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最近のトラブルプロジェクトの傾向と基本的処方箋について

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弊社を創業して今月末で満7年、コンサルタント・キャリアも今月で30年目になりました。

望んだわけではないけれど、「火消屋」としてのブランドも定着し(泣)、今年度も既に複数引合が、、、割合はどうあれ、プロジェクト(以降PJ)の再建に今年も関与させていただくことになりそうです。。

  

守秘義務もありますので、具体的には申し上げられませんが、昔にエントリしたときの状況と現在のGAPを鑑み、あらためて「最新版」として、トラブルプロジェクトの現在における傾向と、それらに対する基本的処方箋について語りたいと思います。

(よって具体例的な部分は、あえて思い切りデフォルメして書きます。。)

  

 

では、最近のトラブルプロジェクトの典型的な状況を考察します。

 

>必要要員のあてが不足且つ見込みなし状態

・後述にも関連しますが、例えば100名体制の提案だったら、10名くらいはマネジメント&現場リーダーのアサインが必要ですが、具体的にその想定ができていない/実PJでアサインできない状況が多くなっています。

20年前くらいには、「実体制は獲れてから考えよう」文化が蔓延していた、悪い意味で昔の名残が今の現場を汚している可能性も感じています。

・最近は発注するクライアント側もタイト・スケジュールに追われて、RFPないしそれに相当する提案依頼イベントの上で、いわゆるShort Noticeでの提案書をベンダー各社に問うていますので、悩ましい限りです。

>協力会社頼みの要員計画

・最近はどこの大手ベンダーも、引合に対応できるプロパー数が不足し、結果、「プロパー」÷「協力会社含めたPJ総体制」の割合がどんどん低下しています。

・昔(>15年前)は協力会社:プロパー比率は3:7くらいが上限と言われていましたが、最近は7:3もザラです。それが悪いわけではないけれど、帰属会社が違うこと、それがエンド・クライアントに対するコミットメントの違いにつながることをわかってプロジェクトマネジメントする体制や経験・スキルが不足しているように思います。

・加えて、協力会社の側からすれば、大げさに言えば予算や期限その他の制約から理不尽にしか思えない条件で取引をせざるをえない状況も少ないのではないでしょうか。

・協力会社には依頼元ベンダーとは異なる経営事情があります。優秀な人だけ集めてアサインすることは難しいはずです。逆に依頼元もそのような事情あって協力会社に再委託依頼をするわけですが、人間商売という原則に基づいた十分なコミュニケーションを(ついつい?)怠ってしまった結果、全体体制が不十分になるリスクがあるのです。

>経営の「センスない」プレッシャーに負けたプロ計

・これは約20年前から警鐘ならしてきたことですが、そもそもエンド・クライアントやプライム・ベンダーのいずれかまたは両方の経営サイドに、当該プロジェクトの必要性や意義、そしてそこに至った背景をよくよく理解せずに、目先の経営目標数値にとらわれ過ぎて、現場や当該PJのマネジメントサイドからみて「理不尽」にしか思えない難題をトップダウンしてPJが計画され、推移するケースもたくさんみてきました。

・プロジェクト計画書、略して「プロ計」は、顧客=発注元と、ベンダー=発注先(正確には再委託先にとってはさらにプライム・ベンダーからの受注元となる)にとって、共通のルールブックになるものです。しかし、いずれからの経営からのインテンション(≒プレッシャー)がかかると、その内容はいびつになる=成功確率を下げるものに成り下がるリスクがあります。

・経験談をあくまで申し上げていますが、いつでもどこでも経営陣が優秀であるとは限りません。その中で現場は当該PJに対して最善を尽くすことになります。現場に必要なことは、自身およびPJに関係する各社(含エンド・クライアント・サイド)の経営陣のセンスを情報収集、理解しておくことなのです。

>信頼のないマネジメント・アサイン

・前述に関連しますが、経営から承認され指示されたマネジメントメンバーのアサインメントにも同じことが言えます。悪意での話ではなくて、現場やPJ背景を十分理解せずに、別のインテンションから不適切なアサインメントが起きえるのです。

・経験談ばかりで恐縮ですが、エンド・クライアントにしてもプライム・ベンダーにしても、経営とPJアサインされるマネジメントメンバーの間、およびそれらと現場リーダーシップとの間に、良い関係が必ずしもあるわけではありません。むしろ別エントリでいくつかこれまで述べてきましたとおり、10名いれば組織というのは派閥を産むもので、ましてや大企業や大規模組織においては必ず複数の派閥が産まれます。現場の方々はその図式を知っておくべきで、そしてそれでもなお、ご自身がアサインされたPJにおいては、自身の安全を守りつつ、最善を尽くすしかないのです。

・あまり言いたくないことではありますが、確率論でいうと、このトピックはむしろ、よくある=そもそもそうなる前提で身構えて現場では処世術を各自で考える、方が正しいのかも知れません。

