「ニュー定期」って覚えてます?
「ニュー定期」って覚えてます?
今の若い人には「何それ?」でしょうし、50代以上の方なら「そういえば、そんなものがあったな」と思う人もいるかもしれません。
正式には「定期郵便貯金」。郵便局で扱っていた、当時としてはごく普通の定期貯金です。
ただ、このニュー定期には、かつてちょっとした「裏技」がありました。
最低預入額が1,000円だったこと、そして利息の端数処理に特徴があったことを利用したものです。
当時は、計算された利息が1銭以上1円未満になると、1円として扱われました。
まず、普通に1,000円を1か月預けるとします。すると、当時の金利では計算上の利息は1円に満たない程度。それでも端数処理によって、受け取る利息は1円になります。
つまり、1,000円を1か月預ければ1円。当然の結果です。正規の利用方法です。何も問題ありません。
ただ特徴的なのは、この定期郵便貯金は1,000円から預けられ、しかも複数口に分けて預けることができるというところです。
例えば3万円を1口で預けるのではなく、1,000円を30口に分けて預ける。
すると、それぞれの1,000円に対して1円の利息がつくので、30円になります。
10万円なら、1,000円×100口で100円。
つまり、同じ金額を預けるなら、1,000円単位に細かく分ければ分けるほど、端数処理による利息が増えてしまうのです。
さらに、利息に対する源泉分離課税については、元は端数なので1円未満のために掛からない、というものでした。
そして、さらなる「裏技」・・・というか抜け道、というか。
満期の1か月まで待たなくても、なんと中3日を空けた4日目に解約しても1円の利息がもらえる、という。
「1,000円を1か月預けて1円」と「1,000円を4日預けて1円」が成立してしまっていたのです。
もちろん、1,000円で1円ですから、普通に考えれば「そんなことをやって何になるの?」という話です。
しかし、これを何口も作って4日目で解約、預け直しを繰り返せば話は変わります。
このニュー定期が話題になった当時は、銀行の定期預金金利も1年もので0.3~0.4%程度。普通預金も今とは比べものにならないほど低金利でした。
そんな時代に、少額から始められて、しかも工夫(と言って良い部分と悪い部分がありますが)次第では通常の預金金利を大きく上回る。
確か、ネット黎明期に「こんな方法があるぞ」と話題になっていた記憶があります。
そのためか、当時の郵政省も放っておきませんでした。
1998年5月6日、利息の端数処理が変更され、それまで「1銭以上」で1円になっていたものが、「10銭以上」でなければ1円にならないようになりました。
つまり、わずかな利息を1円に切り上げることで「4日で1円」を生み出していた仕組みを、「1銭→10銭」という変更で塞いだわけです。
そして、その「ニュー定期」も2007年10月からは新規の申し込みを受け付けなくなりました。
考えてみれば、当時は今のNISAもiDeCoもありません。「投資で資産形成」という考え方も、今ほど一般の人に身近ではありませんでした。
それから四半世紀以上が過ぎ、今ではネット専業銀行も増え、預金金利も上がってきました。100万円以上の預け入れなら、年1.2%という定期預金も登場しています。
そう考えると、昔のニュー定期で語られた「年率1%超」という数字だけなら、今ではそれほど驚くものではありません。
でも、ニュー定期には「1,000円から始められる」という魅力がありました。
大きなお金を持っていなくても、1,000円を預けるところから始められる。
今の少額投資・資産形成が当たり前になった時代から振り返ると、ニュー定期は、そんな考え方をずっと素朴な形で先取りしていた商品だったのかもしれません。
最近、郵政管理・支援機構の「民営化前の郵便貯金は満期後20年2か月で権利消滅の扱いとなります。というテレビCMが流れる度に、「ああ、自分のニュー定期はとっくに解約したはず、いや、きっと解約した・・・はず」とそわそわしてしまうのです。