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顧客サービスとITのおいしい関係を考える

【顧客サービスの設計を考える】食べ物の恨みは恐いよ

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先日、都内での話。私を含め5人でミーティングした後、ちょうど昼食時だったので「みんなでランチでも」ということになった。接待ではないので、各人自腹だ。

あるレストランの前を通りかかったところ、ブッフェスタイルのランチが2,000円だった。さらにこのビルに勤めている関係者は、500円引きの1,500円とのこと。関係者割引の条件は、ビルのセキュリティーカードを持っていることだった。

我々5人のうち、私ともう一人はカードを持っているが、あとの3人はカードを持っていない。このような場合にどうなるかをきいてみると、グループの場合はカードを持っている人のみ割引が適用されるというルールだった。

これって、どうなんだろう。

同じ食事をして人によって払う金額に差があるのは、割引を受けられない人にモヤモヤした残念感が生じるだけでなく、自分たちだけ割引を受ける方もなんとも居心地が悪い。

結局、その店には入らず、別の店で食事をしたのだった。

この店は何をしたかったのだろうかと、目的を考えてみたい。

店のレベルや立地等の条件を考慮しても、2,000円のランチは毎日通う価格とは言えない値付けだ。このビルにショッピング目当てで来た層か、社費でお客様とランチする層が対象だろう。外食不況の状況下で、それでは売上に限界がある。集客アップするために常勤者向け割引を始めたのではないだろうか。

値引き後価格の1,500円は、利幅は薄くなるが赤字になる値段ではないはずだ。ブッフェスタイルで経費はそれほどかからない。学生のグループではないのだから、店が赤字になるほどたくさん食べるわけではない。それを個人単位でセキュリティーカードチェックをしてまで、区別する必要はあるのだろうか。例えば、値引き分がビルオーナーからテナントに割り戻しされるというであれば、厳密にカウントする必要があるだろう。しかし、そこまで管理しているようには見えなかった。

割引ルールを適用した場合に期待される売上は、

1,500 x 2 + 2,000 x 3 = 9,000円

となる。

仮に、グループ内の一人が関係者であればグループ全員が割り引きとしたならば、

1,500 x 5 = 7,500円

の売上だ。

その差、1,500円。つまりこの店は1,500円の売上(この数字は粗利に近い)にこだわった結果、グループ客を取り込み損なって7,500円の売上全体(この数字は経費込みの売上)を機会損失したことにならないだろうか。値引きの客を切っても定価の客が入るというならそれもアリと思うが、もともと定価の客でいっぱいにならないから値引きを始めたのではなかろうか。私はこの店の料理や雰囲気を気に入っているだけに、もったいないと思う。

値引きやその他のサービスで、本来の目的は何なのかを見失うと逆効果になりかねない。サービスを設計する時は、思わぬ落とし穴に注意したい。

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