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APU の経済効果

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2000年に APU (立命館アジア太平洋大学) が大分県別府市に開設されました。開設時の話については、中央公論新社から出版されている「立命館アジア太平洋大学誕生物語〜世界協学の大学づくり〜」に書かれていますが、その PDF 版が大学のサイトに掲載されています。⇒ APU誕生物語

大学の開設によって、地方都市の大分県別府市には、大きな経済効果がもたらされています。学生が増えたことで人口にはプラスの効果がでています。ビジネスへの影響は広範囲にわたりますが、特に顕著に感じられるのは、公共交通への効果です。

APU は、別府市の中でもはずれの、標高300メートルの位置(陸上自衛隊十文字原演習場の隣)にあります。海外や日本国内でも遠くから来ている人のために、入学1年目に入れる寮が学校に近接して整備されていますが、2年目以降は個人で住む場所を別府市内などに見つけることになっています。学校の周りには、住めるようなところはないので、通学にはバスまたはバイクを利用することになります。バイクで通学している人の数は多いですが、海外から来てバイクに乗れる免許がない人も多いので、バスが主力交通手段になっています。

2つのバス会社が乗り入れていますが、その一つの大分交通の時刻表を見ると、朝8時台は10本、9時台は12本のバスが運行されています。午後の時間帯でも、1時間に5,6本あります。帰宅の時間帯の午後6時台は、大学から別府市内方面に10本運行されていることがわかります。「臨時」と書かれているバスも走っているので、同一時刻に2台で運行されることもあるようで、実際に走っているバスの数はもっと多いと思います。休校日には、乗客は減りますが、1時間に6本の運行は確保されています。

このバスは、別府市内とAPUを結ぶ路線ですが、重要なのは APU 専用ではなくて、途中の停留所の間でも乗車できることです。そのため、一般市民にとってもバスの利便性が格段に上がっています。別府市のはずれの標高300mの所まで行くので、運賃は安くありません。住む場所によっては、一往復1000円以上になります。学生には割引率の高い定期券が販売されていますが、それでも高いというイメージで、「別府は食事は安いけどバス代は高い」ということを話している学生が多いです。

ただ、別の角度でみると、APU のためにバスの乗客の数が安定的に確保されていて、多くのバスを走らせることで、バス路線の確保と、収益の確保ができているように感じられます。実際の収支までは確認していませんが、地方の公共交通機関の継続という視点では、大学ができたことの影響は大きいと思います。

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