「SI一括請負」の功罪とその弊害(後半)〜ITプロマッチへの道(その10)
「ITプロマッチへの道」シリーズの第10回目となりました。
前回9回と今回10回に分けて「「SI一括請負」の功罪とその弊害」というテーマで、IT業界の「下請け多重構造」を正すためには、その表裏の関係にある「SI一括請負」の丸投げ契約慣習を辞める必要であると言いました。
また今後、ユーザー企業にとって、プロジェクト「SI一括請負」契約に変わる形態として、IT技術者「個別委任」契約が、これからの姿であると説明しました。
今回は、「SI一括請負」がなくなると、どのような変化がIT業界に訪れるかを、想像してみたいと思います。
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<新規プロジェクトにおける人材確保プロセス>
「個別委任」が今後のSIにおいて主流となると新規システムプロジェクトでは、以下のよう人材確保プロセスとなります。
1. ユーザー企業が自らプロジェクト成功のためのプロジェクト体制を示し、そこに必要な各メンバーのスキルセットを明確にする
2. ユーザー企業がIT業界市場から直接、必要なスキルセットのIT人材を調達する。
(ここでは下請け多重構造を使う意味はありません。中小のIT企業でもユーザー企業の示すスキルセットに合う人材がいれば直接契約することができます。)
3. ユーザー企業と調達したIT人材(プロフェッショナル)とは「個別委任契約」を締結する
4. IT業界市場から直接集めたIT人材(プロフェッショナル)はユーザー企業のメンバーと、「新技術でビジネスを成功させる」、という共通のゴールをもち、共同作業が開始される
5. 個別委任契約されたIT人材(プロフェッショナル)一人一人はユーザー企業から定期的に評価され、仮に要求されるスキルが足りないと判断された場合は、人材のリリース、再調達が行われる。
そして「SI一括請負」がなくなり「個別委任」となることにより、IT業界全体には、次のような劇的なパラダイムシフトがおきます。
<IT業界全体における変化>
○多重下請け構造が崩壊し、フラットで自由なIT人材市場が生まれる
○フラットなIT人材市場では、IT企業を見る時に企業規模の大小よりも、所属している「プロフェッショナルがプロジェクトで必要なIT人材かどうか」ということが重要視される
○大手Sierのいくつかは人月ビジネスからクラウドサービス提供ビジネスに変貌して生き残る
<下請け多重構造の中にいた中小のIT企業の変化>
○まず自社のIT人材を、市場に適切なプライスで、ユーザー企業に直接委任契約をしてもらう。そのIT人材は、委任契約したユーザー企業の一員として、プロジェクトの一定期間は、その企業のビジネスを成功させるという共通のゴールで仕事をする。
○このようにしていくつもの顧客企業に貢献した経験と特別なスキルを持つ「プロフェッショナル」は業界の「スター」として評価される。
○場合によっては、クラウドサービスと組み合わせた自社のサービスを構築してそれを「自社クラウドサービス」として顧客に販売(月額利用料)する。
○積極的に新技術に対して調査、検証、実用していく活動をしていく。従来のような下請け多重構造の中で同じ技術で食っていく事はもうできないため、積極的に新しい技術の取得に励む。
<ユーザー企業の変化>
○全てのSIにおいてクラウドサービス利用が前提となる
(ユーザー企業は、SI一括請負の「当初の人月規模確保」の発想を持たないため、クラウドや超高速開発などの自動生成技術等を使って、システムを早く、安く作る方法を積極的に採用する)
○自社でプロジェクト全体(開発範囲や規模、優先順位など)をマネージメントする。またアジャイル型開発にてユーザーも巻き込んで行う。
○SIが「個別委任」型に変わった場合、「一括請負」のメリットであった、ユーザー企業内のシステム開発総額予算の申請と確保はなくなり、代わりに年度であらかじめ決めたIT概算予算の中での優先度によるシステム投資のマネージメントが強化される。
例えば、
もう従来のように例えばシステムを全部実現するのにXX億円かかります、それを「一括請負」にするので、予算を要求します、という考え方はもうできなくなる。
今後は、「当社は5年間でX億をIOTの実現に投入します、その範囲の中で最も優先順位の高いシステムを順番に早く、安く作って行きます。最初から全部のシステムを実現するつもりはありません。」というIT予算の考え方に変わっていく。
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こうした限られたIT予算の範囲で早く、安く、必要な優先度の高いシステムを構築していく体制が「一括請負」ではなく「個別委任」の体制である思います。
「一括請負」から「個別委任」へ、ユーザー企業が舵をきるためには、IT業界の下請け多重構造の中にいる実力のあるIT企業、優秀なIT技術者をホワイトボックス化しなければなりません。
「ITプロマッチ」は下請け多重構造をオープン化、ホワイトボックス化するためのプラットフォームとして設計されました。
次回からいよいよ「ITプロマッチ」について解説していきたいと思います。
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ITプロマッチサイトのURLアドレスはこちら
https://it.pro-match.jp
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