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ソフトウェア製品開発現場の視点

IBM のリッチクライアントプラットフォーム

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ちょっと前になるが、IBM から Lotus Expeditor という製品が発売された(詳細はこちら)。これは、リッチクライアントアプリケーションを構築するプラットフォームで、Eclipse をベースに作られている。Expeditor 自体はインストールしても何もない状態であるが、Eclipse と同じように plug-in を開発することで、さまざまなアプリケーションをこのプラットフォーム上で提供することができる。

ここで言うリッチクライアントは、Web 上のサービスのような「個人の PC 上には Web ブラウザだけがあって、アプリケーションの機能自体は、サーバー上で実現している方式」から、「クライアントにアプリケーションをインストールして、アプリケーションを個人の PC 上で動かす方式」への転換という意味で使われている。このように書くと、昔のクライアント・サーバー方式へ戻ることのように見えるが、実際は、過去のクライアント・サーバー方式の欠陥を克服した上で、かつ Web でのユーザビリティの制限を取り除く、新しい方式といえる。

企業におけるクライアント・サーバー方式の衰退の最大の原因は、IT部門の管理コストが Web 方式によって大きく削減できる(と誰かが言った)ことが最大の理由である。一つ一つのアプリケーションを全ユーザの PC にインストールして回ったり、不具合修正のためのパッチを配布したりするコストが膨大になったことで、IT部門が競って Web システムを導入した。しかし、現実に起こっていることは、IT部門を楽にした結果、アプリケーションを使うエンドユーザの生産性が極端に低下をまねいてしまい、会社のトータルコストは増大しているということで、先進的な企業は、それに気づき始めている。また、Web システムでは個人の PC 上の CPU は、遊んでいるのに、サーバー側の CPU は高負荷でクラッシュ寸前になってしまうという特性を持っている。こう見ると、企業における Web システムの採用は、結果的にIT部門にも負荷をかけてしまっているかもしれない。

新しいリッチクライアントは、Web システムを否定するわけでなく、両方の良いところをとった hybrid 的な考え方でバランスよく動作するので、私はエンドユーザのユーザビリティを向上させることに大きく期待している。

リッチクライアントの市場は、まだ完全には立ち上がっているとはいえないが、ホワイトカラーの生産性向上のためのツールとして、またセキュリティを向上させるツールとして期待できるので、リアルコムでもすでに調査に取りかかっている。リッチクライアントも様々なものが提案されているのが、IBM Lotus Expeditor は、プラットフォームとして有力な候補のひとつといえる。

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