コラボレーションはグループウェアのソフトからクラウドへ
前回、クラウドがナレッジマネージメントを進化させる道具立てになるのでは、と書きました。一か月もたってしまいましたが、あいかわらずTwitterや社内での新しいコラボレーションツールを使うと新しい感覚が生まれてきます。
そもそも、広く情報共有を含むコラボレーションのITは、グループウェアというソフトウェアが90年代に広く企業で使われるようになり一般的になりました。電子メール、文書DB、掲示板などがその基本的要素だと思います。
それから20年近くたった今でも、部門や全社でのコラボレーションは、Web化したこと以外は、あまり大きな変化は見せていないのが正直なところでしょう。グループウェアという言葉はマーケットではかなり影をひそめて、Googleで引いても一番にひっかかるのがWikipediaだったりします。
かといってコラボレーションの新しいニーズがないかと言えばそうでもなく、企業の内外問わずコラボレーションの機会はどんどん増え、その仕方を模索する動きが多くの会社にあるように思えます。いったいどんなコラボレーションの観点が今後変化していくのか、3つくらいの視点で考えてみました。
まず一番目としては、コラボレーションの情報源はどのように変わりつつあるでしょう。基本、人と人ではありますが、多くのお客さまとの対話、社内でも部門を超えたり、権限を持たなくともユニークで価値ある声を出すようなボトムアップの声など、変革の方針の下で革新的なアイデアを求めたりすることが増えているでしょう。
また、たくさんのアプリケーションがあっても、そのデータなどが生かせない状況も増えているようです。お客様の苦情が別部門に入ったり、Twitterで呟かれていたり、契約更新の時期が近くなってきたり。様々な情報源に対してすべて人がフォローするのはかなり限界があるように思えます。あらゆる情報源に対してつながり、かつエージェントなどで自動的に、ニーズに対していちいち開発などしないでも安いコストでコラボレーションの情報が入ることがより望まれているように思えます。
二番目にあげたいのが、コラボレーションの流れです。仕事をすすめるうえでコラボレーションは仕事そのものと言ってもいいものだと思います。ところが独立したグループウェアのようなソフトウェアでは、誰かと対話したりするためにわざわざ今まで使っていたアプリケーションを切り替えて、その情報自身も手で添付、コピー、リンクなどと手間をかけて、仕事の流れを変えてコラボレーションという仕事をしているような感があります。
BlogとTwitterの関係のように、コラボレーションを促進し、流れを保つためのいろいろ有機的に連携できるような仕掛けがあるのはそんな試みだと思います。本来、たとえばCRMなどの業務ではお客様への提案書をその文書DBでなく業務アプリの流れの中で見れて、さらに関係者とそこで対話できたりするのが生産性などの観点でも有効に違いありません。
三番目にあげたいのが、コラボレーションの範囲です。20年近く前にくらべて、あきらかに企業内のコラボレーションも広くなり、またパートナーやお客様とも直接ITでやりとりなり、コラボレーションをとっていく機会が増えているように思えます。アウトソース、商品を軸にした共同の取り組みなど経済活動のあり方がその背景にあるでしょう。その場合、大きな会社内、市場との対話となると、事前に決まった、よく知った同志の対話から、見知らぬ人のTwitterのコメントのような自分は知らないが、相手が知っているような対話、さらに広く見知らぬ人同志での対話と拡大しているようです。
多様な情報源、仕事の流れの維持、広く非対称な関係。こういったもののコラボレーションの模索が今、まさに取り組まれているように思えます。これらはグループウェアという企業内範囲を考えていたため積極的に取り組みにくかった、またクライアント/サーバーという特性からの、試行錯誤での改善、機能アップができない制約であったかと思います。
人のコラボレーションはやはり複雑で一定ではありません。電子メールだけで済むような世界ではないことが、皆さんの日常での感覚でしょうし、また良い道具立てがないことで電子メールがあふれてしまっているようにも思えます。業務とうまく連携し、少しずつ進化し続ける、またニーズによってそのやり方を変えられるような柔軟なコラボレーションの基盤。まさにクラウドでのコラボレーションによって、これらが試行錯誤の中で、よりよい環境を作っていくように思えます。