オルタナティブ・ブログ > So what is IT? >

Windows Webマガ編集長の独り言。だからどうした?

ときにはWebを捨て、本を読もう

»

Web出版を手がけ始めた6年前、「打倒 紙出版」を標榜して息巻いていた。

あれから6年、Web出版はマスメディアの一角を占めるに至った。その一方で、雑誌や書籍の販売低迷が深刻化している。

Web出版の成功をここで鼓舞しようというのではない。数年Web出版と付き合った結果として、改めて書籍の価値を見直すに至ったという話である。

狭く解像度の低いディスプレイでの表示を余儀なくされるWebでは、長文を読むのは辛い。このためどうしても、1つの記事は短くコンパクトにまとめる方向になる。

また特に商用メディアでは、記事評価の指標が短期的なページビューやユニーク・ユーザーに傾倒しがちであり、いわゆる「おいしいとこ取り」のテーマに偏りがちだ。つまり長い目で見て価値のある情報であっても、短期的に人気が得られないテーマは構造的に扱いにくいという事情がある。

たとえ「おいしいとこ取り」であっても、Web出版物は蓄積していくので、ある程度時間がたつとそれなりのカバレッジに見えるかもしれないが、本質的には断片の寄せ集めであって、本当の意味でシームレスな連続性はない。記事が企画された時期が違えば、企画主旨も違うし、筆者も編集者も違うとなれば、記事の方向性はまちまちにならざるをえないからだ。

これに対し書籍は、同時期に、特定のテーマに対して、一握りの編集者や筆者らによって企画が検討され、目次が決定される。閉じた空間で1つのテーマが追求されるわけだから、必然的に一連の情報は連続的で、ダブリやモレも生まれにくい。

これらの違いをイメージにすると、次のようになるだろう。

Web型情報と書籍型情報
Web型情報と書籍型情報

ある程度の知識や経験がある熟練者なら、断片的な情報のギャップをこれまでに獲得した知識で埋めたり、経験からどこで何を調べればギャップを埋められるか見当がついたりするので、それほど問題はないかもしれない。問題は、そうした過去の後ろ盾のない未経験者や初心者である。

手軽なインターネットの情報にまず頼るのはよい。けれどもその結果、知りたいことがすっきりと分からなかったり、体系的な理解ができていないと感じたら、自分の期待に応える書籍がないかどうか、ぜひとも探し求めてみていただきたい。

自力で見つけることが難しければ、経験豊富な先輩に聞いてみよう。きっと先輩が世話になった良書を教えてくれるに違いない。幸い、進歩の激しいIT分野においても、基礎固めに役立つ良書は、数年前の古いものでも十分役に立つことが多い。

Webが期待に応えてくれなかったときは、迷わずWebを捨て、本を読もう。

Comment(6)