プロジェクトマネジメントを語る前にチームマネジメントができる人になってほしい
10年くらい前に、SEからコンサルタントになりたい、転身を目指したい、フリーランスの方々に研修を開いたことがあり、そこでいくつかのTOPICに分けてポイントを解説したことがありますが、月日もすっかり経ち、その後の経験を加えて、あらためていくつかそのときのTOPICを再度このブログで解説しようと思います。
今回は「チームマネジメント」について書きます。
プロジェクトマネジメントの仕事は相変わらず少なくありませんが、プロジェクトのマネジメントの前に、プロジェクトがそこそこの組織であれば、複数のチームが編成されていますので、「チームマネジメント」がさらに重要だと思っています。
チームマネジメント(以降TMと略記)とは、「個人の能力をできるだけ高く引き出しつつ、チームとして最大のパフォーマンスを達成するために、個々のメンバーを管理・運営していくこと」、と私は定義しています。
そこには3つの掟が存在します。
1. チームのパフォーマンスを最大化することが最優先であり、そのために個人の能力の引き出し方は的確にコントロールする必要がある(ゴール視点)。リーダーの自己は常にセカンダリである。
チームリーダー(以降、TLと略記)には次の3つの姿勢が求められます。
- 「真っ先に感謝」 仕事をしてくれたことに感謝し、そのあと叱るべきなら叱る。褒めるなら褒める。
- 「日程等都合も相手優先」 できるだけメンバーの都合を考慮してあげることが相手を献身的にさせる近道
- 「手柄はすべてメンバーのもの」 自分の業績は隠れてアピールに留め、少なくとも表面上は全部部下の手柄に
クライアントはこの姿勢に意外にも注目しています。
クライアントは、実は全面的に貴方の能力(経験・技術)に期待していつつも、表面上は少なくともこの姿勢を多いに評価するように世の中はできているのです。あなたがTLであれば貴方のこのようなマネジメント姿勢が、貴方のTLとしての評価を周囲にアピールしてもらいやすいのです。昔は親方や大先輩と言われる「エース」が、実務や技能のほぼ全てを掌握し、メンバーにほぼ全ての指示や指揮を行い、「技は俺の背中を見て盗め、学べ!」とか言っててOKな社会でしたが、今はそれについていける器量のメンバーなんてほとんどいません。まず個を尊重しなければ、動いてもくれません。TLが自己をぐっと抑えてマネジメントしていく姿勢が今は重要だと思ってます。
2. とはいえチームのゴールは個々のゴール(目的・達成目標)に優先である。そしてチームの存在期限と解散後のリソース活用の観点からも、チームパフォーマンスは目標レベルにコントロールしていくことが重要(タスク・フェーズ視点)。
だから、チームのゴールをきちんとメンバーに周知し、理解させ、(それが基本最優先だと)納得させておく必要があります。
もちろん個々の(キャリア)ゴールも知っておく必要がTLにはあります。だからこそ個別のプロファイリングが肝要です。またプロファイリングはTLの仕事ですが、個々のゴールがお互いで丁寧に理解されている必要はないので、ある程度の粒度で「相性管理」のために公開・シェアすることはベターです。
個々のゴールを上手に相互共有させてあげることはTLの仕事なのです。
個々のゴールよりチームのゴールを優先したメンバーは絶賛される必要があります。ただし自己犠牲を強要してはいけません。自己犠牲は基本TLが姿勢として見せるのみ。メンバーがそれを真似るかどうかは自由意志と設定しておくくらいが今の時代、ちょうどよいです。
3. 従って、期待パフォーマンスを継続的に満たせないメンバーはチームを去り、ゴールを達成できそうにないチームは解体・解散させられることがTMの掟。
というわけで、チームメンバーを集団としてみず、個々を「個別にプロファイリング」し、TLは個別に人材活用の戦略をたて、戦術を練るのです。
- まず長所をみつけてあげよう
- 短所をいじりすぎるのは良くない。長所を伸ばす一方で、短所を改善させるチャレンジも両建てした方が士気は高いことが多い
- 原則論、他人のプロファイルは当人の了解なしに公開しない(個人情報に限りなく等しい)
個人として高い能力があっても、それをチームとしてさらに活かす道を知らなければ、それを知っている人に必ず追いつかれ、追い越されるもの。かといって、コンサルタントの世界であれば特に、個人の高い能力が求められていることも事実。この法則を知って、メンバーのパフォーマンスをチーム全体として最大化させ、そのために各メンバーの個々のゴールをできるだけ満たしてあげてパフォーマンス創出意欲を最大化させることがTMの心得なのです。
