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IT企業の限界④ 「極端なリスク回避はフェアなパートナーシップを阻害する」

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システム開発の契約にリスクはつきものです。各社ともリスク回避のために様々な雛形と文書のやりとり、交渉を行い契約を締結します。プロジェクト開始前に契約がきれいに設定されるケースの方が希で、実態としてはプロジェクト開始後にもつれ込み遡及するケースが多いようです。

いずれにせよ、ビジネスの世界なので契約がすべてと言えば全てですが、最近はあまりに契約交渉ができない会社、または担当者が多く存在します。会社は積極的に条件を緩くはしませんので、殆どが担当者の問題なのでしょうが、その一方で杓子定規に対応する法務部門のビジネスを経験したことの無いスタッフにも問題があります。

瑕疵担保と損害賠償が大きい争点になることが多いですが、受注をする際には契約金額等の上限規定を要求する場合が多くなっています。特に一次受けの場合には何らかのキャップがかけられないと、ビジネスが複雑化していますので、問題が発生した場合の間接損害まで含めての規模が解らずリスクサイズの確定ができないため受注自体が困難になります。従って、契約金額の何倍等の上限規定を設け、発注側と受注側でのリスク分担を行うように協議すべきです。

また同時に受注者が再委託を行う場合にも同様の条件とすべきです。受注リスクを減らしたうえで発注(再委託)リスクも減らすような行いは避けるべきです。特に下請けには規模が小さい会社も多いので力関係で押し切られますが、本来であれば常識を越えた下請けへの過度のリスク負担となるため行うべきではありません(下請け法もこの部分を明文化して欲しいものです)。

また、いいとこ取りで著作権を保留しようとする受注側もいますが、未来を見据えたお客様のビジネスオペレーションを考えると、自らが従前に持っているもの以外は最悪でも折半、可能な限り著作権は発注側のものとすべきです。以前「自分たちが受注して作成したものであるから、著作権は自分たちのものである」という主張をした営業の人がいましたが、ここまでくると会社としての品格を疑ってしまいます。既存のものや発明に関しての権利には慎重になるべきでしょうが、それ以外のものはあくまでも請負での構築なので引き渡しとともに無形財産権も引き渡すべきです。

最も話題になる部分だけをピックアップして書きましたが、基本はリスクは等分に負担し、請負での成果物はきちんと権利を含めて発注者に渡す、という基本的なスタンスの上で契約を行い作業をすることで始めて両社がパートナーシップの関係で目標に向けて力を合わせることができると考えます

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