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企業ITもクラウド的な世界に向かい始めた今日この頃を徒然に‥

クラウド時代になると変わること - 「クラウド」から

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ITジャーナリストであり、オルタナ・ブロガーでもある小池さんの「クラウド」を読みました。すでにいろいろなオルタナ・ブロガーの方がコメントや書き込みされていますが、正直、実に面白い本でした。特にIT業界を歴史的視点でとらえていること、そしてプラットフォーム戦略とエコシステムの視点でクラウドをとらえて、GoogleとIntelの次世代での覇権を狙う姿にリアリティーを与えていると思いました。こういった視点を持つことがIT企業が戦略を立てるために重要なのでしょうね。

この本の中で印象に残ったところから一つ。クラウドについて講演することが増えた小池さんは、クラウドの「実感がわかない」という意見に対して、クラウド時代になると変わることとして以下の4つをあげています。

①クラウド時代になると社内からサーバーがなくなる
②従業員は必要なアプリケーションを自分で書くようになる
③ソフトウェアとコンテンツの区別がなくなる
④サービスにおいてパソコン・携帯電話・テレビの違いがなくなる

これを私なりに解釈してみました。①はクラウドで直接おこること、②と④はクラウドが今後提供していけるだろう価値、またはユーザーが求めているニーズでクラウドで実現できること、③は②がおきるための一つの技術的現象と言えるのではと思っています。

①の"社内サーバーがなくなる"はまさに一番表面に現れる端的な変化ですね。今、業界的に議論されているのはまさにこの点が一番多いわけですが、考えてみればエンドユーザーにとっての端的なメリットではなく、IT部門または企業全体の視点、またベンダー的観点ではあります。

②の"ユーザーがアプリを書くようになる"はいろいろ議論があるかもしれません。90年代のエンドユーザー・コンピューティングはEXCELやLotus Notesなどを筆頭に、ユーザーが自ら必要なビジネスプロセスやアナリシスを身近なITの道具で効率化や作り出すことで、企業の俊敏性や変化への対応能力をつけていったのだと思います。ところがその後の内部統制や全体最適の流れは、それらを抑える方向で進んでいったように思えます。

ただ、マーケットの変化は以前にも増して、より速く、そして多様化しているわけですから、エンドユーザー・コンピューティングのニーズはいっそうの高まりを見せているのではと私は思っています。それに答えられるのは、全体がある程度、管理やコントロールされた中での自由度をもつプラットフォーム。最近のSaaSやPaaSは、全体は同じ管理の下での単一のプラットフォームながら、高度なカストマイゼーションを重視し、またエンドユーザーが使える開発環境を広く提供する方向に向かっていると思います。そうなると、まさに"ユーザーがアプリを書くようになる"、そしてそういった簡易的な開発環境は、コンテンツを変えているようでソフトウェアを作っている、という③の技術の現象を引き起こしていくのではないかと思います。

③の"多様なクライアントへのサービスの提供"は、一部のSaaSがすでに始めているように、クラウドが出しやすい付加価値とも言える部分でしょう。変化の激しい新しいモバイルなどのクライアント。今後も多様化はしばらく進むように思えますが、この変化に、クラウドでなく企業のIT部門がベンダーのソフトを導入するにしても、自前のシステムで対応するのはかなりつらいことになりそうです。

クラウドのもたらす変化として、これからも度々考えていきたい4つのテーマだと思いました。

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