次にチームの編成について書きます。
熟考し、工夫した上で、階層構造を作る。
フィードバックを相互に行える環境、フィードバックを受け入れられる環境を作ろう。
- 規律を重んじるならきちんとしたピラミッドを作った方がよい
- 自由度を高め独創的に育てたいならフラットで管理(ただしリーダーのカリスマ性=高い信頼が必要)
- 深いコミュニケーションの成立宛先は同時に3名まで(例:リーダー→サブリーダー×3)
- 相性のあわない人間は同一サブチームに入れない
- 相性のあわない人間同士で上下関係をつくらない
- プライベート等コントロールしづらい領域に問題のある人を遠くに配置しない
- 「体制」でなく「態勢」であると心得る(不変でなく適宜変化がおきる)
- 座席配置ですら侮らず日々考察・変革する(コミュニケーションとマネジメントの合理性が勝負)
原則であり、例外は完全否定できませんが、上述のように意識してチームを編成し、日々見直して改変していきましょう。
「チーム」の基本構成を経験的整理してみます。
チームの人数やプロジェクト全体規模、与えられたメンバーが持つ素養によって毎回アレンジさせられることは不可避でもありますが、王道として、基本的チームメンバーの構成を下記に解説します。
リーダー 全体管理責任者、戦略立案・承認者
サブリーダー 実務管理者、戦術企画・実行統率者
エース 実務技術統括、成果監修責任者
バックアップ 予算管理、人材管理等ミドル業務
トレーナー 教育プログラム開発、啓発・指導役
スタッフ 実働部隊
クラリカル 事務、庶務、秘書業務等アドミ役
各ロール(役割)の、役割別適性は、クライテリア(評価軸)レベルの典型例で恐縮ですが、下記となります。
リーダー 大局を見渡せ、迅速な英断ができる
サブリーダー 実務管理のノウハウ熟知、繊細
エース 技術・業務知識の匠、品質遵守意識
バックアップ 情に流されない冷酷さ、スピード重視
トレーナー 情熱的、献身的、プラス執念深さ
スタッフ 強いコミットメントと正確な処理能力
クラリカル 無欲で社交的、かつ誠実な人格
できるだけ、このような尺度でメンバーの配置を「初期」「中期」「後期」と、チームの立ち上げ~解散の日まで、いくつかに期間を区切って、定義し、軌道修正していってゴール達成を狙うのです。
TMにおける"UnfairなFairness"
公平とは「不公平であることが文句として挙がらない状態」と私は定義しています。
TMにおいて常に公平である必要はまったくないです。
不公平社会を全員が認知していることが重要です。
この世から「不公平」が完全になくなることなど、刹那的ではありますが、絶対にないでしょう。
だから、そんな世の中において、各メンバーがBest Effort(良い意味で最善を尽くす)で頑張れる動機付けをしてください。
チーム内において、迷ったときは「リーダーの意見・判断」が絶対であり正義とも言えます。でなければTLを名乗れないと思います。そこでTLとして迷うなら、TMの最終評価や絶対的指示を行うプロジェクトマネジメント側(プロジェクトマネージャーやPMO的組織およびメンバー)に伺いを立てましょう。相談した上で、プロジェクトとしてのBest Effortを算出してください。
TMにおいては、正道で一番適切なはずの主張は、多数決に勝つだけの権力をもっている必要があります。必ずしも権力が持てないときはあり得ますが、心構えとしてはそういう風に自信をもってマネジメントしましょう。
このようなチーム運営にしなければプロジェクトは成功させられないと思うのです。ましてや、TMをバッチリできないのにプロジェクトマネジメントなんてできないって思ってますので。。
TMのまとめ
超要約すると、"自分以外のメンバーにいかに多くの功績を果たさせるかに徹してマネジメントをすべし。"ということになります。加えて、見えづらいTLの功績を総合的にアピールする(計画時にはそう予言する)のがいいと思います。
上述のまとめというよりTLの心得として、最後に纏めのメッセージを書きます。ご参考になれば幸いです。
- メンバーにとって心地よい「管理の粒度」に工夫する
- デジタルに計画し、デジタルに管理する(アナログ=差別のリスク)
- メンバーには権限を適度に与え、しかし最終責任はとらせない(=TL責任)
- 業績は「実績按分」でメンバーに分かち合わせるが自然と共有されている「不公平性」にも配慮