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觔斗雲、発艦始め!サイボウズ kintone(キントーン)

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マイクロソフトExcelは汎用性が高いたいへん便利なツールです。計算式やマクロを使えば、業務アプリケーション風の仕組みを作ることさえできます。しかし、社内で複数の利用者が相互にデータを入力・更新するような状況になると、Excelの限界が見えてきます。

ファイルサーバー上に置いたExcelファイルは、一度に1人しか書き込みが出来ないため、2人目以降の人は読み取り専用となって仕事が止まってしまいます。

書き込みの競合を避けようとして、一度パソコンにダウンロードしてから変更したものをファイルサーバーに書き戻す運用にすると、自分がパソコンで更新している間に別の人がサーバーで更新したファイルを古いファイルで上書きする危険性があります。

結果として各自のパソコンにオレオレ最新版が分散して存在することになり、どれが最新のファイルかわからなくなります。

複数の利用者が1つのデータを共有するような場面では、Excelではなく専用の仕組みが必要になります。

この分野はSugarCRMのようなWebベースのパッケージや、PHPやJava言語の開発フレームワークなど、プロフェッショナル向けのツールが充実しています。プロ向けのツールは大規模システムの構築に十分使える機能や拡張性を持っています。ただし、高機能を使いこなすために、学習コストが高くなります。現場の実務ユーザーが手軽に始められるツールの選択肢は、実はそれほど多くありません。

Excelに限界を感じているお客様に弊社がイチ押しなのが、サイボウズの「kintone(キントーン)」です。

私はkintone発売のころから注目していて、当ブログでこれまで2回取り上げています。

2011/11/09【Salesforceはもういらない】サイボウズ kintoneリリース

2013/07/17 まずkintoneを検討する、話はそれからだ。

kintoneは以下の特長があります。

  • ブラウザで動くWebベースのアプリケーションを手軽に開発できる。
  • データはサイボウズのクラウドで一元管理されている。
  • 月額料金ですぐに始めることができる。
  • サイボウズオフィスで鍛えられた日本人好みの画面デザインと操作になっている。
  • アプリケーションはパソコン(ブラウザー)、タブレット・スマートフォン(ブラウザー、iOSアプリ、Androidアプリ)で使える。

kintoneでどんなことができるのか、以下の動画がわかりやすいと思います。

この動画で一つ注目していただきたいところがあります。それはkintoneの画面の中で、迷子の写真撮影からアップロードまでシームレスに完結していることです。これはカメラ内蔵のタブレットならではのメリットです。デジカメとパソコンの組み合わせであれば、デジカメで撮影後にメモリカードをパソコンに差し替えて、フォルダとファイル名を選択する操作になるでしょう。これでは現場の負担が大きすぎます。※WiFi対応のメモリカードにすればとか、カメラ内蔵のパソコンにすれば、という突っ込みは無しでお願いします。いずれにしても歩き回る現場でキーボード付きノートパソコンは不向きです。

私が3年前に初めてkintoneを触ったときに、簡単にアプリケーションを作ることができる点で優れている一方で、データのリレーション(テーブル間の親子関係)機能がないことは短所と感じました。データの親子関係はリレーショナルデータベースの基本であり、本格的な業務システムの開発で必須と言える機能です。

そのときは将来のバージョンアップで追加されるだろうと思っていたのですが、それから3年過ぎた現在もリレーション機能はありません。※標準の開発画面で実現できる範囲ではリレーション機能はありませんが、APIを使ってプログラミングすれば実現可能です。また、標準の開発画面でエクセルのVLOOKUPのように他のテーブルを検索して値を持って帰ることは可能です。

kintoneはあえてリレーション機能を実装せずに「柔らかいデータベース」とすることで、利用者がアプリケーション開発を理解しやすくするメリットを狙っているそうです。

企業の実務においてExcelで管理するようなデータベース的なものは、交通費精算や売上集計表のようなシンプルな書式が多いはずです。あえてリレーショナルモデルの親子関係で厳密に考えなくてよさそうです。実務ユーザーがリレーショナルモデルを初めて理解するのはハードルが高いです。マイクロソフト Accessのトレーニングインストラクターをしている方によると、Excelをかなり使い込んでいる人でもリレーションの概念を理解するところでつまづくことが多いそうです。

kintoneは、実務担当者が簡単にクラウドアプリケーションを作れるEUC(エンドユーザーコンピューティング)ツールとしての顔と、プロがAPIを使ってプログラミングして高度かつ複雑なアプリケーションを作れる開発フレームワークの顔を持っています。実務担当者にリレーションを意識させないというのは一つのポリシーと思います。私の予想ですが、今後も標準の開発画面でリレーション機能は実装されないのではと思います。

この3年間で大きく変わった部分があります。それは、kintoneの周りにkintoneのアプリケーションや機能拡張ツールを開発・販売するサードパーティーが増えたことです。たとえば、kintoneの標準機能に含まれない日本人好みのきれいな帳票を作るアドオンソフトウェアを提供している会社があります。

開発環境やサードパーティーが充実してきたためか、kintoneがSalesforceのforce.comと比較されることが多くなってきました。

この両者はクラウドベースのアプリケーションを開発できるプラットフォームである点は共通していますが、私はもともと別物として位置づけています。

今流行の「艦これ」に例えると、重厚長大の戦艦(force.com)と、軽量で俊敏な艦載機を次々発進する航空母艦(kintone)くらい違います。どちらが優れているというのではなく、適材適所で使い分けるとよいでしょう。

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サイボウズOffice (グループウェア)や kintoneを 30日間無料でお試しできます。開発無しですぐに使える無料のkintoneアプリが用意されています。まずは実際に使って試してみてはいかがでしょうか。

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