WILLCOM社の日本初スマートフォンはモバイルPCをただの充電器に押しやるか?!
このblogには、仕事のことは基本的に書かないというのが私のスタンスではある。(本当は、書くほどの知識や能力が無いというのが真実なのだが、、、)それ故、ビジネス専門ブログサイトなのに、毎回、たった一人、掟破りの、「ノン・ビジネスのヨタ記事」を展開する羽目になってしまっている。まあ、ITインダストリーを30年以上もテリトリーにしていると、たいていのことには麻痺してしまい、その世界での感動が減るのも事実なのだが。。。。
そして、超大型機からパソコン、OS、PDAからケータイ、Linux腕時計からミドルウエアまで、余りに多くを体感してしまうと、所詮、振り子が右に行ったり左に行ったり、するだけで、たかが知れている、、、と、じじい臭く、中途半端に納得してしまうことも多いのだ。更に、長い間、蓄積した電磁波の影響か、中途半端なIT業界人に多いマダラの痴呆がそのいい加減さをより加速してしまう。
しかし、単に個人のわがままなコンシューマとして、興味のある新商品に目をやると、楽しいモノもまだまだこのITワールドには多いものだ。実は、今日、マーケティングの顧問を勤めさせて頂いているWILLCOM社から、たとえ、ビジネス上の関係が無くても、間違いなく衝動買いしてしまうであろう興味深いケータイ電話が発表された。一般的に、「携帯」と書くと、元祖「PDC」やその後継、「ケータイ」と書くと、「PHS」や「モバイルIP電話」等も含めるのが業界の暗黙の了解だ。
今日、都内の某都市ホテルで、報道陣約150名弱を招いて大々的に、発表記者会見の行われた同社の新モデル「W-ZERO3」は、OSにマイクロソフト社のWindows Mobile5.0を採用し、インテル社のxscaleをハイクロックでドライブするSharpメイドのQWERTYキーボード搭載、日本初の本格的スマートフォンだ。 シャープ社のWEBでの製品紹介はここ。
ケータイ業界も、世界の趨勢は、PCの余勢を駆ってWINTEL連合が席巻するのでは、という大きな懸念があることは事実だ。Nokiaを代表とするヨーロッパ勢は、制限時間内に何とか「Symbian OS」を打ち立て、今は、気持ち少し先行中だ。Symbian OSは、筆者もヘビーユーザだった大英帝国のPDA、「PSION」のOS「Epoch」を基盤にした主に携帯用OSだ。
後を追う形になったWindows Mobileではあるが、ケータイの希望的未来にPCのイメージをダブらせるユーザが居る限り、その潜在的優勢は認めざるを得ないだろう。筆者は、予言者では無いので、ずっと未来のケータイ電話のイメージは全く描ききれないが、ごく間近の近未来、きっと電話は、限りなくPCに近いヘビーデューティスペック&ライトウエイトなスマートフォンと、糸電話の様なシンプルなケータイの二極分化的進化をするであろうと想像している。
筆者の個人的感覚では、今、日本市場に数多くある多機能・デザインコンシャスなケータイ電話は、それら両極の中間点にマッピングするイメージが強い。それは、明らかにケータイが、IT世界では後発で、無理をせず、今、間に合うコストに見合ったテクノロジーの採用や良識的な市場発想から製品計画を行っているからだろう。そして、同時に、モバイルPCとPDAの領分のバランスを取りながら、分をわきまえた成長をしようという、穏健で古風な考え方を持ったプロダクトだったからだ。
そして、今、一方のPDAワールドは、他の何か影響では無く、自らが崩壊を始めた。誰の目から見ても、付き合いは良いが、本質的には少し出来の悪い兄のPDAと、兄の苦戦を間近で見続け、自ら体質改善を行ってきた弟のスマートフォンの未来は明らかだろう。PDAを乗り越えスマートフォンの向かう先にはもうモバイルPCしか存在しない。本来、モバイルPCとスマートフォンはその得意分野の差異から、技術的にも論理的にも対象ユーザをセグメンテーション出来るべき世界ではある。しかし、過去、コストバトルを重ね、やっと安定期に入ったPCにも重量という過去からの難問と、同時に機密管理という新しい課題が存在する。。
もしIT年史があるなら、太古のメインフレーム帝国と近世デモクラチックなパソコン世界の関係のように、大きく振れ、遠退いた振り子が、パソコン帝国とケータイ宇宙の関係で、振幅のピークを迎えることはあり得ないだろうか?。IT世界は、中央集権化と機能・権限の分散を繰り返し、その向きが変わる度に新しい概念のハードウエアやアーキテクチャーが登場してくる。スマートフォンは、機能分散の極限からもう一度中央集権の世界にベクトルの変わる起点となるクライアントなのかも知れない。
早速、個人的に予約をするつもりのW-ZERO3が手元に届いて、暫くしたら、筆者のモバイルPCは、単なる「USBポートを提供するケータイ充電器」になってはいないだろうか?。かってシャープのPV-F1~ザウルス、HP95~200LX、Palm、WorkPad、PSIONの全てのモデルのユーザだった筆者には、さほど高いハードルではなさそうだ。某社でモバイルPCの製品企画や戦略を担当していた頃、「環境を持ち歩く贅沢」というキーワードで商品企画を進めたが、W-ZERO3の登場で、究極の「何も持たない贅沢」の世界に、また一歩近づけそうだ。動き始めた「日の丸スマートフォン」、きっと、これからが面白い。