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自社製品の偏愛は悪?

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IT企業でマーケティングの仕事に携わっていた頃、社内でかなり喧嘩に近い言い合いを重ねたことがあります。喧嘩の原因は、私よりずっと以前から社内でマーケティング部門にいた人が展開した「自社製品がとても良い製品」、「他社製品よりも優れている」、「競合他社にはxxxはできない」という理論です。

個人的には、製品も会社も好きでしたし(今もですが)、製品スペック的には非常に秀でたものでしたので、総論は正しいと思います。しかし、そこで以下のことを疑問に思い、反論したことから喧嘩となりました。

  • お客さまが必要としている、すべての判断項目に関して、競合他社と比較して優位ではない(→ハイライトされた部分では優位であるが、お客さまが判断する場合には優位でない部分がある)
  • 今優れているスペックの優位をいつまで維持できるかわからないので、そのスペックで勝負することは、一時的な勝ちでしかなく、将来的に自分たちの首を絞めることになりかねない(→スペックが高い製品が優位という理論でセールスをすると、スペックの優位性を失ったときに前言撤回をしないといけなくなる)
  • 他社が同じことをできないということは無く、体力・技術力があれば基本的にはいつか追いつかれる(→現在の優位性はいつまでも続くわけではない)

非常に、単純な話なのですが、製品をマーケティング、販売するためには、製品を深く知ることも必要ですし、売るための情熱を維持するために製品を愛することも必要です。しかし、その一方で「偏愛は、お客さまに取って価値観の押付け」になることも事実です。

製品を深く知るためには、競合製品や競合他社に関して、深い洞察を行い、客観的な比較のもとでの自社製品の評価が必要だと思います。また、自社製品が劣る部分は劣っていることを明確に顧客に伝えることも必要だと思います。

特に製品が優位に立ているときこそ、単純に良い部分をプロモーションするだけでなく、営業活動として自社の劣る部分へのお客さまの意見の吸い上げや、長期間のビジネスでの優位性を維持するために、製品の評価ポイントをづらす努力をすべきです。例としては、パフォーマンスがベンチマークで最高速であっても、「ベンチマークでは一位ですが、製品を選ぶべきポイントはそこではありません」という流れの作り方です。弱者が言えば「負け犬の遠吠えですが」、強者が言えば「流れを作る作業」になるからです。

「製品への愛情は重要」でも「偏愛は悪」だと思います。もっと。冷静に物事と環境を見極めてマーケティング・セールスを行うことが重要でしょう。

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