心に残るサービス
私は資産管理というサービスを提供していますが、サービスと言うものは、販売と異なり無形であり、お客様ごとによりサービスに感じる価値は変わります。それ故、価値あるサービスを提供すると言うことは、非常に難しいと感じています。今回は、以前私が見て今でも心に残っているサービスの話をしたいと思います。
その舞台は、高級ホテルでも一流レストランでもありません。病院の送迎バスの中です。病院といっても、富裕層専門のクリニックではなく、どこの街にもある中規模の一般病院です。
私はその病院に対して営業で訪問し、近くの駅まで帰るために病院のシャトルバスに乗りました。シャトルバスですからもちろん無料です。また、シャトルバスですから、近くの駅に送ってくれさえすれば、サービスは完了します。
私がシャトルバスに乗って出発を待っていると、杖をついた熟年の男性が乗ってきました。きっと発車する間際だと思ったのでしょうか、少し急いで来たらしく疲れている様子でした。そこまでは、どこにでもある光景ですが、シャトルバスの運転手の方は、その男性に声をかけてきました。そして「いつもバスに乗っていただいていますよね、バスの出発時間がわからないと大変ですよね、時刻表があるからとってきますよ」といって、バスをおり時刻表をとってきて男性に渡し、バスを出発させました。
ただ、これだけのことです。たぶんこのバスの運転手の方は、このことは覚えていないと思います。それぐらい当り前のようにこのサービスを行っていました。シャトルバスの運転手の方は、バスを運行させることが仕事であり、シャトルバスなので運行させていれば、お客さんが乗ってようと乗ってなかろうと成績には関係ないと思います。また、暑いさなかバスの外に出て時刻表を取りに行くのは面倒な作業ですし、そもそも時刻表を持って行くことを義務付けられていることはないでしょう。
私にとってシャトルバスは無料で目的地までつれていってもらうもの。送り届けてもらえばサービスはないものと考えていましたので、この小さなサービスは私の心に大きく残りました。逆に、これが高級ホテルの有料の送迎だと心にも残らないと思います。なぜなら、お金を払っているので当たり前だと思うから。
普通なものを当たり前にするサービスは心に残らない。サービスを受ける方から対価を頂くとそのハードルはさらに高くなります。その中でも、本当に心に残るサービスとは受ける人にサプライズを起こすことが重要だと改めて感じました。