型から入ることが正しいか(その1)?
お仕事でいろいろな会社と人を見ていると、仕事を進めていくにあたり型から入る会社および人が沢山いることに気がつきます。型から入って上手く行くケース、上手くいかないケースそれぞれですが、細かくみていくとその結果にはある程度の法則がなりたつのではと感じます。
未知の物に対する対処や、初めてのことを実行する時には、模範的な物があれば型を模倣して円滑に進めることは重要ですし、それなりの効果も期待できます。ゼロから学習し、試行錯誤するほど時間と体力的余裕を持って対応できる企業や人も少ないと思います。
まずは、会社での失敗のパターンを考えてみたいと思います。
1)模範例に引っ張られすぎるケース
過去の経験や学習から模範例をそのまま適用しようとすることで失敗するケースが多くあります。これは2と3で述べる成功体験と組織力という弊害との関連もあると思いますが、基本的には以前の経験や学んだ事例を踏襲することで、本来の目的を見失うことで失敗へ突き進みます。特にこの場合にはプロセス偏重、手続き偏重になり、結果が正しい、対応として正しいということよりも「こういう決まりだから」という理屈がまかりとおるようになります。こういう場合にはリーダシップを持って経営者が、「規則がおかしい」ということと対応規則も曲げてでも現実的な結果や対応の正しさを追求することが必要だと思います。
2)成功体験に引きづられるケース
過去に経験した成功、というよりも経験してそこそこうまくいった型にこだわるあまり、現実との乖離が理解できない場合です。多くの場合には、なぜ上手くできたかということを分析して正確に把握しないまま、「前はこれでうまくいったから」という単純な理由で型を適用してしまいます。多くの場合にある問題点としては、成功体験を語る人もその背景の事象を全部把握しているわけでなく、悪い場合にはその場に居合わせただけで本当の経験をしていない場合が多いことが挙げられます(もっというとそのことを本人が気づいていない)。成功体験がある場合には、それを否定する役回りを誰かが持つ必要があります。絶対に必要というものはありませんので、事業仕訳のように型の中で適用すべき部分と、変更すべき部分を把握できる客観性を持って、これもトップダウンでの対応が必要でしょう。
3)組織力が伴わないケース
型を適用してそこそこできそうで大崩れするケースがこれにあたります。大企業を始めとするある程度共通の組織文化やプロセスへの理解が醸成されている会社や、トップダウンの権力集中型企業では、組織構成員またはトップの力により型を当てはめて実行できる基盤があります。しかし、組織力が伴わない場合には、型に対して2つの対応が発生します。
まず管理側からは「プロセスを厳密に守るべき」という結果よりもプロセスにはしり、その結果不適切な対応が発生したり、矛盾が発生します。さらには管理偏重で、経営としてのバランスを失います。
そして構成員側からは、面倒な手続きだから帳尻だけ合わせるという対応になり、その結果ミスやプロセス自体の形骸化が起こります。
上記2点を合わせると、いわゆる大企業病という病気にかかることがわかります。
では、どのように対応すべきでしょうか?
ます、会社に当てはめる型には、以前の経験をそのまま持ち込んでも意味が無いことを経営者が理解すべきではないでしょうか?もちろん参考にすることは必要ですが、組織の理解、文化の把握も含め、適用すべき範囲を限定すべきだと思います。ある会社でやったことの模倣は最悪で、組織への適合性を持って判断すべきだと思います。コンサルタントの厳しいところでもありますが、理屈は正しいけれど、事業会社ではそんな理屈だけでは動かないという事実を整理することは難しいことは事実です。
そして、プロセスそのものの厳守よりも、的確な結果や対応ができているかを確認すべきでしょう。一生懸命チェックプロセスを作ったとしても、人的な部分で結局見落としたり形骸化することは日常茶飯事です。どんなに細かいルールを作成したとしても、適切な対応ができないものはただの無駄です。このことを考えるためには、プロセスを作った人でない人に権限をあたえ、プロセス自体の変更を加えさせるべきです。
最後に、管理部門の仕事は細かくて面倒ですが、この部分こそ経営者が気にして、理解して、指示を出す部分だと思います。経理、契約、人事など、専門家にまかせっきり、そして社員の中の経験者に丸投げで、聖域のようになるケースが多いですが、利益を生まない部門であるからこそ、経営者自ら理解してチェックするべきなのです。
多くの会社で観察すると、型を活用するよりも、型に振り回されているのが現状だと思います。その陰には、画一的に型を適用する外部専門家や、社内にすくう成功体験や現状に合わない強引な型の適用推進者があるのではと、個人的には感じています。