『女子のキャリア』を読んだ:「過度の配慮」は男女どちらにとっても良くないと思うのだ
同じ役割で採用した社員は、同じように扱うべきだと思っています。
「そんなことは、当たり前でしょう?」
「何十年も前からそうしているよ」
と思われる方も大勢いらっしゃると思います。
同じ場所に長期間男女そろっているというと、まずは、新卒者向けの新入社員研修です。
それを例に考えてみましょう。
同一カリキュラム、同一期間、名簿だって男女まぜこぜのあいうえお順で作っているよ。男女同等に扱っているよ、と人事や人材開発の方はおっしゃるでしょう。私たち講師もそれぞれのクライアント先で、男性も女性もなく、扱います。
しかし、よくこういうことが起こるのです。人事の方がつい言ってしまうセリフ。
教室のレイアウト変更があるとき。
お弁当を運ぶとき。
支給される何か(パソコンなど)が届いて配布するとき。
重い何かを配るとき。
「これから机といすを運ぶから、男性3人くらい手伝ってくれない?」
「お弁当を運ぶから、男性2人、給湯室へ取りに行って」
・・・
そう、力仕事の時、「男性」限定で依頼してしまうのですね。
この時点で、同等に扱っていなくなるんです。
これ2つの視点でよくないなと思うんですね。
・女性が「力仕事」は期待されていないと暗に思い、自分のできることに限界を決めてしまう可能性がある
・男性が「力仕事」=いわゆる”男性らしさ”、を期待されてしまうことのプレッシャーを持つ可能性がある
女性だって力持ちはいるし、男性だって力持ちではない人もいるでしょう。
だから、上記のセリフは、こういう風に言うほうがよいと思うわけです。
「これから机といすを運ぶから、誰か3人くらい手伝ってくれない?」
「お弁当を運ぶから、誰か2人、給湯室へ取りに行って」
と。
逆を考えたら、違和感の正体はわかると思います。
「机をきれいに拭いてほしいので女性2人、雑巾がけしておいて」
「女性2人、お茶入れてくれないかな」
・・・何か引っかかるでしょ?
「そうはいっても、男性と女性は肉体的に違うでしょう」という反論もあると思いますが、最初から「力仕事があるから、男性、ちょっと来てーー」というのと、「力仕事があるから、誰か手伝って―、男女問わず!」というのとでは、新入社員の意識が変わってくると思うのですね。
女性に対する「過度の配慮」は、女性の可能性の芽を摘む可能性もあり、また、男性にもプレッシャーを与えることがありうる、ということはちょっと意識していたいことです。
以下は、そんなことを思いながら読んだ本です。
『女子のキャリア』
中に出てくる職場の例が私にとっては経験したことがないものも多く、驚愕しました。私の勤務先(DECと現在の職場の2つだけですが)は、ずいぶん、男女の差を感じさせない風土があるな、とあらためて認識しました。
たとえば、力仕事は男女問わずやりますし、「男性だけー」「女性だけー」と言われたこともないです。この本には、「男性の”昭和”な鍛え方」の例もたんまりと出てきて、「うわ、大変だなあ」と思ってしまいました。
「働く女性を取り巻く環境の変化」とか「いまの時代のキャリア形成」など、とにかく色々と考えさせられる本です。「過度の配慮」についても出てきます。