>プロジェクトマネジメント理論に沿っていないスケジュールや予算感

・大規模PJで、例えば「短納期」「低予算」「少人数」だったら、基本的にどんな人でもそれは「トラブルプロジェクトまっしぐら」だと気づくに違いありません。ただ問題は、そこまでPJの船出が極端ではなく、そして必然的に、次第にPJがその方向に傾いていくPJが結構多いことです。ここまでで話したようなインテンションが働き、悪い意味で「狡猾に」PJの船出が企画され、船出したあとに(これまた必然的に)PJがトラブルに見舞われていくのです。

QCD(品質/予算/納期)とよく言いますが、これらは三角関係のトライアングルです。どれか1つを優先すればそれ以外の2つが歪み、2つのバランスを優先してももう1つが歪みます。プロジェクトマネジメントをちゃんとやろうとする人は、この原理原則をわかって現場をちゃんと正そうと常に意識していますが、誰しも経験やスキルが不足していたら(という不遇なアサインメントになっていたら)、「どこまで善処できるか」「どこで助け舟をコールするか」を考えるのが大事なことだと思います。

・小職が以前帰属していたファームの創業者が言ってたことですが、世界中のプロジェクト統計で、「実に45%はこのトライアングル・バランスが明らかに崩れている計画だとわかっていながら船出させてしまっっている」という指摘があるくらいです。つまり皆さんは、ご自身が配置されているPJがバランスしているなどと思わないで身構えて処世するのが無難なのです。

>そもそもの「ソリューション」間違い

・特にITプロジェクトの場合、想定ソリューションがPJ立上から或る前提になっていたりすることも少なくないです。ですが、必ずしもそれが正しいとは限りません。

・ソリューション=解決策ですから、その策がそもそも方向性が違っていたら、PJがまともな方向に向かうわけがありません。これを否定できる人がいたらいいのですが、PJの雰囲気的に、それが言えない場合、PJは必ずといっていいほど、悲劇的な方向へ船出します。。

・例えば特にここ5年間くらい、「メインフレームからオープン系へのマイグレーション前提」でのPJをたくさんみてきました。うまくいくPJとそうでないPJの根本は明確です。立上時からソリューション前提が間違っているのです。おおざっぱにいえば、だめな場合の半分は立ち上げ時にソリューションを固定していることが原因で、残り半分は軌道修正の手順や判定基準を悪い意味で厳格にオペレーションするPJにしているから、です。

・はじめての著書にも書いたことがあるのですが、大げさな例えで言えば、「今システム化を決断すべきでないPJ案件はそこで立上すべきでない」「ERPで十分目標達成できるPJ要件を思い入れや見栄でスクラッチ開発にすべきではない」みたいなことです。

以上をふまえて、基本的な処方箋は次の通りです。

1. 正しいベンダー選定、主要メンバー選定にとにかく全力を注ぐ

2. PJ体制をきちんと作ること、また主要メンバー間の相性をチェックしておく

3. 大抵のPJは体制不備、人財不足、期限タイト等何かあるもの。Contingency Planを初めから考えておく

4. PJ計画書を丁寧に策定し、関係者にきちんと報知・周知しておく、また適宜見直しも重要

5. 大体にして重要メンバーほど過労等で大事なときに倒れる、そのためのバックアッププラン準備と、PJ全体での健康管理をきちんとやること

6. 「方針」と「方向性」を常に見据えてPJを進めること、戦略とは常に変更を伴う

7. ゴールの形は随時変わっていくことと関係者で定期的に合意形成して、良い意味で「Best Effort」に努めること

最後の最後によりどころになるのは「契約書」なのですが、だからといって、もっと大事なことがあります。

「せっかく立ち上げたプロジェクトを、形が例えいくらか劣後してでも、とにかく妥結できるレベルで完了させる」

ことなのです。

プロジェクト型ビジネス(統計成功率55%)でなくとも、世のビジネスは多くの失敗から学び、そこから得た教訓をあらたにリスタートし、一生懸命もがいて前に進んでいくのです。プロジェクトには確かに「始まり」と「終わり」がありますが、だからといって当初の目論見通りに推移、完了することを大きく期待してはいけないのです。

結構な確率で「上手く行かない」からこそ、それがビジネスの醍醐味なのです。

失敗でめげたらプロジェクト型ビジネスは中止やリプランしか待っているものがありません。

予算100億のPJ30億使ってリプランしたところで、せいぜい150億かけた「成功かどうかわからない完了」が待っているだけです。そもそも当初の初期計画を承認して立ち上げた、ひいてはそれを引き継いでPJを推進してきた全ての人、プラス底に悪影響を与えた外部要因に、非があると思いましょう。

小さな相対論で恐縮ですが、小職が経営するコンサルティングファームの中でも、100100勝なんてあるわけがなく、大小織り交ぜてたくさんの失敗体験を経て、今月末で満7年になります。どうにか生き延びてきました。帝国データバンクによれば、世に起業した企業の50%以上が5年持たずに、10年では95%近くまで立ちいかずに廃業するとまで聞いたことがあります。ビジネスとはかくも難しいものなのです。

だから、

「ポジティブシンキング」は良いことです。ただ、順風満帆なPJの確率が決して高くないことを念頭に、常に悪いインシデントをできるだけ「想定内に」収める備えをして臨みましょう。

  

経験重視で書いてしまいましたが、関連する方々の参考に少しでもなれば誠に幸いです。。

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