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ソフトウェア製品開発現場の視点

営業のテリトリーは「全世界」

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以前、あるソフトウェアを導入しようとした時の話です。複雑なものではないため、市販のソフトウェア製品から機能を調べて選べば良いと考えました。インターネットで機能を調べると、日本の会社の製品1つとアメリカの会社の製品1つがみつかりました。Web お問い合わせフォームにこちらのメールアドレスを記入して連絡したところ、両方の会社から返答が来ました。製品機能について詳細な情報が欲しいとお願いすると、日本の会社からは訪問するので都合の良い時間を知らせて欲しいという連絡がありました。アメリカの会社からは、Web 会議で説明するから、都合の良い時間を知らせて欲しいという連絡がありました。日本の会社とスケジュール調整をしましたが、先方の営業の方も忙しくて翌週に訪問していただけることになりました。アメリカの会社との調整は、うまくスケジュールがあったこともあり、翌日に電話会議が設定されました。

当然アメリカとは時差がありますので、こちらが都合の良い時間は、アメリカでは深夜の時間帯になってしまいました。しかし、その営業は、「インターネットでの会議は自宅からできるので問題ない」ということで、こちらの希望に合わせてくれました。

そのときに感じたのは、このアメリカの会社の営業マンのテリトリーは、全世界だということです。インターネットを使うことで、場所がどこであろうとも、時差があろうとも、お客様に対してすぐに「最初の訪問」ができてしまうわけです。

私の経験では、「最初の製品説明は Web 会議でします」という日本の会社に出会ったことはありません。アメリカ系の会社でも日本にオフィスがあると、日本法人の営業の方が訪問してきます。これは商習慣の違いという説明がつくのですが、それで終わらせてはいけない問題があるように感じています。

最初の説明からお客様を訪問できるのは、訪問できる範囲にお客様がいるということが前提になっています。そのため、その前提を守るために、地方で誕生して成功した会社の多くは、お客様がたくさんいる東京に本社を移してきました。また、東京の会社は、日本全国のお客様を訪問できるように、地方に支店を配置してきました。当然、社内の仕組みも「訪問」を前提に作られていますし、資料も持参することを前提に作られています。

日本の会社(コンシューマ向け製品を除く)は、マーケティングが弱いと言われていますが、これはこのような営業スタイルに原因の一端があると思います。最初から営業が個別に訪問して、個々のお客様のニーズを満たすという動きをするならば、マーケティングの重要度は大きく下がります。しかし、営業マンが訪問できない、または訪問が遅れることによるロスが発生している可能性があることです。営業所がないところから製品の説明をして欲しいという要望があったら、どのように対処しているのでしょうか? 海外からの要望の場合は、そのエリアに営業所がなく提携先もいなければ、対応は難しいと思います。

オルタナティブブロガーの永井氏の著書「バリュープロポジション戦略50の作法 - 顧客中心主義を徹底し、本当のご満足を提供するために」の中に、「セールスとマーケティングは時間軸の優先順位が違う」という説明があります。セールスは短期的視点でマーケティングは長期的視点ということですが、それに加えてローカル視点かグローバル視点かという違いもあるように感じています。マーケティングの長期的視点をもつことで、ビジネスを拡大していけるのと同様に、グローバル化に対応していくためには、マーケティングのグローバル視点が必要なのだと思います。

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