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ソフトウェア製品開発現場の視点

シリコンバレーでのインキュベーション事業

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昨日、リアルコムがシリコンバレーでインキュベーション事業を始めるという記者発表を行いました。この事業のために Software Innovation Laboratory (SIL) を設置し、ソフトウェア関連の技術を使ったビジネスの立ち上げを支援していきます。新しいアイデアを持った人を募集して1年間、資金を調達して会社を立ち上げるまでの支援を行います。詳細情報はリアルコムのサイトの、こちらを参照してください。

@IT の記事にも取り上げていただきました⇒こちら

事業の概要や、この事業を始める目的はホームページや記事を参照していただきたいが、このような試みを始めるための動機は、これまでさまざまな形で私の中に蓄積されてきていた。最近の特に大きな問題意識は、新卒採用の説明会にリアルコムに来る学生の多くが、ソフトウェア業界やソフトウェア開発に対して将来性や夢を感じていないということである。そのためリアルコムの説明会に来て、説明を聞いた学生のほとんどが、「ソフトウェアにこんな世界があるとは知らなかった」という驚きを、説明会終了後のアンケートに残している。

リアルコムが会社説明会で学生に対して特別なことをしているわけではない。リアルコムが今後何をやっていきたいかを普通に話しているだけである。もちろん、会社としての「夢」の一部として、「世界を変えていくソフトウェア」というような、ちょっと大きな話をしているが、これは世界のソフトウェア開発会社やソフトウェアエンジニアにとって、非常に普通のことである。

Google, YouTube, Skype などが世界を変えてきているが、彼らは最初から「これで世界を変えられる」と信じてやってきたわけである。最終的に本当に世界を変えることができる人は限られているが、可能性は全てのソフトウェアエンジニアが持っている。それくらい、ソフトウェアの世界はまだまだ未熟で、多くの可能性が残されている。

その、世界を変えられるかもしれないというエキサイティングなソフトウェアエンジニアという仕事が、学生に正しく理解されていない。そもそも、ソフトウェア開発に従事する人は、日本では「エンジニア」と呼ばれてさえいない。そのため、プログラマの35才限界説などがでてきて、それを信じた会社が、将来に世界を変えるかもしれない優秀な人材を葬り去っている。アメリカでは、年齢が上がってマネージメントに進む人も多いが、Architect や Fellow というようなタイトルで、マネージメントよりも高い給料を取る技術を極めたスーパーな人たちが、技術の要所を押さえている。

SIL の試みは、このような日本の現状を打破するための、小さなステップである。SIL から成功するエンジニアが出てきて、世の中のソフトウェアに対する認識が、変わっていくことを望んでいる。

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