書評「アディダスVSプーマ もうひとつの代理戦争」
先週は、数冊の本を並読していましたが、その中であっさりと全編を読み通せた本に関してコメントをしていみたいと思います。
本の題名は「アディダスvsプーマ」で、どんな本かよくわからず、グローバルのスポーツ用品のマーケティングのやり方や両者のバリュープロポジショニングのお話かな?ぐらいの軽い感じで読み始めました。
実際には、この本はスポーツ・ビジネス(解りやすくはオリンピックやワールドカップなどを舞台にした利権ビジネス)の起源と、現在のような巨大なマネージメントの仕組みで動くスポーツ産業をめぐっての様々な争いに関して、アディダスとプーマという「袂を分けた親族企業2社の争い」という視点を基点として、ドキュメンタリーでつづっています。
エンターテイメント系のビジネスは、関係している人は大変多いのですが、全体構造を理解している人はとても少ない業界です。私も非常に関係していたり、人を介して様々なことに参加したり、お話を聞いたりしていますが、話ていただいている方々でも良く解らないことが多いのも事実です。その意味でグローバルの視点から、政治的な駆け引きを含めて紐解いた本書は、ビジネスを行っている人にとっては様々な意味で役立つと思います。
特にヨーロッパ企業からの視点、かつ同族企業、政治的な駆け引きで成長した企業の視点という、今まであまり取り上げられないタイプの企業を題材にしたドキュメンタリーですので、ヨーロッパ企業(特に同族で歴史のある企業)の考え方に関しては、理解を深めさせてくれる本だと思います。
日本企業もいくつか取りあげられていますが、ちょっと異邦人的な扱いをされていたり、電通に関しては利権会社のように扱われていて、ちょっと眉唾な部分もありますが…
残念なのは、途中からアディダス一辺倒になってしまう(アディダスの視点からのお話になってしまっている)ことです。多分ビジネスでお話として書き上げるものが少なかったり、取材で協力等が少なかったことが原因だと思います。前半は両社の視点から対比させお話が進んでいるので、ちょっと消化不良の感を持ちます。
雑学獲得のために、一度読まれることをお勧めします。