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ソフトウェア製品開発現場の視点

アメリカのソフトウェア開発におけるプロセスの標準化

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ソフトウェア開発は、初期の小規模開発の段階においては、少人数の技術者が複数の役割を担当しながら進めていくことができるが、ある程度の規模になってきた段階で、プロセスおよび仕事の役割を明確にしないと効率が上がらない状態となる。たとえば、技術者が売りに行くのではなく、営業という専門職が必要になり、技術者がどのような製品に需要があるのかを調査して回るのではなく、マーケティングという専門家が必要になる。

ソフトウェア製品の開発において、非常に重要な役割を持つ職種にプロダクトマネージャがある。会社ごとに若干役割が異なるが、アメリカでソフトウェア製品を開発している会社には、多くの場合存在していて、製品全体の責任を持ち、各部門の間のハブとして動いて、最終的に製品をまとめあげている。マネージャと名前がついているが人を管理する管理職ではなく、製品を管理するスペシャリストである。

しかし、日本で中途採用を行うときにプロダクトマネージャという職種では、人が採れない。いろいろ調べてみると、どうも日本ではプロダクトマネージャという職種は認知されていないようである。そのようなキャリアパスがなく、したがって人もいないということである。

プロダクトマネージャは一例であるが、このような役割の定義はプロセスの定義において非常に重要である。役割が異なるとプロセス自体が異なったものになるからである。役割が定義されたことによって、そこにキャリアパスが形成され、専門家が育っていく。

アメリカのソフトウェア製品開発では、小さな違いはあるものの、職種の定義が明確になっており、各分野の専門家が集まってプロジェクトを進めていく。職種が決まっているのでプロセスもほぼ標準化されており、大きな違いはない。

そのような標準化が進んだ理由は、おそらく人の流動性の高さであろう。会社の合併、専門家の転職などによって、悪いプロセスが淘汰され、より良いプロセスが生き残ってきたと推測している。インドをはじめとするソフトウェア新興国は、アメリカの仕組みを取り入れてビジネスを拡大している。アメリカと同じ職種が同じプロセスでソフトウェアを開発することで、専門家が生まれ、専門家の集合体としてのチームを形成することができるようになる。そして世界標準に従った莫大な規模のソフトウェア生産拠点となってきているのである。

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