【CMSビズ大成功】無事第1回も終了です
去る6月24日に半蔵門の株式会社キャッチボール21に於いて、第1回「CMSビズ」が開催されました。
約1年前から有限会社磯谷商店で「CMS night」の名前で定期的に開催されていたCMSの勉強会兼懇親会がありました。これが回を重ねるごとに人数が増えて、ついに部屋に入り切らなくなったことから、主催をキャッチボール21に変更して、CMSビズとしてリニューアルしたものです。CMSベンダー、Web制作会社、ユーザの相互の交流と情報交換を促進して、CMS業界が発展するための場となることをミッションとしています。
CMS night時代は、多いときは30名ほどが集まりました。今回はCMSビズになってから初めてで、昼間の早い時間から始まるなど変更された部分があります。リニューアルしてどのくらいの人数が集まるか、心配なところがありましたが、当日は60名の参加があって、初回から大盛況となりました。このまま行くと、キャッチボール21に入り切らなくなる日が意外に近いかもしれません。
当日のセッションの中から、いくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
キャッチボール21の竹内取締役社長の挨拶に続いて、CMS nightの主催者だった有限会社磯谷商店 代表取締役 長尾氏から、CMS nightを始めた理由について、プレゼンテーションがありました。
イベントとは「目的意識を共有する人が出会う場」であると定義されます。どんなにITが進んでも、会うことに勝るものはありません。イベントの価値は、出会いを通じて目的を具体化することで、効果的な行動を起こすことにあります。出会いは意識を変える、です。
自分の得意なことを情報共有する事が、効果的な行動につながります。そして、学習することが、自分の得意分野を作ることになります。オープンソースは、学習コストが低いです。
例えば、ライセンスが数千万円もする商用CMSでは、ニートが気軽にCMSを試して勉強するようなことはできません。XOOPSはオープンソースであることから、個人がXOOPSを勉強して、その知識を活かして稼ぐことができました。XOOPSを使ってWebサイトを構築することで、お客様から感謝されました。
小さな努力で、大きな感謝を得ることができる、すなわち、学習に対してレバレッジが大きいのがオープンソースの特徴です。
弊社ではSugarCRMやNetCommonsを勝手に担いでお薦めしていますが、これはオープンソースだからできることで、商用の製品では代理店契約や前払い金など、とても気軽に応援できるようにはなりません。自分の知識やノウハウを公開することで、新しい出会いや繋がりが広がっていくことが、オープンソースのすばらしい所だと思います。
eZ Systems Japan ビジネスデベロップマネージメントマネージャー 藤田氏は、「eZ Publish! -- 日本で始まるエンタープライズWebCMSの時代」と題して講演しました。
狭義のCMSがWebCMSを指しているのに対して、企業の印刷物などを含めた広いコンテンツ管理をECM(エンタープライズ・コンテンツ・マネージメント)と言います。近頃の業界トレンドは「WebCMS市場をECMが狙っている」ことです。今年に入ってから、AutonomyがInterwovenを買収したり、Open TextがVignetteを買収したりしています。
2年ほど前は、企業のCMS利用率は、1桁パーセントでした。利用率が低かった理由は、商用CMSのライセンスが高価であったことだけでなく、日本独特の事情がありました。それは、ページ単価で見積りをする商習慣です。このため、ユーザが自分たちでWebサイトを更新できるようになるCMSを、営業が積極的に売らない傾向がありました。
日本でCMSが注目されるようになった発端は、ブログからです。これでWebサイト更新が楽にできることが理解されました。
企業がWebサイトで情報を迅速に公開することの重要性が高まり、動画などのリッチなコンテンツが増えるにつれて、「エンタープライズWebCMS」が注目されるようになってきました。
WebCMSは、商用またはオープンソースで様々なパッケージがあります。これを2つの軸で分類してみました。
1つの軸は、コードの開発を誰が中心になってやっているかのベンダー度です。ベンダー系~コミュニティー系の間で考えます。もう1つの軸は、得意な用途で、ブログ系~コミュニティーポータル系~エンタープライズWeb CMSのどこに位置づけられるかです。
Movable TypeやWordpressは以前はブログ系でしたが、近頃はコミュニティーポータル系になってきました。エンタープライズWeb CMSはあまり変化がありません。eZ PublishはエンタープライズWeb CMSのオープンソース製品です。Fatwire、Interwoven、NORENと同じ企業向けと位置づけられます。
