コンサルティング営業のやり方
コンサルティングファームの営業は、基本Outbound(自分から見込み客に営業をかける)です。
大手だとInbound(見込み客から提案依頼がやってくる)が成立しますが、弊社のような中小企業ではそれをあてにすると経営ターゲットなんて達成できるわけがありません。
・新しいターゲット顧客、
・以前の顧客の再開拓、
・既存顧客の拡販、
に、日々奔走するのがコンサルティングサービス営業の現実です。
20年以上昔であれば、コンサルティングファームは会計士・税理士同様に「先生」と呼ばれ(注)、同じ経営母体の会計士・税理士先生が指示したとおりに、(主として会計システム開発の)コンサルティングをすればいい時代でしたが、今はそんな差別化限定化された環境じゃないので、いかに自社や自身をOutboundで売り込むかがとても重要だと思っています。狭い(コンサルティング)業界ゆえに競合も多数存在するのです。
というわけで、確実にターゲットクライアントをGETしたいわけですが、100戦100勝というわけにはいきません。勝率や獲得の優先順位を気にしてビジネスしていく必要があります。
そこで今日は経験ベースでのご参考までに、見込み客のリスト化から実案件獲得までの「営業パイプライン管理」の目安をご紹介します。
まず私がこれまでの就業経験で教わった、営業のステージ定義を下記に共有します。
1. Lead:とりあえず営業に行く窓口がみつかった状態の見込み客。期待した案件があるかは不明。
2. Prospect:期待できる案件の存在を確認。ただし提案させてもらえるかは不確定。
3. Qualified:期待案件への提案権利を獲得。ただし勝てるかどうかは不明。
4. Proposed:正式に提案書を提示。確実に勝てるか不明だが勝率は少なくともゼロでない。
5. Likely:既存案件が継続・拡販する見込みがほぼ100%の状態(ただし契約は未締結)。
6. Committed:契約意思確認済、あとは契約手続きに並行して現場Debutを進めるのみ。
7. Contracted:契約締結完了、案件として正式確定=きちんと仕事したら報酬は約束済。
新規引合であれば、1→2→3→4→6→7
既存の拡販引合であれば、3→4→6→7
というステージ遷移が基本になります。
まず、新規引合獲得をベースにすると、経験的に、20 Lead → 1 Contacted くらいのパイプラインで上等だと思っています。厳しい確率論と思う方もいるかも知れませんが、現実はそんなもんです。20件回って1つ案件獲れるって感じでも優秀です。そもそも20件回る先があること自体、幸せな状態です。
Lead→Proposedの経験パイプラインは5:1~10:1、
Proposed→Committedの経験パイプラインは4:1~2:1、です。
よって、20 Lead → 1 Contactedくらいの確率となります。
経験的には、結構Leadを溜めないと、案件は獲れないのです。いつでも回る営業先が潤沢にあることが成功の第一の鍵です。
よって営業がすべき努力は、「いかにたくさんのLeadを開くか」「いかにProposed→Committedの確率を高めるか」の2つのベクトルとなります。
前者は、仕事をくれそうなアカウント(クライアント)をいかに効率的に探すかという、いわゆる鼻が利くかどうかが、そして後者は、いかに魅力的な提案をするかが第二の鍵です。
時に「当て馬」に使われるときもありますが腐る必要はありません。当社程度の規模では大手の機動力に勝ち目はありません。クライアント候補は、出来レースにみえないようにあえてコンペ形式にし(ちなみに「Bid」と呼びます)、「ちゃんと望ましい候補先から複数提案を募って、公平に且つ最も良いコンサル会社を採用しました」という言い訳を作ります。クライアントが公共機関とかだとBidは必須条件のため仕方がありませんが、当社のような中小企業が効率よく勝つには、いかにBidに持ち込ませないか、すなわちコンペになる前に勝負して先行受注に持っていくかが大事です。「おたくの会社、いいねえ。」と言わせ信頼を勝ち取り、Bidが立つ前に魅力的な提案をして、「どうせならおたくと取引したいね、すぐ契約しよう」と言わせるかが重要なんです。そうなれば「当て馬」でない限りきっと勝てます。
大手コンサルティングファームは大規模な要員をかかえていますので、魅力的な提案=たっぷり内容の詰まった大作の提案書と大勢でのプレゼンテーションで勝負をすることができます。対して中小企業はそんな余裕がありません。最低限の量に必要な魅力的メッセージを効率的に提案書に詰め込み、全力で魅力的なプレゼンテーションをして勝負する必要があります。
本当に「当て馬」であれば、結論は負けるでしょう。でも魅力的な提案をしておけば、そのクライアント候補は「おたくの会社、ほんとはすっごい魅力的な提案だったよ。ありがとうね、次の機会には是非取引しようね」って思わせておくことが可能です。出来レースの勝者がのちに失敗してRETRYの指名がもらえるかも知れません。
昔のエントリにも書きましたが、私は当て馬こそ燃えて提案すべきと思っていて、魅力的な提案内容は必ずといっていいほど出来レースの勝者にリークされ、流用されます。そのときに「ここまで経済的にできないだろ?」「ここまでスピーディにできないだろ?」「ここまで高品質な成果にできないだろ?」って見せつけてやりましょう。チコちゃんは、いや違った(笑)、クライアントは知っています。本当に魅力的な提案をした会社がどこだったかを。。
そして、その積み重ねが、必ずそのクライアント候補から「候補」をいう文字を消すときがくるのです。
負けることから学ぶことは結構多いです。合理的に仕事はすべきですが、躊躇せずどんどん営業してたくさんの提案機会を獲得するのです。その経験の積み重ねこそが、貴方の営業活動をどんどん合理的に改良してくれます。
コンサルティングサービスに限らず、すべての営業に共通なことは「ブレない気持ち」で勝負すること、そして「インチキしない」こと、です。頑張りましょう!
(注)私が新入社員のとき、最初のクライアント先現場の一番偉い人に挨拶して名刺交換したとき、「金払うのは俺たち、死ぬのはお前!」と指差されガックリしましたが、そのあと当時の直属上司から「俺たちの仕事は入る時は先生、去るときは詐欺師呼ばわりだから気にするな」と意味不明な慰めをもらったことを今でも鮮明に覚えています(苦笑)。