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ソフトウェア製品開発現場の視点

ソフトウェア開発者獲得競争

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前回のブログに書いた cloud computing において、プラットフォーム獲得競争がし烈になってきた。メジャーなところから、新しく参入してきたところまで含めて、できるだけ多くのソフトウェアが自社のプラットフォーム上に乗せてもらうかが、cloud のスケールメリットを出すために重要な要素となっている。

自社のプラットフォーム上にソフトウェアを乗せてもらうための最も効果的な手法の一つが、そのプラットフォーム上で動作するソフトウェアを開発するエンジニアの数を増やすことである。どんなにすばらしいサービス環境を提供したとしても、その上で動くソフトウェアを開発するエンジニアがいなければ、サービスを継続的に拡大していくことはできない。各社とも自社のサービスがエンジニアにとって魅力的であるように、様々なサポートの提供を始めている。使いやすい開発環境の提供を無償で提供したりエンジニア間で議論できるフォーラムを用意したりするなど様々な手法を用いて、実際のビジネスが始まる前にエンジニアを自社のプラットフォームに取り込んでしまおうとしている。もちろんプラットフォーム自体の安定性やサービスなど、プラットフォームの選択には別の要素が絡んでくるが、すでにそのプラットフォーム上での経験があるエンジニアを養成しておけば、自社プラットフォームが選定される可能性が高くなる。

過去にもプラットフォームを提供することでエンジニアを固定化してしまう戦略は多くのプラットフォームで行われてきており、一度そのプラットフォームに取り込まれたエンジニアが他のプラットフォームに乗り換えることを困難にしてきた。今回は OS でもデータベースでもなく、Cloud というサービスのレベルで同じことが起きてきた。サービス提供側にとってはかなり重要な局面を迎えていると言える。

私が以前携わっていた Lotus Notes は、グループウェア実行環境であるとともに、非常に優れた共有文書データベースを使ったアプリケーション開発環境を提供してきた。ところが 1996 年くらいのバージョンで、開発者獲得という意味での大きな失敗をしてしまった。当時はまだ価格が高かった Notes の価格を下げるために、それまでは一体化されていてすべてのユーザが手にすることができたアプリケーション開発環境を Designer という別ライセンスにしてしまった。それ以降のバージョンでは、アプリケーション開発のために必要と認められるユーザーだけにしか高価な開発環境込みのライセンスが提供されなくなり、Notes 上で便利な機能を自分で勝手に作っていた「草アプリケーション開発者」を排除してしまったのである。例えて言うと、普通のユーザが Excel の式を作ったり変更したりすることができなくなり、専門の開発者が作ったフォームに入力するだけになってしまったようなものである。すぐには影響は出なかったが、長期的には確実に Notes のビジネスに大きな影響を与えてしまった。

Cloud 関連のサービスでは、アプリケーション開発者の獲得のために、開発言語の多様化や統合開発環境の提供など、エンジニアにやさしい環境提供を行っている。今では開発者は、開発環境や開発関連情報の入手のために多大なコストを払う必要がない。ソフトウェア開発者が、サービス競争の重要な要素になってきた。

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