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目からウロコの「新ビジネスモデル」研究会 第18回

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片貝さん主催の『目からウロコの「新ビジネスモデル」研究会 第18回』の内容を紹介したい。今回は、j.union株式会社の西尾 力 代表取締役と、小野 晋専務取締役にお話を伺った。


近年、労働組合のイメージは良いとは言えない。2001年の日本労働研究機構の調査では、「知りたい」と思う職業ランキングで、労働組合の役員は、424職業中の最下位だった。

j.unionは、労働組合というニッチ市場に特化していることが特色となっているj.unionの顧客は、企業の労働組合だ。組合員500人以上の労働組合は、日本国内に約3,000ある。そのうち2,500組合が、j.unionの取引先となったことがある。直近1年では、1,146組合が取引先だった。j.unionは、企業や経営層ではなく、組合と従業員にアプローチしている。目的は、自分たちで会社をよくすることであり、いわゆる御用組合になることとは違う。従来のコンサルティング会社は会社目線だったが、j.unionは現場の知恵を重視している。

j.unionの事業は、人材育成、広報・宣伝、リサーチ・研究、システム・サポートなどの分野にわたっている。余談になるが、組合員SNSは、上場企業40万人のサラリーマンとOLをメンバーとする質の高いSNSになっている。

今でこそj.unionの経営は安定していて、バランスシートに固定負債や銀行借入がないくらいに順調だが、ここまで来るまでは失敗の歴史があった。

西尾氏は、高校時代に学生運動を経験し、大手運送会社の就職して組合役員になって16年間組合活動をした。ドラッカー経営学に触れて学ぶうちに、中小企業診断士仲間と交流事業会社を設立した。この会社が、日経新聞その他に取材されて掲載されたのを機会に、起業が会社にばれる前にと考えて勤務先を退職した。

しかし、起業3年目にして、大口顧客でデータ入力重複ミスが起きた。損害賠償を請求されて倒産の危機となり、一時は夜逃げを覚悟した。ここで、何とか乗り切ろうとして、プラス思考の物事の考え方に気づき、事業ドメインを「労働+経営学・心理学のビジネスに特化する」ことに決めた。

行商のように地道に組合を回って営業活動した結果、事業はようやく軌道に乗り始めた。まさに「どん底からの脱出」だった。その1つのきっかけは、組合活動をマンガで説明した『「超」活動法』というタイトルの書籍だった。これを配ることでセミナーの依頼が入り、共感者が増えていった。そして採算が取れるようになって、事業の成功を確信した。西尾氏は成功の理由を、自分自身が低賃金・長時間労働したからだと言う。

労働組合には、4つの顧客が存在する。組合員、地域・社会、組合役員、経営陣・管理職である。モノ・カネ・情報が、デジタルで割り切れるが、ヒトはアナログで割り切れない。そしてヒトこそが、組合が関わる部分である。

従業員は、ヒト、モノ、カネ、情報に続く第5の経営資源だ。そして、組合は経営の新しいパートナーになるべきだ。企業の存続・発展、社会貢献、社員の豊かさ等の戦略は、労使で一致している。それを実現する戦術が会社と組合で異なるだけだ。

賃上げのみが目的の組合は、高度成長時代の考え方だ。これからは、働く人のモチベーション向上やワークライフバランスを、会社といっしょに考える組合にならなければいけない。すなわち、経営学的アプローチで、要求型から提案型に変わっていかなければならない。経営学的アプローチとは、以下の3つを指す。

①自分たちの所属する会社をよい会社にする

②プロフェッショナルの集団にする

③課題解決力を持って労使対等を目指す

j.unionは、組合員のプロフェッショナル化を支援している。従来の組合は、闘争や団結を合い言葉に、会社に対して要求ばかりすることが多かった。今や働きがいの意味は、経済的報酬から企業に対する満足度等の心の報酬に変わりつつある。これからの組合は、自ら生産性を上げて、企業の存続発展に貢献する集団になるべきだ。組合を通じて、変化に対応でき、顧客価値を創造し、チームワークがあって、周りの人まで成長させる人材を育成していきたい。

BEST主義の思考方法を身につけることによって、人は万能な問題解決力を持つことができる。BEST主義とは、人生を「明るく(Bright)、楽しく(Enjoy)、元気よく(Spirits)」生きていくためにとるべき思考(Thought)方法の頭文字を取ったものだ。

まず問題の捉え方をいい面と悪い面を見る両面思考にして、強みとチャンスにフォーカスすることが重要だ。多くの人は「理想-現実=不平・不満」の引き算で考えてしまう。これを妄想の方程式と呼ぶ。「現実+自分たちでできること=目標」の勝利の方程式で捉えることができれば、具体的で前向きな行動につながっていく。

組合は、企業の上下の双方向にダイレクトに伝えることができるコミュニケーションの補完機能を持っている。これを活かして、明るく楽しく元気よく働ける企業・職場を作り出したい。社内で定期的に行われる職場集会は、これまでは賃上げの会議だったが、これからは情報の共有と伝達の場に変わっていくだろう。

高付加価値な労働者になる挑戦は、組合主導でやるべきである。ある企業の組合でj.unionがワークショップのやり方をレクチャーしたところ、全社QC(品質管理)活動で出てこなかった改善案が、山ほど出てきた。会社のQC活動に現場が疲れて意見を出さなくなっただけで、まだ生産性は上がる余地がある。組合主導であれば、自分たちのためと思って、意見が出るようになる。下から主体的に自分たちの仕事・職場を考えるには、組合はいい組織だ。

倒産の危機に直面したあるホテルでは、日本一幸せな従業員を作ることを目標として、社員を幸せにすることで業績がV字回復した。CS(顧客満足)はES(従業員満足)から、である。今ではこのホテルはディズニーランド周辺のホテル並の高い客室稼働率になっている。他に、自動車会社、情報機器メーカー、コンビニ、化粧品会社の事例が紹介された。

近年、非正規社員の問題がクローズアップされている。非正規社員は非組合員であり、現状の組合は正社員の利益を追求する組合になっている。しかし、短期的発想では自分たちの雇用・賃金を守ることはできない。これからは多様な働き方を受け容れつつ、組合が調整役になるべきであると訴える。例えば、ある化粧品メーカーでは、従業員の7割を占める契約社員のために、組合が契約社員の賃金500円アップを会社側に要求した。

j.unionは、日本の労組を業態変換したい。従業員が自分たちの雇用・賃金を守るためには、企業が存続することが利益となる。いい会社とは何かを考えて、いい会社を追究すべきだ。組合が人材育成機関となれば、労使関係をwin-winで解決することができる。これは、馴れ合いや御用組合になることではない。ぶれないビジョンを明確に打ち出し、いい意見のぶつかり合いで緊張感のある経営をすることで、本当に必要な時は経営者にNoと言える力を持つことだ。

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