをさわってみたり、@ITに寄稿することもありましたしね。
また、Palmに参加したことで、今の自分に影響を与えたことは、"Zen of Palm" です。これは当時のPalmの開発哲学ともいうべきもので、"Less is more" を具現化したものととして理解しています。当時の技術やCPUパワーでは大したことができるわけではなく、手のひらのデバイスで最低限必要なことを確実に実現していくための方針として感動したことを覚えています。シックス・アパートに参加してMovable Typeを担当したのも、この "Less is more" を具現化していたからですし、Twitterが好きな理由もここにあると思っています。
Palmはなぜ失敗したのか
様々な角度から言えるのですが、「環境の変化に順応できなかった」点に集約できるのではないかと思っています。8年前のPalmは、日本の某通信事業者と共同で通信機能を搭載したデバイスを開発していました。当時の米国では、Palm VII (seven) というデータ通信モジュールを搭載したデバイスがあり、ウェブクリッピングという技術を推進していました。実際には日本で販売するために必要なJATEの申請もしていたのですが、大人の事情により製品リリースすることはありませんでした。
当時の通信事業者各社は、現在ほど競争が激化していたわけでもなく、iモードやEZwebのような自社サービスもあったという背景もあったのでしょう、強気の交渉をしていたことを覚えています。ればたらはいけないのですが、このときに両社が新しい市場をつくることに合意をしていたなら、現在のiPhoneの成功とまではいかなくてもそれなりの成果をだせていたと思っています。iPhoneとiTunesの関係は、PalmとPalm Desktopの関係と一緒ですし、当時のAppleがPalmを買収しようとしたとかという話もありましたしね。
環境の変化に順応することの難しさと大切さ
HPがPalmを買収し、様々な特許や技術を取得しても、この「環境の変化に順応すること」ができなければ、本当に高い買い物をしましたね。ということになるのだと思っています。多分、重要な経営陣や技術者は、一定の期間転職ができないような契約を多額のオプションとあわせて提案しているでしょうし、この期間に変化に対応した製品をリリースできるかがポイントになります。HPは様々な会社を買収してきていますから、他文化の企業といえます。Palmの文化をうまく吸収してもらいたいし、業務端末やキオスク端末のプラットフォームとしてwebOSを採用するでしょうから、ChromeOSとの競争となるわけです。がんばってもらいたいものです。