新しく社会人になった”あなた”へ
おはようございます。昨日(4/1)は、エイプリル・フールに合わせた「うそ」投稿をしたのですが、何人かが本気にされたようで、フンガイしているツイートなどを拝見しました。どうもすんづれいいたしました。さて、真面目に。
まずは、今日入社式を迎える多くの新卒新入社員の皆様、おめでとうございます。そして、彼・彼女たちをここまで育てて来られた親御さん、私のような叔母バカの皆様(叔父バカも、じじバカもばばバカも・・・あらゆる関係者の皆様)、ホントにおめでとうございます。
この歳になるまでついぞ気づくこともなかったこととして、こういう「おめでとう」は、その場に身を置くことになった直接の誰彼だけではなく、送り込む立場の方にとってもおめでとうなんですよねぇ。今日、朝ご飯を作ってくれたお父さんはどんな気持ちで娘のスーツ姿を見つめるのでしょう。 「駅まで一緒に行こう」なんて声をかけたお母さんはネクタイをきりっとしめた息子と並んで歩くときどのような気持ちになるものでしょう。
そんなこんなの、多くの方へのおめでとうの一日。
このブログを新入社員の方がご覧になることはまずなさそうですが、それでも区切り日なので、ちょっと書いてみたいと思います。
3月31日(土)づけ毎日新聞朝刊に野坂昭如さんがこんな文章を寄せていらっしゃいました。(生活面の『野坂昭如の七転び八起き』という連載です)
タイトルは、「新社会人」。
「新社会人として第一歩を踏み出す人へまず言っておく。勤め先で人生は決まらない。会社という組織に就職したからといって、自分が奪われるわけでもないし、これで生活が安定したとも限らない。すべては自分次第。組織の中に染まるだけではうだつは上がらない。常に前を見ること。これから先細りする日本をどう動かしていくか、これは君たちの問題。」
まず、上記の部分。激しく首肯。
10年以上通っている大学の授業で、以前教授が全員に「企業とは何か?」と問いかけたことがありました。社会人向け講座なので、皆さんそれぞれに自分の言葉で回答した中、唯一の学部生がこう答えたのは忘れられません。「企業とは、個人の個性を無くさせるところ」。学生にとってはそういうイメージなのだなあ、とその他大勢の”勤め人”が苦笑いしたものです。野坂さんが言うように、別に自分がなくなる場所ではないけれど、でも、以下に続く文章にあるように、自分がちゃんと自分で考えて生きていかないと、容易に自分をなくすこともできる、というのが、会社とか組織といった場所なのではないかとも思います。
続きです。
「就職したら一会社の歯車として働きつつ、やがて訪れる機会を待つことだ。まずは言われたを言われた通りにやる技術を身に着ける。その先が勝負だ。会社や上司からの指示に従うことも大事、しかし従ってばかりいれば何でも受け身になる。<略> 受け身は実は楽なのだ。やがて自分の頭で考える習慣が失せてしまう。自分自身の本当の生き方や考え方と向き合うことを忘れ、知らず知らずのうちに、自分から逃げることになる。」
”歯車”という言葉に抵抗を感じるむきはあるかもしれませんが、ここでおっしゃっていることは、すごくよくわかります。つまり、自分で自分の道を切り開く努力をしなさい。でも、それはいきなり目指すことではなく、まずは、足元を固めることだ。「言われたことをちゃんとできること」が先決。その時それでも、仕事の意味を考えたり、次のステップを予想したり、”頭”使いながら言われたことをちゃんと行うことはできるよねってことだと思うのです。それをしている内にだんだん「自分らしい仕事」「自分らしい何か」を得る道が開けると。
これは、クランボルツ氏が提唱する「計画された偶発性理論」にも通じる話です。
20年以上にわたり、各企業の新入社員研修にたずわさって来ました。また、ここ10年は配属先のOJT担当者側の支援もしています。そんな中で時々聞こえてくるのは、「基本をおろそかにする」「簡単な仕事・単純な作業を軽く見てしまう」新入社員のケース。
「早く高みに昇りたい」と気がせく気持ちはわからなくもありません。上司や先輩も、それから、目に見えない世の中というものも「早く一人前になれ」「キャリアは自己責任だ」と言いすぎるきらいがあります。(でも、言っている上司や先輩だって同じ言葉をさらに上の人から言われているんですけれども)だから、新入社員が焦ってしまうのも無理はありません。
でも、「基本」があるから「応用」がきき、「簡単」な仕事ができるから、「難しい」仕事もできるようになるのです。
あまり焦らずにしっかりと地に足を付けて踏ん張っていただきたいなあーと思います。
で、各社数日から数か月の「新入社員研修」を用意していることと思います。後になってわかることですが、「こんなに長時間、勉強だけしていてよかった時期はなかった」し、「こんなに基本的なことをあれこれと学ぶ機会」は後にも先にもこの時なのですね。
我が同僚(50歳くらい)は、「できることなら、自分が受けた新入社員研修を全部受け直してみたい。凄く充実したカリキュラムだったから」なんて言っています。
配属されてからも研修機会は与えられるでしょうが、かなりの学習は自分の創意工夫で時間を捻出し、自分の努力で行うものになってきます。(学ぶことは一生終わりません。ホント、結構大変ですよ。ふぅ~) 「働くこと」は「学ぶこと」と一心同体のような言葉です。学ばなければ働けない(よい仕事はできない)し、働く(仕事をしながら)から新しい学びも得られる。学ぶというのは、研修を受ける、本を読むなどといったお勉強とは限りません。それはほんの一部のことです)
だから、今日から始まる「新入社員研修」は二度とやってこない貴重な時間。
新入社員時代に成績がどん尻だった私ができるアドバイスは、ただ一つ。人事部の方の言葉、先輩社員の教え、研修講師の説明。あらゆるインプットを記録に残すことです。「なんでもいいから、細かく”ノート”をとっておく」。
書いている時、わからなくても、実務に就いて見直した時、そのノートが役立つ場面は多いものです。その上、「あ、なんだ、こんなことを習っていたのか」と目の前がぱーっと明るくなると共に、「わかるようになった」自分に対してちょっと自信もついてきます。「私も少しは成長したんじゃないかな」と。 (配属先でも「ノートをとる」のは大事なこと。)
40年近い職業生活への船出の今日。身体に気を付けて、厳しいけれど、楽しい日々を送ってくださいませ♪
あと、最後に一つ。
会社って、そんなに悪い場所でもないですよ。
あらためて、入社おめでとうございます。