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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

後進育成のインセンティブは?

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企業のOJT制度周辺の支援を手掛けるようになってほぼ10年。

多くの企業のOJT制度の立ち上げ、混乱期、安定稼働・・・の様々なフェーズを見てきました。

「OJT制度」というのは、人事部・人材開発部などが中心となって「OJT」を仕組みとして回すものです。「各部門に配属したら、あとの育成はお任せね」とせず、「OJTトレーナー」を新入社員に一対一でアサインして、1-3年の期間、育成・指導にあたるもの。
(最近は、キャリア採用者、異動者、職種転換者にもOJTを適用するケースも増えているようです)

さて、ここまでは、幾度となくこのブログでも書いてきましたが、「OJT」を担当する「OJTトレーナー」にとって、「後進育成」にあたる「インセンティブ」ってなんでしょう?

2000年代前半には、「月額1万円」の「OJT手当」をトレーナーに支給する、といった金銭的インセンティブを付けている企業も見かけました。確かに日頃の業務に加えて、後輩を育てる、成長を支援する、のは、時間も手間も神経も使うので、それに対する「手当」を出しましょう、という考えも「あり」・・・です。

でも、最近は、「手当」についてとんと聞かなくなりました。

その代り、「MBO(目標管理制度)」の中にちゃんと組み込むことにしている企業が徐々に増えています。

つまり、ボランティアで後輩を育ててねではなく、仕事として育成に従事してね、目標の中の10%~20%くらいいで重みづけしてくださいね、という風に変わってきているわけですね。

ここまでは、制度面のお話。

では、本当に「後進を育てること」は、評価されないとやりたくない仕事だったりするものでしょうか? つまり、「内発的には動機づけられない」イベントなのでしょうか? 

そんなことはないと思っています。

先輩側のメリットを挙げてみましょう。

1.誰かに何かを教えるためには、自分がきちんと勉強しなおさないといけないことが多い。たとえば、「なぜか?」とソボクな疑問を投げかけられたら、「なぜならば」を堂々と説明できなければならない。けれど、「そういうもんだ」とだけ覚えてしまったことも案外多く、先輩自身も「なぜならば」を理解していないケースがある。後輩に教えるために、「なぜならば」などきちんと学び直すことになり、それが自分自身の成長につながる。自分とタイプの違う相手に何かを教えるというのは、精神面での鍛錬にもなる

2.後輩が育ってくれれば、自分の仕事のいくつかは後輩に譲ることができ、その分、自分はもっと新しいこと、難しいことに挑戦できるようになる。「後輩がきたから、やっとこの仕事を渡すことができる」とほっとした経験は誰でも一つくらいお持ちではないかしら?

3.育ってくれた後輩がいずれ自分を助けてくれるようになる。これは、2よりもっと先の話で、たとえば、後輩が徐々に偉くなってきたり、現場で大活躍したりするようになる。その時、「ああ、あの先輩には新人の頃お世話になったからなあ」と恩義を感じていてくれれば、先輩の頼みとか相談に応えてくれることがある

1と2は、まだまだ若いOJTトレーナーにも理解してもらえるのですが、3は実感がわかないので、「そういうもんですかねぇ、私が彼らを助けてばかりですけどねぇ」としか思えないものだと思います。

ですが、長い人生、案外、これ、侮れないのですね。

55歳で起業した知人が起業後5年経過してしみじみ私に語ってくれたことがあります。

「田中さんねぇ、付き合うなら、先輩じゃなくて、後輩だよ。後輩をたくさんかわいがっておくことだよ。だってね、僕、この年で起業したでしょ。先輩なんてほとんど引退しちゃって役に立たないの(笑)。それより、後輩。4-50代の結構影響力のあるポジションにいるからさ、いろんなことを助けてくれるんだよねぇー。これからは、若い友達、たくさん作っておいたほうがいいよ。経験からのアドバイス!」

・・・なるほど、そんなもんなのかなぁ・・と聞いていたのは、もう10年ほど前の話。

当時30代だったのでぴんと来ませんでしたが、50歳の声も聞こえるようになった今、この意味がすごくわかるようになりました。

こんな風に、「手当」「MBO」という仕組み以外でも、後輩育成に携わる「自分にとっての」無形インセティブはたくさんあるもんです。

4つ目を付け加えるなら、

「最初はめんどくさいと思っていたけれど、育っていくのを見るのは、案外楽しい♪」

これは、多くのOJTトレーナー経験者が口にすることです。
これだってれっきとした「インセンティブ」です。

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