エンタープライズWeb CMSの歴史は意外に古いです。Movable Typeが出てきたのが2001年であるのに対して、Future Tense(後のFatwire)やTYPO3は1998年、eZ Publishは1999年です。
ブログは情報を入力して出力することは簡単にできますが、コンテンツに対する精査やガバナンスが弱いです。企業のWebサイトでは、コンテンツの投入と出力だけでなく、ワークフロー、アセット管理、ユーザ管理、アクセシビリティなどが重要です。
例えば、公開する前の多段階の承認、サイトのバージョニング、使用する画像の有効期限などの管理機能です。組織の意志を反映して、安全に公開できるかが問われます。
企業サイトでは、Webのコンテンツ管理だけでなく、印刷物との同期が必要になることがあります。例えばファッション雑誌ELLEのサイトは、eZ Publishを使っています。ワールドワイドでブランドイメージを統一すると同時に、各国のサイトが自由にデザインできるようになっています。雑誌記事の入稿とWebコンテンツの投入が、同じ入口になっています。1つのコンテンツを用意するだけで、紙とWebになります。
eZ Publishは、ノルウェーのeZ Systems社で開発されています。eZ Systems社にはPHPのキーパーソンのDerick Rethansが在籍していて、開発に参加しています。日本では、eZ Systems Japanが2008年11月に設立されました。eZ パートナーは現在11社です。
eZ Publishは、企業や組織でガバナンスが必要とされるサイトに向いたエンタープライズCMSです。細かい説明は省きますが、エンタープライズWeb CMSに必要な機能は標準で備えています。SugarCRMやsalesforceなどのCRMとの連携や、ERPとの連携の事例があります。例えば、ピザ屋のサイトでは、ERPや会計のシステムと連動しています。
株式会社ダイバーシティ 代表取締役 田原氏は、「ついにMODx1.0リリース 今後の日本語版の可能性」と題してプレゼンテーションしました。
MODxを一言で言うと、"シンプルでパワフル"なデザインの自由度が高いCMSです。このたびついに日本語版MODx 1.0がリリースされました。これは本家公認のディストリビューションです。日本語以外の言語ファイルをはずしてあるため、とにかく管理画面の動作が軽くて速いことが特長です。
日本語版の独自機能として、Mobile Converterがあります。これは日本の携帯電話向けの画面変換モジュールです。アクセス端末機種ごとにテンプレートを変更する機能や、文字コードをUTF-8からS-JISに変換する機能があります。大きな画像を自動的にサムネールに縮小変換する機能もあります。今後、絵文字プラグイン機能が追加されれば、携帯対応で必要な機能は揃うのではないでしょうか。
コンテンツをCSVファイルで作っておいてアップロードする機能は、ECサイトで数千ページの商品情報を一気に更新する時に役に立つと思います。
MODxは、HTMLを自分で書ける人はすぐに慣れることができるCMSです。
CMS nightに参加して、いろいろなCMSを勉強する機会がありました。そこで得た結論は、「CMSは適材適所」です。なんでも1つのCMSでやろうとするのは、無理があります。eZ Publishはコンテンツをしっかり管理したい企業向けのCMSとして良さそうです。
弊社はNetCommonsをイチ押ししていますが、これは"サクッと入れて、サクサク使う"用途に向いています。元々がワープロとデジカメを使える普通の人が、自分でサイトを更新できるように開発されたCMSです。デザイン命のブランド系サイトには、ちょっと難しいと思います。
逆にMODxは、自分でHTMLを書いていたWeb開発者が、サイトを自由にデザインしつつ、開発の生産性を高めることができるCMSだと思います。NetCommonsは最新バージョンで携帯対応を強化しましたが、MODxの携帯対応機能はちょっと気になる存在です。NetCommonsも負けてはいられませんね。
レクチャー終了後は、懇親会になりました。実はこの懇親会が、CMS night以来のイベントの肝です。懇親会に出ないで帰るのはもったいないです。
第1回ということで、はじめは皆さん遠慮がちでしたが、お酒が入るにつれてだんだん盛り上がって、大盛況となりました。参加した人が気持ちのいい時間を過ごせるように、会社を挙げて裏方に徹してホスピタリティー溢れるおもてなしをしていただいたキャッチボール21の皆様に、お礼を言いたいと思います。
第2回CMSビズは8月頃に開催予定です。開催日時が決まりましたら、当ブログでおしらせします。今やCMSを使わないでWebサイトを作るのは損ですよ。CMSビズに参加して、自分の用途に合ったCMSを見つけてみませんか。