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Windows Webマガ編集長の独り言。だからどうした?

ブログの光と影

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月刊雑誌の編集長時代のお話。

紙媒体における読者ハガキは、直接読者の声を聞ける貴重なチャネルだ。差し出す方としては、編集部に大量に届くであろう読者ハガキなどにいちいち目を通してはいないだろうと思いがちだが、毎日のハガキをチェックするのは編集長の日課である。周りの編集長も同様だったから、私だけの趣味ではないだろう。

おハガキの内容は、激励あり、お叱りありとさまざまだが、編集長として困ってしまうのは、次のようなものである。

「特集記事、大変参考になりました。一般論はよく分かったのですが、私が知りたいのは、私が持っている○×△社の○×△という製品に○×△という周辺機器を接続して、ソフトウェアには○×△をインストールしているケースでどうなるのか、ということなのです」

あまりに身勝手な読者の意見、とかたづけてしまえば簡単だ。しかしこの意見は、マスメディアの限界を浮き彫りにしている。

テーマやつくり、発行部数によってもだいぶ差があるだろうが、私が担当していたコンピュータ雑誌は、1号あたり数千万円のコストがかかっていた。内訳は、原稿料やデザイン料、編集スタッフの給料、紙代、印刷料、書店の流通コストなどである。

つまり、数千万円の売上がなければ赤字転落である。このためには適正な部数を発行する必要がある。基本的に紙媒体は、刷り部数が増えるほど1冊あたりのコストは低減し、当然ながら販売部数が多いほど雑誌本体の売上は増大、部数=メディアの影響力なので、これが大きいほど広告売上が増大する。

私の場合、採算ラインは実売で4万部前後だった。

先の読者の意見はもっともなのだが、4万部を売るためには、少数の読者に向けて記事を作るわけにはいかない。大部数を狙えば、必然的により多くの読者、すなわち記事の汎用化、一般化を進めることになる。

読者が本当に求めているものを、その成り立ちがゆえにマスメディアは提供できない。読者の多様化が進めば進むほど、この問題が大きくなる。昨今、紙媒体の苦戦が伝えられる理由の1つはこれだろう。

インターネットを媒介とする情報メディアの中でも、ブログは究極の低コスト情報発信メディアであると思う。このエントリがそうであるように、ブロガーが感じたことをエディタでさらりと書いて投稿ボタンを押すだけ。究極の工場直送販売である。

ブログによる情報発信を生業にできるかどうかはさだかでないが、極限の低コスト製造販売は、個人のニーズにきめ細かに対応できるメディアとしての資質があると考える。これはブログに大いに期待する部分だ。

しかし光あるところには影がある。次回はブログの影の部分に注目してみよう。(次回に続く)

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